↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第2章 ピルピル草栽培開始!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/441

第059話 闇夜の一幕


 別の声が聞こえたからか、彼(かれ)は左目を少しだけ開けてみた。しかし残念、彼(かれ)の目の前にはこれでもかと顔を近付けたバケモノの姿(すがた)が!


 慌(あわ)てた彼(かれ)は、目の前のバケモノを引(ひ)っ掻(か)いて後退(あとずさ)った。「イッタ~イ」と泣き言を漏(も)らすバケモノに変わって出てきたのは、また別の人物だった。


「ったくもう、そんなことするから痛(いた)い目にあうんだよ。ほらキミ、大丈夫(だいじょうぶ)?」


 誰(だれ)かが彼(かれ)に手を差(さ)し伸(の)べた。

 しかしのっぴきならず、彼(かれ)はフルフルと首を横に振(ふ)った。


「だから言ったのに、あんまり脅(おど)すと怯(おび)えちゃうって。なぁポンチョ?」


 誰(だれ)かがまた別のなにかに呼(よ)びかけた。すると今度は誰(だれ)かの頭上で動いた影(かげ)が、勢いよく彼(かれ)へと飛びかかった。


 激(はげ)しく暴れる彼(かれ)と組み付いて離(はな)れない影(かげ)。しかし影(かげ)はモチモチと激(はげ)しく抱(だ)きついて離(はな)れず、頬(ほお)を激(はげ)しく彼(かれ)に擦(なす)り付(つ)けた。ヤメテと拒(こば)んでも、何度も何度も抱(だ)きつき、柔(やわ)らかな頬(ほお)を擦(なす)り付(つ)けた。


「ポンチョだよ~」


 ポンチョと名乗るバケモノに組み付かれ、もう彼(かれ)は逃(に)げられないことを悟(さと)ったらしい。もはや成るように成れと腹(はら)を差し出して仰向(あおむ)けに倒(たお)れ、全(すべ)てを晒(さら)すように諦(あきら)めるしかなかった――




「ハイッ、茶番はここまでです! 真実の裏(うら)にあるものは意外な事実だと人はいうけれど、まさかこんなのは想像もしてませんでした。……どっかの誰(だれ)かさんが八メートルのバケモノとか言うもんだから!」


 鼻先を引(ひ)っ掻(か)かれて痛(いた)がっているリッケさんを笑いながら、俺(おれ)はいよいよこの騒動(そうどう)の犯人を見下ろした。


 八メートルあるはずのその生き物は、どちらかといえばポンチョと同じくらいのサイズだろうか。もっといえば彼(かれ)と同じくらいモコモコで、さらにいえばもっと貧弱(ひんじゃく)で痩(や)せっぽちだ。

 小さくぴょこんと乗せられた程度の可愛(かわい)いらしい耳の下には、細長くて愛らしい顔。さらにはつぶらなお目々に毛むくじゃらな身体が哀愁(あいしゅう)を誘(さそ)う。かといって全身黒と白のまだらな毛束(けたば)かと思えば、その両手にはサイズに似合わない四本の大きな鉤爪(かぎづめ)が。中でも真ん中の一本は俺(おれ)の指の何倍もありそうなほど太くて大きく、鋭(するど)く光っていた。


「なるほど、トゲトゲさんや俺(おれ)の警戒(けいかい)に引っかからないわけだ。危険性(きけんせい)もなさそうだし、なんなら悪意がまったくない。まさか犯人がこんな小さな泥棒(どろぼう)さんだったとはね……」


 そこに倒(たお)れていたのは、俺(おれ)の記憶(きおく)が確かならば、いわゆるア(・)リ(・)ク(・)イ(・)に属する生き物だろうか。怯(おび)えてプルプル震(ふる)えているそいつは、死を覚悟(かくご)し、目を瞑(つぶ)ったまま俺(おれ)たちの会話を聞いていた。


「ねぇねぇ、ポンチョだよ~。キミは~?」


 互(たが)いにムチムチのモニュモニュな肌(はだ)を寄せ合えば、そこに生まれてくるのは笑顔(えがお)だけだ。俺(おれ)たちは朗(ほが)らかとした彼(かれ)らのスキンシップに笑(え)みを浮(う)かべながら、モコモコ二匹(ひき)の愛らしいやり取りをしばらく眺(なが)めていた。


「ふわぁぁあぁ、やめて、やめてよ~! もうひと思いにトドメをさしてよぉぉ~(ブルブル)」


 あ、喋(しゃべ)った。

 ということで、この生物がアリクイ族の獣人(じゅうじん)であることがこの時刻(じこく)をもって確定いたしました。


 俺(おれ)はアリクイさんの首根っこを掴(つか)み、ポンチョごとむんずと摘(つま)み上(あ)げる。そして「目を開けなさいモコモコよ」と命じ、相手の出方を待った。しかし怖(こわ)がっているのか、なかなかアリクイは動かず、メソメソ鼻をすするばかりで埒(らち)が明かない。


