↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/441

第095話 いつも隣にいるアイツ


 振(ふ)り返(かえ)った俺(おれ)が見上げた先で雪を避(さ)けるように空を見上げていたその女性は、「寒いねぇ」と呟(つぶや)きながら、地に落ちていた俺(おれ)の左手をそっと握(にぎ)った。


「あ、アンタは……」


「若(わか)い若(わか)~い呪術(じゅじゅつ)師のハロンヌさんさ。どっかの誰(だれ)かが呼(よ)んでると思って表に出てみりゃ、どこかで見た顔が倒(たお)れてんじゃないの。気にならない方がどうかしてるってもんさね」


 その人物は、以前マーロンさんに連れられて訪(おとず)れた呪術(じゅじゅつ)師の女性、ハロンヌだった。彼女(かのじょ)は俺(おれ)の手を取り「しっかりしな」と立たせ、雪まみれになった尻(しり)を叩(たた)いてくれた。


「アンタ、こんな夜中にこんな場所で何してるんだい。……いいや、当ててみせようかね。あれだろう、人探(ひとさが)しだ。そうだね?」


 霜焼(しもや)けでささくれた俺(おれ)の鼻先に触(ふ)れた彼女(かのじょ)は、そのまま指先を額へ移動させ、今度は目を瞑(つぶ)った。そして俺(おれ)の思考でも読み取ったのか、「なるほどねぇ」と呟(つぶや)く。


「悪い、あまり時間がないんだ。俺(おれ)、物を探(さが)してて――」


 しかし俺(おれ)の口を指一本で閉(と)じた彼女(かのじょ)は、「いいや、物じゃないよ、間違(まちが)いなく人(・)だ」と断言する。


「いや、だから……」


「前にも言ったろ、アンタは誠実(せいじつ)に生きればいいってさ。それさえ間違(まちが)わなけりゃ、いつだって運命はアンタの味方だよ。心配いらない」


「そうだ、だったら教えてくれ、太古のしゅ――」


 質問を聞くより先に、「ひとつ」と言葉を足すハロンヌさん。そして俺(おれ)が彼女(かのじょ)を見つめた瞬間(しゅんかん)、頬(ほお)に爪先(つまさき)を当て、「それはいつも、アンタのそばにいるよ」と呟(つぶや)いた。


「俺(おれ)の……そば……?」


「さぁ時間だ、もう行きな。あとは全部、アンタのインスピレーションが解決してくれる。自信持ちなよ、色(・)ボ(・)ケ(・)の化け物さん?」


 バチンと背中(せなか)を叩(たた)かれ悶絶(もんぜつ)している俺(おれ)に手を振(ふ)ったハロンヌさんは、「暖(あたた)かくして眠(ねむ)りな」と捨(す)て台詞(ぜりふ)。「いてぇな!」と悪態ついて振(ふ)り返(かえ)ったとき、彼女(かのじょ)の姿(すがた)はそっくりそのまま闇(やみ)の中へと消え去っていた。


「なんだよ、急に出てきて勝手に喋(しゃべ)って早く帰れって。それにしたって、俺(おれ)が探(さが)してる奴(やつ)が俺(おれ)のそばにいるって?」


 彼女(かのじょ)の言葉が引(ひ)っ掛(か)かり、俺(おれ)は頭の中でその言葉を反芻(はんすう)させてみる。俺(おれ)が誠実(せいじつ)に生きるとき、それはいつも俺(おれ)のそばにある。そしてソイツは、いつだって俺(おれ)の味方で、俺(おれ)の近くに。


「俺(おれ)の……? 特筆すべき人物……。歴史上の……、記録が、近く……?」


 その瞬間(しゅんかん)、頭の中でパンッと何かが弾(はじ)けた。

 俺(おれ)は同時に駆(か)け出(だ)し、限界に達した身体の心配すら忘(わす)れて走っていた。そのときの俺(おれ)は、さぞかし不気味な表情だったに違(ちが)いない。だって――



「ハァハァ、見つけた……!」



 激(はげ)しく鳴らして開ける扉(とびら)。

 全員の視線(しせん)が、一斉(いっせい)にこちらへ向けられる。

 しかし俺(おれ)は一心不乱(いっしんふらん)にソイツのことを探(さが)し、ただひたすらにソイツを求めていた。


「俺(おれ)の近くにいる絶対的に歴史的な人物、確かにそうだ、アンタ、やっぱりホンモノだよ!」


 歴史上に名を残す存在(そんざい)は、なにも種族や経歴だけに限ったものじゃない。


 絶対的君主である魔王(まおう)?

 その魔王(まおう)を討(う)った勇者?

 世界最強の魔物(まもの)?

 それとも……


「忘(わす)れてた、すっかり忘(わす)れてた! 俺(・)の(・)相(・)棒(・)は、かの有名な魔女(まじょ)に呪(のろ)いをかけられ、永遠の命を与(あた)えられちまった悲(・)し(・)き(・)珍(・)獣(・)だってことをよ!」


 そうだ、そうに決まってる!

