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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第1章 村作り開始!

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第033話 最高の夜


「アンタの未来は、ひとっつも見えやしない。連れの(じょう)ちゃんの背中(せなか)は本当に静かで(おだ)やかなもんだってのに、アンタの背後(はいご)はさっぱりわからんときたもんだ。こんなことは85年生きてきて初めてさね」


「は、85年……?」


「なんだい、そうは見えないってかい? そりゃ(うれ)しいね」


「ば、ババアじゃねぇかよ……!?」


「あんだって!? もう一度言ってみな、この若造(わかぞう)が!」


 突然(とつぜん)(ちょう)が付く若作(わかづく)りが明らかとなったものの、どうやら彼女(かのじょ)の力は本物らしい。マーロンさんに何を伝えたかは秘密(ひみつ)らしいが、バックグラウンドの見えない(おれ)のことが気に(さわ)っているのは間違(まちが)いないみたいだ。しかも……


「それに、だよ。アンタの頭の上にいるソレ。……それはもっと気味が悪いね。なんなんだい、その生き物は」


 ポンチョを見つめながら彼女(かのじょ)(たず)ねた。

 しかしこればかりは、(おれ)にすらわからない部分が大きい。(ねむ)そうに欠伸(あくび)しているポンチョを(かか)えながら、「残念ながら、ちょっと(わけ)ありでね」と答えるに留めた。


「一度に二つも変なのがやってくっから、こちとら途端(とたん)に自信がなくなっちまったよ。そろそろ引退(いんたい)かね……」


「いや、アンタの(うで)は本物だと思うぜ。……(おれ)が保証する」


(うれ)しかないよ、化け物に()められてもさ」


 ハハハと笑って誤魔化(ごまか)すが、どうやらハロンヌさんのご機嫌(きげん)は直りそうもない。しかし用がないならここまでにと(おれ)が話を切り上げようとすると、彼女(かのじょ)は少しだけ真面目(まじめ)な顔をして言った。


「しかし……、彼女(かのじょ)にアタシが言ったこと。あれはアンタにも通じる話さ。どうやら(わけ)ありみたいだけど、いつまでも(うそ)が通じると思ったら大間違(おおまちが)いさね。誠実(せいじつ)に生きな、アンタにはそれが似合ってる」


 (おれ)は少しむず(がゆ)くなり、「なるべくそうするよ」と(うなず)いた。そして外に出ようと(とびら)に手をかけたところ、ハロンヌさんが一言付け加えた。


彼女(かのじょ)、大事にしてやんなよ。不幸にしたら、きっと色々化けて出るよ、きっとね」


 思わぬ言葉に、「それはどういうことでしょうね」と苦笑いを返すしかない。(とびら)(はさ)んだ外側で待っていたマーロンさんは、「話はもういいの?」といつもの顔に(もど)っていたが、(おれ)はどこを見て良いのやら、明後日(あさって)の方向を見つめながら「大丈夫(だいじょうぶ)」と答えるので精一杯(せいいっぱい)だった。


「それにしても、まさか行きたい場所が呪術(じゅじゅつ)師さんのお店とは思わなかったな。……変なこと言われなかった?」


 しかし話をはぐらかしたマーロンさんは「次に行きましょ!」と(おれ)の頭の上からポンチョを()()げて(うれ)しそうに()()した。彼女(かのじょ)(なつ)いているポンチョも、キャッキャッキャッキャと楽しそうに()(まわ)っている。


「ポンチョは(わたし)のこと好き?」


「ポンチョ、マーロン好きー!」


「ホント? (わたし)もポンチョのこと大好きだよ~。モコモコで可愛(かわい)いもん!」


「ポンチョ、もこもこ~?」


「うん、モコモコだよ♪」


「マーロンも、もこもこ~?」


(わたし)は……、ええと、う~ん、どうだろ?」


 なぜかマーロンさんが口ごもる。


「マーロンさん、やっぱり長毛には抵抗(ていこう)が……?」


「う~ん、本当は(わたし)も村のみんなと同じくらい長毛なんだけど、やっぱり動きにくいし、仕事に支障(ししょう)が出ちゃうしね。ポンチョは、(わたし)がもこもこの方が好きかな?」


 しかしポンチョはそもそも意味があまりわかっていないようで、質問を無視(むし)して「ポンチョ、マーロン好きー!」と答えただけだった。


「良いんじゃないですか、マーロンさんはそのままで。(おれ)もポンチョも、そのままのマーロンさんが好きですよ」


 かぁぁと顔を赤くしたマーロンさんが、「うるさい(だま)れ!」と早口で会話を切り上げ、ポンチョを(かか)えていってしまった。こりゃまいったと頭を()き、(おれ)はすぐ彼女(かのじょ)のあとを追いかけた。