「う~ん、どうしたものか。マーロンさん、コイツどうしましょう?」


「おいお前、ここで何をしていた。答えろ?」


 俺(おれ)より一回り小柄(こがら)なマーロンさんに対応を任せ、対話を試みる。また別の声がしたと怯(おび)えているのか、アリクイは声がするたびにビクビク反応し、小動物のように震(ふる)えた。


「ハァ……。確かに八メートルの巨人(きょじん)とは比べても比べられない小者のようだな。しかしそうだったとしても、我(われ)らは同じ獣人(じゅうじん)の仲間だ。見捨(みす)てることなどできないよ」


「獣人(じゅうじん)?」と反応したアリクイが、そっと片目(かため)を開けてこちらを窺(うかが)った。光が眩(まぶ)しかったのか、何度か目をチカチカさせた彼(かれ)は、優(やさ)しく自分を抱(かか)えあげているマーロンさんのことを下から順に見上げ、また硬直(こうちょく)した。


「ね、猫(ねこ)族の獣人(じゅうじん)だ~! た、食べないで、僕(ぼく)を食べないで~(大泣)」


「だ、誰(だれ)が食うか! もういいだろ、少し落ち着けキサマ」


 アリクイを地面に降(お)ろし、マーロンさんが改めて目線を合わせて話しかけた。


「おい、お前は何者だ。どうしてここで盗(ぬす)っ人(と)なんかをしている?」


 盗(ぬす)っ人(と)という言葉にハゥッとショックを受けたアリクイは、自分のことをワキト・マルと名乗り、ここへやってきた経緯(けいい)をモコモコしながら語った。


「ずっとなんも食べてなくてね、お腹(なか)が減っちゃってね、そしたらいっぱい良い匂(にお)いがしてね、それで、それで、覗(のぞ)いたら蟻(あり)さんいっぱいいてね、それでね、食べちゃったの」


 あっけらかんと語ったマルさん。

 どうやら悪意も悪気もなく、空腹(くうふく)に耐(た)えきれずそこにいた蟻(あり)を食べてしまったということらしい。なんだよそれ……


「四日前の夜も、ウチの蟻(あり)を食っちまったのはキサマか?」


「四日前? ……ああああああ、美味(おい)しかったなぁ、あんなにいっぱい蟻(あり)さん食べたの初めてだったの。おいら鈍(のろ)いせいで蟻(あり)さんいっぱい掴(つか)まえられないから、いっぱい食べられないの(グズグズ)」


 い、田舎(いなか)の小学生か……

 しかしマーロンさんの見立てでは、既(すで)に成人済(す)みのミナミコアリクイ族の獣人(じゅうじん)ではないかと耳打ちしてくれた。


「アンタ、仲間は?」


「ずっと東の森にいたんだ。でもおいらたち、最近全然食べるものがないからね、こうして別の場所まで食べるものを探(さが)し歩いててね、それで。うぐっ、えぐっ、ごめんよ~(号泣(ごうきゅう))」


 どうやら罪悪感はあるらしく、誰(だれ)かが飼っている蟻(あり)という認識(にんしき)は持っていたようだ。しかもよくよく聞けば、もう一度蟻(あり)の匂(にお)いがするタイミングを待っていたらしく、計画的な犯行であることが窺(うかが)えた。すると……


「な~る~ほ~ど~。キサマ、計画犯だったか。この私(わたし)の蟻(あり)ちゃんを食(く)い尽(つ)くすとは、太(ふて)ぇ野郎(やろう)だな、えぇ!?」


 やっと口を開いた犯人(ホシ)の両肩(りょうかた)を掴(つか)み、顔に傷(きず)あるリッケという名のバケモノが勢いよく襲(おそ)いかかった。「ヒィィィ!」と怯(おび)えて悲鳴を漏(も)らしたマルさんは、そのまま気を失って倒(たお)れてしまった。


 ハァと息を吐(は)く俺(おれ)とマーロンさん。


 東の空を見上げれば、いつの間にやら僅(わず)かに陽(ひ)が差し、もう夜更(よふ)けを迎(むか)えてしまったらしい。


 まったく人騒(ひとさわ)がせな獣人(じゅうじん)さんだ。

 俺(おれ)は寝(ね)ぼけ眼(まなこ)を擦(こす)りながらボサボサの髪(かみ)を掻(か)き、「もう一眠(ひとねむ)りしましょうか」と提案した。「だな」と頷(うなず)いたみんながそれぞれの寝床(ねどこ)へと戻(もど)り、闇夜(やみよ)の一幕(ひとまく)は終結したのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。