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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

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第094話 化け物さん


「それはどういう……?」


「その昔から彼(かれ)は超(・)感(・)覚(・)の持ち主と呼(よ)ばれていて、ある物を製作する環境(かんきょう)下において、必ず用立てられるものしか依頼主(いらいぬし)に求めないと言われています。要するにそれは言葉を変えると……」


「俺(おれ)たちが、俺(おれ)たちの手で必ず入手できる、ということですか?」


「ご明察(めいさつ)。まず間違(まちが)いなくね」


 俺(おれ)は今にも倒(たお)れそうなリッケさんを抱(だ)きしめ、「このお礼はいつか必ず」と手を振(ふ)った。「これはこれは、お互(たが)いさま」と笑う彼女(かのじょ)に見送られ、俺(おれ)とシルシルはすぐさま村を飛び出した。


「ごめん、死にそうなとこ悪いけど急ぐよ。俺(おれ)もできるだけ頑張(がんば)るから、シルシルも死ぬ気で走ってくれ!」


「言われるまでもない」と速度を上げたウルフの背中(せなか)で、俺(おれ)は必死にそのモノの正体を考えた。


 特筆すべき人物・魔物(まもの)に関する何(・)か(・)。

 しかし漠然(ばくぜん)と特筆すべき人物と言われても、それに該当(がいとう)するような凄(すご)い人物などまるで思い当たらない。


「誰(だれ)だ、アイテムの素材になるような凄(すご)い奴(やつ)なんてどこにいる!? いや待てよ、まさかあのヒゲのおっさん本人の……、だけどそれなら自分で用意すればいいし……。それにリッケさんも過去の書物の中で使われた記録があると言ってた。だったら、過去にそれと似たモノを用立てられる環境(かんきょう)があったってことだよな。過去にも存在(そんざい)してて、今も手に入るモノって一体なんだよ!?」


 魔王(まおう)は50年前に存在(そんざい)を消して以来、これまで一度も現れていない。同時に勇者もまた存在(そんざい)せず、さらにこの地方には彼(かれ)らに由来のある場所や記録も聞いたことがない。


「だったら魔物(まもの)か? しかしそんなレアな魔物(まもの)なんて……。いや、まさかボアボアの。でも待てよ、そんなのを『太古の』なんて言い方するか!? 太古って、やっぱり昔からあったってことだよな? 全然わかんねぇって!」


 すると、走りながら俺(おれ)の独り言を聞いていたシルシルが呟(つぶや)いた。


「それで言いますと、象徴(しょうちょう)という意味では神などの存在(そんざい)も候補(こうほ)に入るかと。水の神、火の神などは様々な地域(ちいき)や国、我(われ)ら魔族(まぞく)の間でも信仰(しんこう)されている物事です。魔法(まほう)などは、その中でも特徴的(とくちょうてき)な事案かと」


「なるほど、神様か! 確かにその視点(してん)はなかった。神ならマイルネの町でも信仰(しんこう)されているし、それなりにメジャーな施設(しせつ)もあるはず。それだ、そうに違(ちが)いない! サンキューな、シルシル!」


「お褒(ほ)めに預かり恐悦(きょうえつ)至極(しごく)。そうとわかれば、ますます急いで向かわねばなりますまい!」


 さらにスピードを上げたシルシルは、雪面を滑(すべ)るように、美しく、恐(おそ)ろしい速度で駆(か)け抜(ぬ)けた。日が落ち、夜になり、気温が落(お)ち込(こ)んでもなお俺(おれ)たちの心拍(しんぱく)数は増すばかりで、激(はげ)しい呼吸(こきゅう)が止(や)むことは決してなかった。


 町の目前で激(はげ)しく転倒(てんとう)した巨体(きょたい)からずり落ちるように着地した俺(おれ)は、性も根も尽(つ)き果(は)てたシルシルに渾身(こんしん)の拳(こぶし)を捧(ささ)げ、「あとは寝(ね)ててくれ!」と高らかに宣言(せんげん)した。雪面に横たわったまま片目(かため)でこちらを窺(うかが)ったシルシルは、「御(ご)武運を」と呟(つぶや)き、最後に狼(おおかみ)特有の遠吠(とうぼ)えで俺(おれ)の背中(せなか)を押(お)してくれた。


 体力は限界に近い。

 魔力(まりょく)も、とうの昔に切れ果てた。

 しかし止まっている時間はない。今走らず、いつ走るんだ!


 滑(すべ)り込(こ)むように工房(こうぼう)へ駆(か)け込(こ)んだ俺(おれ)は、ヒゲ男の作業状況(じょうきょう)を一瞥(いちべつ)し、再び飛び出した。「三時間以内だ!」という親方の言葉に手を挙げて応(こた)えた俺(おれ)は、町のあちこちにある信仰(しんこう)に関(かか)わる施設(しせつ)へと次々飛(と)び込(こ)んだ。そしてその場所にまつわる物や伝承、そして特殊(とくしゅ)なアイテムを探(さが)し回(まわ)った。


「違(ちが)う、こんなものじゃない。もっと象徴的(しょうちょうてき)な、絶対にコレだと思えるものでないと、駆(か)けずり回(まわ)って手に入れる価値(かち)なんかない!」


 俺(おれ)が、そして俺(おれ)たちが、絶(・)対(・)的(・)に(・)納(・)得(・)で(・)き(・)る(・)何(・)か(・)。

 そんな何かが必ず存在する。


 リッケさんは言ってくれた。

 それは俺(おれ)たちが必ず手に入れられると。

 だとしたら、ある。

 この町のどこかに、必ずそれはあるはずだ!

 なのに――



「ない、ない、ない、どこにもない! どこにあるんだ、『太古の祝福』!?」


 町中の教会を廻(まわ)り、それらしいエピソードやアイテムを探(さが)し求(もと)めるも、そのどれもが曖昧(あいまい)で、想像の域(いき)を出ない。伝説があったというだけで、それを裏付(うらづ)けるアイテムも、出来事も、全(すべ)てがあやふやで適当なモノばかりじゃないか!


 最後の候補(こうほ)となった施設(しせつ)を巡(めぐ)り、俺(おれ)はらしくもなく足を引(ひ)っ掛(か)けて前のめりに倒(たお)れてしまった。転ぶなどいつぶりだろうか。ここまで追(お)い込(こ)まれた記憶(きおく)は、あの戦いを除(のぞ)いてほかにはないかもしれない。


「どこだ、どこにある!? 誰(だれ)か、教えてくれ。太古の祝福はどこにある!!?」


 夜半を過ぎ、町から人々の姿(すがた)が消えていく。話を聞こうにも、もはや誰(だれ)の姿(すがた)もなくなった。


 万策(ばんさく)尽(つ)き果(は)てた。


 既(すで)に三時間が経過していた。

 これ以上、もう時間はかけられない!


「クソッ!」と地面を叩(たた)くも、分厚い雪のクッションに阻(はば)まれ、その音すらも聞かせてはくれない。それどころか深々と降(ふ)り続く雪は、この町から全(すべ)ての音を奪(うば)い去るほど強烈(きょうれつ)な毒牙(どくが)を剥(む)き迫(せま)っていた。



 しかしそのとき、

 俺(おれ)の背後(はいご)に誰(だれ)かが近付いた。


 その人物は、まるで俺(おれ)に吸(す)い寄(よ)せられたかのように、あまりにも自然に、まるでずっとそこにいたかのように話しかけた。



「随分(ずいぶん)とお困(こま)りの様子だねぇ、化(・)け(・)物(・)さん?」


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