 いつしか()(かげ)り、夜になっていた。(おれ)は帰ろうとする彼女(かのじょ)を引き止め、「食事でもどうです?」と(さそ)ってみる。ポンチョを(かか)えて了承(りょうしょう)してくれた彼女(かのじょ)を連れ、(おれ)は事前にローリエさんから教えてもらっていた店に招待した。


「この町一番のお店だそうですし、楽しみですね。ポンチョも美味(おい)しいご飯楽しみだろ?」


「ポンチョ、ご飯好きー!」


「フフフ、ポンチョは本当にご飯が好きだね。でも本当に良いの? 悠長(ゆうちょう)に食事などしていて」


大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)(あせ)ったところで状況(じょうきょう)は変わりませんし、何より悪いことしてるわけじゃないですから」


「それはそうだけど。しかしまだボア対策(たいさく)など課題は山積みだよ。すぐにでも対応策(たいおうさく)を考えなくちゃいけないのに」


「う~ん、本当はそうなんだけど。実はひとつ考えてることがあってさ」


「え?」


「それは明後日(あさって)にでも話すよ。それよりも今夜は食事を楽しもうよ。ポンチョもそうだよな?」


 ふにふにと(とぼ)けた(おど)りを披露(ひろう)するポンチョの可愛(かわい)さにやられ、観念したように(うなず)いた彼女(かのじょ)とともに、(おれ)たちはゆっくりと食事を楽しんだ。そうして愉快(ゆかい)な夜の(うたげ)一瞬(いっしゅん)にして過ぎていった。


 (かえ)(ぎわ)、いつもの宿をとった(おれ)とマーロンさんは、お(なか)がいっぱいになって(ねむ)ってしまったポンチョを頭に乗せながら、夜の街道(かいどう)を散歩した。少し口にした酒のせいか、いつもより(わず)かに(くだ)けた口調のマーロンさんは、(おれ)がきてから毎日がスリリングで楽しいと初めて笑いながら語ってくれた。


(おれ)も楽しいですよ。マーロンさんや村の(みな)さんもよくしてくれますし、何よりコイツがいつも楽しそうで」


 頭の上のポンチョを()でる。

 本当に可愛(かわい)いよねと同じように()でてくれた彼女(かのじょ)笑顔(えがお)に、(おれ)はこの世界に転生してから、初めて心の底から笑っていた気がする。


「……あのさ、ハク」


 ほんの一瞬(いっしゅん)会話が途切(とぎ)れたところで、彼女(かのじょ)が不意に話しかけた。(みょう)真剣(しんけん)彼女(かのじょ)の表情に(おれ)はどうにも身構えてしまい、「なんでしょう」と堅苦(かたぐる)しく返事をした。


「ハハハ、そんなに身構えないでよ。……実はさ、ずっと聞かなきゃって思ってたことがあって」


「聞かなきゃいけないこと?」


「その……、ハクってさ。ちょっと(わけ)あり? っていうのかな。なんだか自分を(かく)してたり、そんなところ、あるでしょ」


「ああ、……そう、かもね」


「前から少し気になってたんだ。ポンチョがね、たまにハクのことを『トーア』って()ぶでしょ。もしかすると、それってさ……」


 (おれ)は口を少しばかり結び、「そうですね」と言葉を止めた。これまではポンチョと(おれ)の間だけで通じるアダ名と言って周りを(だま)してきたけど、何も(おれ)だって(うそ)をつきたいわけじゃない。トアはこの世界でほとんど使ってこなかった名前で、その名の真実を知る者もポンチョを(のぞ)けばほぼ存在(そんざい)しない。しかし(おれ)が生きているという(あかし)になってしまうかもしれないその名前を、(おれ)たち以外の第三者に語ることはリスクが大きすぎる。それでも……


「……そう、カミノ・トア。それが(おれ)の本名です。今や(だれ)も知らない(おれ)の名前を()んでくれるのはコイツだけさ。ごめんね、ずっと(うそ)をついてた」


「やっぱり。……でも良かった、本当のことを話してくれて。……じゃあさ、(わたし)()んでいいかな。二人(ふたり)一緒(いっしょ)のときだけは、ハクのことを『トア』って?」


「え、ええと、それは……」


「いいでしょ、ねぇ、……トア?」


 彼女(かのじょ)の顔がゆっくりと近付き、(くちびる)()れる。


 しかし寝返(ねがえ)りをうったポンチョの手が(おれ)たち二人(ふたり)(ほお)()れ、思わずプッと()()してしまう。


(かえさ)ろっか♪」


 夜風に()かれ、毛がなびいている。

 (おそ)らく(おれ)は、この夜のことを生涯(しょうがい)(わす)れないだろう。


 これから運命の代償(だいしょう)ってやつがどれだけ重くのしかかってきたとしても、(おれ)は自分の人生が良いものだったと(むね)を張って言える気がする。



 それほどに、最高の夜だった――


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

もし少しでも面白いと思っていただけましたら、評価やブックマーク等を頂けますと励みになります。

多分ポンチョも喜びます!

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