14話「リサイクル作戦2」
数週間前、『リサイクル作戦』発動直後。
わたしはまずゴンドの倉庫に眠っていたEランク武具をすべて買い取った。
現金なんてないから当然すべて借金だ。
それだけじゃぜんぜん足りないからエリンたちに協力してもらい、ミルトンに数多に存在する武具屋や工房から大量のEランク武具を捨て値で買ってきてもらった。
この資金もゴンドから借りた。
借りてばっかだな……。
と、ともかく。
わたしは大量のEランク武具をかき集めたのだ。
それを消費してエリンたちのEランク武具を『精錬』で強化した。
しかし、しょせんEランク武具なんて上限の(+10)まで強化してもたかがしれてる。
だけど。
上限(+10)まで強化した武具は『合成』の材料にできる。
上限まで強化した武具を2つ消費することで、1つ上のランクの武具に『合成』することができるのだ。
つまり。
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Eランクショートソード(+10)
×
Eランクショートソード(+10)
||
Dランクショートソード(+-0)
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こうなる。
Eランクショートソード(+10)の攻撃力は「4」。
Dランクショートソード(+-0)の攻撃力は「20」。
一気に数倍の攻撃性能を得ることができる。
そこからは『上位精錬』アビリティの本領発揮というわけだ。
大量のEランク武具を消費してDランク武具を上限まで強化した。
ふつうにDランク武具を買うよりもはるかに安上がりに仕上げることができた。
エリンたちがみんな上限強化済みのDランク武具を装備しているのはこういう経緯があったからだ。
パーティ全員が上限強化済みのDランク装備で固めている駆け出し冒険者なんてまずいないらしいから、かなり目立っているだろう。
とはいえ、この作戦には問題になりそうな懸念点もあった。
それは『合成』も『精錬』と同じで、同じ武器種じゃないとできないという縛りルールだ。
いくらEランク武具が捨て値で取引されているとはいっても、流通量には限界がある。
都合よく片手剣だけ集めたり、小盾ばかり集めたり、そういうことができるほど余ってはいない。
上限まで強化した「同種の武具」を2つ用意することは案外難しい。
EランクのショートソードからDランクのショートソードを作るには、全部で22本も必要になるからだ。
その縛りがあるからこそ、みんななかなかDランク武具に手が届かなくて苦労しているのだ。
だけど……それはふつうの鍛冶師が行う『一般合成』の話。
『鍛冶の神』スキルの『上位合成』アビリティには、武具種縛りの制限がない。
なんと、武具種はなんでもいいのだ。
つまり上限まで強化された同ランクの武具が2つあれば、種類が違っても強引に合成してしまえる。
おかげで、かき集めたゴミ武具でも、エリンたちの武具を強化できたというわけだ。
『リサイクル作戦』大成功!
ありがとう『鍛冶の神』スキル!
このスキルに感謝したのは初めてかも?
「いつも無傷で帰ってくる駆け出しがいるらしいぞ!?」
「なんか凄腕の鍛冶師がバックにいるらしいわよ!」
と冒険者たちの間で噂になるのは早かった。
冒険者は武具の情報に目ざといから、その噂はまたたく間に広まっていった。
エリンたちが宣伝部隊として派手に活躍してくれるおかげで、じょじょに『スズキ工房』は評判になり、すこしずつお客さんが増えていった。
口コミってすごいなぁ。
あ、『スズキ工房』はわたしの店の屋号です。
しばらくしたら、駆け出し冒険者だけではなく、冒険者歴が1年を超えるいわゆる「洗礼者」たちも店を訪れるようになった。
さすがにワグネリア親方のような大物と取引しているような上級冒険者はまだ来てくれないけど。
それでも成果は上々。
評判が評判を呼び、売り上げはうなぎのぼりでアップしていった。
ゴミを捨て値で回収して大金を稼げるんだから、ある意味最上級の転売ヤーといえるだろう。
借金をすべて返すことができたし、最近ではゴンドにパーセンテージの分配金を支払うことができるようにもなった。
ウサギにもたくさん人参を買ってあげられるようになった。
「人参はあまり好きではない……。わしの好物は真鯛なのじゃ」
好きな人参をたっぷり食べれてよかったね!
これからは、もっと、もっと、もーっと買ってあげるからねっ!
「話を聞けい! 人参は嫌いじゃ言うとるじゃろう! おぬしサイコか!?」
ちっ、こんな内陸部で魚介なんて手に入るかよ。
しかも真鯛とか。
贅沢言いすぎだろ。
なんかこの地方人参が名産らしくて、安く手に入るんだよ。
ウサギはおとなしく人参齧ってりゃいいんだよ。
「偏見なのじゃ! ウサギ差別なのじゃ!」
しょうがないから市場で川魚を買ってきた。
こんな感じでみんなハッピー。
生活が安定するようになったのはうれしいけど、もっとうれしいことがある。
駆け出し冒険者がケガをしたり死亡したりすることが目に見えて減ったのだ。
寝る間を惜しんでDランク武具を作りまくった甲斐がある。
なんでも若手冒険者のあいだではわたしは「神鍛冶師」と尊敬されはじめているらしい。
でへへへ……。
ゼニ稼いで人の命を救えるなんて、鍛冶師って本当にいい職業ですね!
そんなわけで、リサイクル作戦を成功に導き、鍛冶師として独り立ちすることができたわたしは完全に調子に乗ったわけである。
有頂天?
天狗に乗ってる?
表現はなんでもいいけど、わたしはすっかり増長していたわけだ。
そのせいで、忍び寄る足音に気づくことができなかった。




