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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第1章 村作り開始!

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第034話 冗談がすぎる


 それから二日後



 集まったギルドの視察(しさつ)団が森の入口を出発した頃(ころ)、案内役となるマーロンさんの緊張(きんちょう)度合はなかなかのものだった。


 俺(おれ)監修(かんしゅう)のもと何度も入念にリハーサルを行い、ボアたちを含(ふく)めて必要以上の打ち合わせを実施(じっし)し、今この時を迎(むか)えている。俺(おれ)はそこまでしなくても大丈夫(だいじょうぶ)と言ったのに、ギルドにおかしな疑念(ぎねん)を持たれるのは厄介(やっかい)だからと聞かない彼女(かのじょ)は、ボアボアと玉乗りまがいの大道芸まで練習し、準備万端(ばんたん)状況(じょうきょう)を整えた。


 しかしこちらの柔和(にゅうわ)に進めたい雰囲気(ふんいき)とは対照的に、ギルドの面々の表情は固く、その装備(そうび)からも緊張感(きんちょうかん)が漂(ただよ)っていた。急遽(きゅうきょ)掻(か)き集(あつ)めたランクCの冒険者(ぼうけんしゃ)が二人(ふたり)、D二人(ふたり)、そしてローリエさんとテーブルを加えた六名が帯同し、彼女(かのじょ)に先導されるまま猫(ねこ)族の村を訪(おとず)れたのだった――




「ようこそいらっしゃいました。私(わたし)はこの村の長(おさ)である族長のウィーヴルと申します。以後、お見知りおきを」


「私(わたし)はマイルネの冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドでギルドマスターを務めております、ロスカート・テーブルと申します。お目にかかれて光栄です」


 挨拶(あいさつ)を交(か)わした代表同士が勘繰(かんぐ)りを入れる中、俺(おれ)は目で合図をしているマーロンさんに「あまり気負わず」とジェスチャーで返した。しかし肩肘(かたひじ)張って鼻息も荒(あら)いマーロンさん。本当に大丈夫(だいじょうぶ)か……?


「しかし……、こう言ってはなんですが、随分(ずいぶん)と静かなものですな。事前にお話は窺(うかが)っていたものの、多くのボアたちを従(したが)えているとお聞きしていたので、どんな賑(にぎ)やかなものかと心配しておりましたが」


「ホッホッ、そう緊張(きんちょう)なさらずとも大丈夫(だいじょうぶ)ですぞ。マーロンや、早速(さっそく)ではあるが、皆様(みなさま)を例の場所へ案内いたせ」


 どうやら浮足立(うきあしだ)っている彼女(かのじょ)の仕事を早く済(す)ませようとしたのか、到着(とうちゃく)するなり彼(かれ)らを連れ出した猫(ねこ)族の皆(みな)さんは、ボアたちが待つ俺(おれ)の村の一角へと視察(しさつ)団を招き入れた。少しはゆっくりしてもらったらいいのにと彼(かれ)らの様子を遠目に眺(なが)めていた俺(おれ)は、こちらに気付いた様子のローリエさんに手を振(ふ)りながら、小さく欠伸(あくび)をひとつ。


 戦闘(せんとう)場と銘打(めいう)ったボアたちの泥(どろ)浴び場を訪(おとず)れた視察(しさつ)団の六名は、緊張(きんちょう)の面持(おもも)ちで警戒(けいかい)を怠(おこた)る様子はない。いつボアたちが襲(おそ)ってきてもいいように、自らが最も得意とする武器を構え、先導するマーロンさんに続き、一歩一歩確実に進んでいく。


「ここがボアたちが暮(く)らす住処(すみか)となります。そちらに見えている泥(どろ)の沼地(ぬまち)は、主に彼(かれ)らが泥(どろ)浴びや戦闘(せんとう)訓練を行う場として使用しています。私(わたし)たちと行う合同訓練に利用することもありますが、まぁ彼(かれ)らの習性に合わせて作られた専用(せんよう)の集会場、みたいなものですね」


「しゅ、集会場ですか。猫(ねこ)族の皆(みな)さんとボアたちが集まって話をすることがあるのですか?」


 ローリエさんが不思議そうに質問した。どうやら獣人(じゅうじん)族相手とはいえ、ボアが対話を使った相互(そうご)間のやり取りをするとは考えていないらしく、酷(ひど)く感心していた。


「我々(われわれ)獣人(じゅうじん)族はボアと対話することができるため、彼(かれ)らとの連携(れんけい)は造作もありません。口で言うばかりではなんですし、まずは見ていただくのがよろしいかと」


 ローリエさんの隣(となり)で指笛を吹(ふ)いたマーロンさん。すると突然(とつぜん)周囲が激(はげ)しく揺(ゆ)れ始(はじ)め、視察(しさつ)団の面々が腰砕(こしくだ)けになりながら武器を握(にぎ)り直(なお)す。しかしそれを嘲笑(あざわら)うかのように、泥(どろ)の底から浮(う)き上(あ)がるように出現した多数のボアたちが、全員の周囲を取り囲んだ。


