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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第096話 ひとつの提案



    ★ ☆ ★ ☆ ★



 南の国から使者が戻(もど)ったのは、その日の陽(ひ)が落ちる直前のことだった。


 ウルフを飛ばしてきた間者の一人(ひとり)が、国政を司(つかさど)る役人とギルドの責任者に向かって、悲壮感(ひそうかん)漂(ただよ)う表情で小さく首を振(ふ)った。役人はその場で膝(ひざ)をつき、責任者は悲嘆(ひたん)し天を仰(あお)ぐことしかできなかった。


 支援(しえん)不可の一報が届(とど)けられた直後、ランヴィル公爵(こうしゃく)より緊急(きんきゅう)の通達が公国民全てへ向けて発布された。その内容は国からの懺悔(ざんげ)に近い最後通告で、この冬の間、食糧(しょくりょう)の補填(ほてん)がなされない現実を全国民に突(つ)きつけるものだった。


 ある者は既(すで)に困窮(こんきゅう)した身の上を呪(のろ)い、ある者は目の前の現実に震(ふる)えた。確実に増えていくのは、ただただ延々(えんえん)と降(ふ)り続(つづ)ける白い悪魔(あくま)のみ。町から逃(に)げることも叶(かな)わず、頼(たの)みの綱(つな)もなくなり、食糧(しょくりょう)を手に入れる方法はなくなった。


 もはや一巻の終わりだ。

 今や死を待つばかりだと嘆(なげ)く人々は怒(いか)り悲しみ、こうなったのは誰(だれ)のせいだと叫(さけ)び始(はじ)めた。この怒(いか)りの輪が大きくなれば、必ずや争いが起こり、国は荒(あ)れ、その流れは一瞬(いっしゅん)にして外界にまで広がっていく。

 そうなれば、もう止められない。国を跨(また)いだ諍(いさか)いは戦争へと発展(はってん)し、抗(あらが)うことのできない負の遺産(いさん)となって国々を蝕(むしば)んでいくことになる――



「しかし絶対にそうはさせねぇ。俺(おれ)たちがすべきはこうだ。民(たみ)に不安を感じさせるな! 考えさせるな! 自覚させるな! 思い出させるな!! 一分一秒たりとも、この国の民(たみ)を惑(まど)わせるな! 大丈夫(だいじょうぶ)、俺(おれ)たちはやれる、必ず耐(た)えられる!」


 テーブルを通じ、村からピルピル草の実800サーバス(※トン)の『購入(こうにゅう)』を決めたランヴィル公爵(こうしゃく)は、即日(そくじつ)俺(おれ)たちが開拓(かいたく)したルートを用いて食糧(しょくりょう)の運搬(うんぱん)を開始した。

 テーブルを始めとするギルドの役人や公国関係者、そして国内に留(とど)まっていた高ランク冒険者(ぼうけんしゃ)の力を借り、俺(おれ)たちは時間をかけて、村と町とを幾度(いくど)も往復し食糧(しょくりょう)の運搬(うんぱん)を続けた。


 事前に準備できた量は、総量の約20パーセント。しかし初動で160サーバスもの実を持(も)ち込(こ)めた効果は絶大で、10万人弱規模(きぼ)となる町を存分(ぞんぶん)に満たすことはできないまでも、困窮(こんきゅう)による死者が出ないレベルを保つには十分すぎるほどだった。それから俺(おれ)たちは残りの80パーセントの実について下準備を進めながら、死ぬ思いで雪降(ふ)りしきる地獄(じごく)の一ヶ月半を走(はし)り抜(ぬ)いたのだった。


 そして雪が降(ふ)り始めてから三ヶ月と13日後、

 いよいよその日がやってくるのだった――



 ある者は、日の出と共に表へ飛び出し、神に祈(いの)りを捧(ささ)げるよう膝(ひざ)をついて涙(なみだ)を流した。またある者は父と母と手を取り、喜びの唄(うた)を奏(かな)で合った。

 俺(おれ)たちは、恐(おそ)らくその光景を生涯(しょうがい)忘(わす)れることはないだろう。村人全員で号泣(ごうきゅう)しながら抱(だ)き合(あ)った経験、アンタたちにはあったかい?