 俺(おれ)は工房(こうぼう)に飛(と)び込(こ)むなり、ヒゲ男の作業している隣(となり)の椅子(いす)で眠(ねむ)りこけていたモコモコさんを神々しく担(かつ)ぎ上(あ)げ、「見つけた」と呟(つぶや)いた。そして盛大(せいだい)に口元から流れていたポンチョの「ヨダレ」を小瓶(こびん)に詰(つ)め、すぐさま集めた材料を混ぜ合わせた。


「これで全部揃(そろ)った。おいおっさん、こいつで満足か!?」


 混ぜ合わせた素材たちが光を放ち、モチ状に膨(ふく)らんでいく。そしてパスンッと音を立て、ヒゲ男の作業している台の真ん中に落下した。



「見事じゃ! 完璧(かんぺき)じゃ! 最高じゃ!!」


 男のか細い腕(うで)が急激(きゅうげき)に太さを増し、光(ひか)り輝(かがや)く物質を一目散に叩(たた)き上(あ)げる。さらにはその物質をほんの数ミリの薄(うす)さにまで伸(の)ばし、人ひとりが乗れるほどの四角い板に切り分けていく。そしてその六枚(まい)の板を組み合わせて立方体にしてから、これまで作り上げた素材をその箱に塗(ぬ)り込(こ)むようにして重ね、最後に巨大(きょだい)なフタで箱全体を覆(おお)った。


 ヒゲ男はペタンと尻(しり)もちをつき、「フィニッシュじゃ」と俺(おれ)を見た。親方とポンチョが一緒になってこちらを見つめているが、俺(おれ)はなんのことやらわからず尻込(しりご)みしてしまう。しかし直後、「はよぉ燃(も)さんかボケェー!」とヒゲ男に一喝(いっかつ)される。そういうことは、先にちゃんと言っといてくれよな!


「どうなっても知らねぇぞ。最後に残った魔力(まりょく)、全部くれてやらぁ!」


 これまでの苦労と、怒(いか)りと、とめどなく溢(あふ)れてくる不条理さを腕(うで)に乗せ、パチンと指を弾(はじ)く。バチッと音を鳴らしてフタごと発火した箱は、しばらく炎(ほのお)を吹(ふ)き上(あ)げて燃え続け、最後には燃(も)え尽(つ)きて黒焦(くろこ)げになった外装(がいそう)のカスを残し、ようやく静かになった。


 炭と化した箱だったものが作業台に残ったものの、俺(おれ)と親方は顔を見合わせ、「やっちまったか!?」と顔を歪(ゆが)めた。やはり火加減が強かったかと慌(あわ)ててみるが、もはや後の祭りだ。今さらどうすることもできない。


 しかしそのとき、躊躇(ちゅうちょ)している俺(おれ)たちに代わって、クンクン鼻を鳴らしながらポンチョが箱に近付いた。そしてこわごわと指でつついた。すると――



「 ほわぁわああ! 」



 黒焦(くろこ)げだった外装(がいそう)がパリッと音を立てて剥(は)がれ、ピキピキと崩(くず)れ始(はじ)めた。いよいよやっちまったと苦笑いを浮(う)かべる俺(おれ)たちをよそに作業台の上に飛び乗ったヒゲ男は、ポンチョを両腕(りょううで)で抱(かか)え上げ「ヴィクトリー!」と叫(さけ)んだ。


 外装(がいそう)が弾(はじ)け、ヒゲ男が溜(た)まったゴミを大袈裟(おおげさ)に振(ふ)り払(はら)うと、辺りに大量のススが舞(ま)い、全員が煙(けむ)くなってむせてしまう。しかしそれよりも俺(おれ)たちが目にしたモノの姿(すがた)があまりにも神々しく、俺(おれ)はいつしかむせることすら忘(わす)れてそ(・)れ(・)に見入っていた。



「よし! 完成! 完璧(かんぺき)!」



 見た目は、ただの箱でしかない。

 しかし時折、目がおかしくなったのかと錯覚(さっかく)してしまうほど、箱の頂点(ちょうてん)が次元という概念(がいねん)を失ったかのように揺(ゆ)れ、周囲の光を吸(す)い込(こ)んでいた。しかも内部はブラックホールのような暗黒と呼(よ)ぶに相応(ふさわ)しい闇(やみ)に覆(おお)われて、モヤモヤとした得体のしれない雰囲気(ふんいき)が漂(ただよ)っている。


 指で触(さわ)ろうとしたポンチョを掴(つか)まえ、「あかんよ」と首を振(ふ)ったヒゲ男は、ポンチョを俺(おれ)に抱(だ)かせるとすぐに、用意してあったブラックホール専用(せんよう)の外箱を上からポスっとはめ込(こ)み、さらに四隅(よすみ)を準備してあった部品で器用に四点留めし、ガッツンガッツンと叩(たた)き上(あ)げた。そして最後、一面だけそのままになっていた箇所(かしょ)に扉(とびら)を取り付け、パタンとフタを閉(し)めた。


「ハイお終(しま)い! イモよこせ!」


 体育座(ずわ)りした人間がゆったり収(おさ)まる程度のコンテナが完成し、ヒゲ男がイモをよこせと手を出した。唖然(あぜん)としながらも、ひと目でその仕事ぶりに納得(なっとく)してしまった俺(おれ)は、「どんだけでも持ってけ泥棒(どろぼう)!」と、リュックに入っていた全イモを取り出し、作業台の上にぶちまけた。


「オホゥッ! イモッ! イモッッ! イモッッッ!」


 ポンチョをイモパーに誘(さそ)ってご満悦(まんえつ)のヒゲ男がイモを頬張(ほおば)る傍(かたわ)らで、俺(おれ)と親方は無言のままハイタッチし、腕(うで)をクロスさせ「ヨ~シャッ!」と叫(さけ)んでいた。



 窓(まど)の外からは、微(かす)かに光が差し込(こ)んでいた。


 雪は未(いま)だ止(や)むことなく降(ふ)り続(つづ)けている。


 しかしそれを溶(と)かすほどの興奮(こうふん)に包まれながら、俺(おれ)たちの二週間は賑(にぎ)やかに明けていくのだった――


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もし少しでも面白いと思っていただけましたら、評価やブックマーク等を頂けますと励みになります。

多分ポンチョも喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。