「ちっ、やはり罠(わな)か!? 全員、警戒(けいかい)しろ!!」


 テーブルの怒声(どせい)に、他(ほか)の五人が武器を身構えた。総勢六人の冒険者(ぼうけんしゃ)に対し、ボアの数はその四倍以上。あまりに多勢に無勢すぎる状況(じょうきょう)に、歴戦の勇士であるテーブルの額にも汗(あせ)が滲(にじ)んでいた。


 しかし五秒、十秒と経過しても、泥(どろ)を払(はら)うばかりで襲(おそ)ってこないボアたちの様子に目を奪(うば)われたまま、今度は困惑(こんわく)の表情を浮(う)かべ始(はじ)めた。まぁ無理もないよな……。


「ご安心を。最初にも言いましたが、我(われ)らとボアたちの連携(れんけい)は完璧(かんぺき)です。彼(かれ)らが皆(みな)さんのことを襲(おそ)うことは絶対にありません」


「し、しかし、この状況(じょうきょう)は少々冗談(じょうだん)がすぎるかと」


「ふふ、そうでしょうか。それに、驚(おどろ)くのはまだ少々早いかと」


 不敵に微笑(ほほえ)むマーロンさん。

 そこまでしなくていいと言っておいたのに、どうやらそこまでやってしまう、つもりらしい。


 パチンと彼女(かのじょ)が指を鳴らすと、皆(みな)を取り囲んでいるボアたちの輪が広がった。そして次の瞬間(しゅんかん)、さらに激(はげ)しい揺(ゆ)れとともに、皆々(みなみな)の前に激(はげ)しく身体を揺(ゆ)らしながら黄金に輝(かがや)く巨体(きょたい)が姿(すがた)を現した。その様は、言ってみれば絶望を引(ひ)き込(こ)むほどの迫力(はくりょく)を醸(かも)し出(だ)している。


「なッ!?」


 大トリとして出現したゴールデンワイルドボアの迫力(はくりょく)に飲まれ、視察(しさつ)団の身体から力が抜(ぬ)けていく。


 もはや死すら覚悟(かくご)させるほどのボアボアの威圧感(いあつかん)にやられ、冒険者(ぼうけんしゃ)たちはグルルルと鼻を鳴らした圧倒的(あっとうてき)な脅威(きょうい)から逃(のが)れる術なく立(た)ち竦(すく)んでいた。


「……ご納得(なっとく)いただけたでしょうか、我(われ)らがボアと共存共栄(きょうそんきょうえい)の関係であると。それともまさか、まだ疑(うたが)いの声を上げるとでも? でしたらそれも構いませんが、そのときはそれなりのお覚悟(かくご)をいただく必要があるかもしれませんね」


 いやいやマーロンさん、何を仰(おっしゃ)っているんですか……。それ、皆(みな)さんを生きて返さないと言ってるのと同じことですよ?


 穏便(おんびん)にいきましょうね、穏便(おんびん)に……。


「なるほど、確かに貴方(あなた)がたとボアは協力関係にあるらしい。しかしいただけませんな。これでは何か、後ろめたいことでもあるかのように受け取られかねない。違(ちが)いますかな?」


 ほ~ら、そうやって勘繰(かんぐ)られる。

 視察(しさつ)団の中で唯一(ゆいいつ)冷静を保っていたマスターのテーブルは、目の前で生暖(なまあたた)かいボアの鼻息をかけられてもなお、腕組(うでぐ)みしたまま、まっすぐに彼女(かのじょ)のことを見定めていた。


 う~ん、そろそろ潮時(しおどき)かな。



「はーい、ストップストップ。皆(みな)さん、少々落ち着きましょうね。ローリエさんも落ち着いて、はーい深呼吸(しんこきゅう)!」


 もはや魂(たましい)すら抜(ぬ)けてしまいそうなローリエさんをボアの輪の中から助け出した俺(おれ)は、「自分は部外者ですけど」と前置きしつつ話に割(わ)って入った。「だからコイツはいつもなんなんだ」と訝(いぶか)しんでいるテーブルの顔色を窺(うかが)いながら場をなだめた俺(おれ)は、「喧嘩(けんか)はダメですよ」と彼(かれ)らを仲裁(ちゅうさい)し、取り囲んでいるボアたちに解散するよう命じた。


「まぁこんな感じで、猫(ねこ)族さんとボアたちは仲良く過ごしてますから大丈夫(だいじょうぶ)です。ほら、そもそも部外者の俺(おれ)ですら、これだけフレンドリーな関係なんですから」


 などと言いながらボアボアの鼻面(はなづら)を撫(な)でてみる。フンフンと嬉(うれ)しそうなボアボアの姿(すがた)に安堵(あんど)したのか、残りの冒険者(ぼうけんしゃ)の顔色が少しだけ明るくなった。それでも……


「なるほど、本当にゴールデンワイルドボアを飼いならしている、か。しかしそれはそれで問題ですな。先程(さきほど)の貴殿(きでん)らの発言は、それを黙(だま)って見過ごせと仰(おっしゃ)っているように窺(うかが)えた。……これだけの戦力を保持し、はてさて何をするつもりですかな。まさか、国家への反逆などとは申しませぬな……?」


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