 だけど本音を言わせてもらえば、一番嬉(うれ)しかったことは別にあって。

 自分でも笑っちまうんだけど、本当に単純(たんじゅん)なことでさ。

 ああ、これでやっと、ゆっくり眠(ねむ)れるんだなぁ、って……。



 俺(おれ)は朝日差す陽(ひ)の光を全身に浴びながら、

 これまで出してきた中で一番デカい声で喜びを叫(さけ)んだ。



――――――――

――――――

――――

――

―



 こうして俺(おれ)たちの村は、コーレルブリッツ公国の危機(きき)を救ったことにより、図(はか)らずも大きく国政に関(かか)わることとなってしまった。当然その事実を隠(かく)すことなどできるはずがなく、今回の顛末(てんまつ)は、良くも悪くも俺(おれ)たちの村にとって大きな転換期(てんかんき)となった。


 しかし最終的には、マイルネの町から多数の死者を出すことなく、どうにか難局(なんきょく)を乗り切ることができた。結果的に町を救いたいという俺(おれ)たちの望みは叶(かな)った。これ以上、何を望むことがあるだろうか?



「でも本当に良かったの? 私(わたし)が村の代表として爵位(しゃくい)を受け取ってしまって」


「うん、俺(おれ)はそういうの興味ないから。それに村にとってはマーロンさんが貰(もら)っておいた方が良いと思うんだよね。村最高ランクの冒険者(ぼうけんしゃ)であるマーロンさんが爵位(しゃくい)持ちっていう事実は、対外的にも意味が大きいだろうからさ」


 それに納得(なっとく)しない村人はいたものの、どうにか俺(おれ)が直接説明して諫(いさ)めてもらった。俺(おれ)が受け取るべきだと言ってくれた村人たちの意見は嬉(うれ)しかったけど、爵位(しゃくい)など貰(もら)った日には自分の身を危(あや)うくするだけだ。多少の虚(むな)しさはあるけど、そこだけは弁(わきま)えているつもりだ。


「それにしても……。凄(すご)いことになっちゃったねぇ」


 俺(おれ)たちは改めて並(なら)べられたそ(・)の(・)物(・)体(・)の(・)質(・)量(・)、とでも言うのだろうか。その圧倒的(あっとうてき)な輝(かがや)きとド(ど)迫力(はくりょく)に飲まれ、ゴクリと息を飲んだ。


 大金貨の束、というより、もはや山だろうか。

 見たこともないほどの金貨が、村長である俺(おれ)の家に持(も)ち込(こ)まれ、高く高く積まれていた。


 その量、占(し)めて大金貨1.6億枚(まい)。

 円換算(えんかんさん)にして20億ほどの金が目の前に並(なら)んだ様は圧巻(あっかん)で、村人たちもその圧迫感(あっぱくかん)に気圧(けお)されて言葉がない。ただ一人(ひとり)、リッケさんだけが目を『金』にして喜んでいたけど、どうにも突然(とつぜん)舞(ま)い込(こ)んだ天文学的な数字に狼狽(うろた)えるばかりだ。


「必要経費を抜(ぬ)いて分配するとしても、ひとり金貨1000万くらいにはなるのかな……、しばらく遊んで暮(く)らせるかもね」


 この国の貨幣(かへい)価値(かち)は前世と比較(ひかく)するとわりかし高く、平時ならば食糧(しょくりょう)は1/10程度の価格でしかしない。今回は有事だったことも重なり食糧(しょくりょう)価格が高騰(こうとう)していたが、日がたてばすぐにいつもの価格へと戻(もど)っていくことだろう。


 ただ驚(おどろ)いたことに、村人たちには金など必要ないと首を振(ふ)られ、村にとって必要なことに用立ててほしいと返却(へんきゃく)されてしまった。マーロンさんにまでいらないと断られてしまい、俺(おれ)としては「お金ってなんなんでしょうか……」と困惑(こんわく)するばかりだ。ただし、たった一人(ひとり)を除(のぞ)いては……



「ということで約束です。リッケさんには、ちゃんと受け取ってもらいますよ、キッチリとね!」



 このままでは、初めての外交によって得たせっかくのお金を無駄(むだ)にすることになってしまう。しかし彼女(かのじょ)はこちらの心配をよそに、「当然!」と前置きしてから、俺(おれ)に一(・)つ(・)の(・)提(・)案(・)をしたのだった。


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