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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第6章 みんな大好きモコモコ村!

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第315話 興奮と小休止


 最大にして最後の(たて)を失ったフライは、目の前に(せま)った敵を()()とさんと、苦し紛れに溶解液(ようかいえき)()めた。しかしその時間すら(あた)えない彼女(かのじょ)の爪先がフライの目玉に着地し、さらにコンマ数秒後、高く(かか)げた二本のククリ刀が、脳天(のうてん)()()さった。


 ザクッ、ザクッとニ度の斬撃(ざんげき)音に続いて、さらに直後、ブシュッと液体が()()る音が(ひび)いた。L字に()かれたフライの脳天(のうてん)から多量の血液と脳髄(のうずい)(あふ)れて落下し、バランスを失った六本の(あし)が、その場で(くず)()ちる。逆に折れ曲がった節が()ぜ、(はげ)しく転倒(てんとう)したフライの頭上で、二つの刀を(にぎ)りしめた彼女(かのじょ)は、最強の戦士を思わせる雄々(おお)しい声で勝利の勝鬨(かちどき)をあげた。


「す、す、スゲェ……。や、や、や、やった、やっちまいやがった……!!」


 ペタンと(すわ)()んだバーサムが、気の()けるような声で(つぶや)いた。

 シーリカの指先でくすぶっていたタバコは、一度も()われることなく(はい)になって地面に落ちた。


「日々の努力は決して裏切(うらぎ)らない。勝負は時の運なんて言うけど、最後の最後まで(あきら)めない気概(きがい)が勝負を決めることだってある、……な~んてね」


 目に(なみだ)()かべ、あんぐりと口を開けたまま()()くしていたニコルの(かた)(たた)き、「(すご)いだろ、あれ(おれ)(おく)さま」と自慢(じまん)する。何か言いたそうにこちらを見る彼女(かのじょ)の顔は険しいものの、どうやら心打たれたのは(おれ)だけじゃないってことだよな!


「ハァハァハァハァ、……やった、やったの、(わたし)……?」


 全身に血を(かぶ)り、緑色の顔で呼吸(こきゅう)しているマーロンさんのもとに、シーリカが()()って()きついた。「(あね)さん、スゲェっす!」と彼女(かのじょ)(たた)える反面、微妙(びみょう)蚊帳(かや)の外にされてしまったシルシルは、不服そうに(まゆ)(ひそ)めていた。


「ははは、お(つか)れ、シルシル」


 (かれ)尻尾(しっぽ)とハイタッチ。

 初めてニヤリと微笑(ほほえ)んだシルシルは、「これしき、容易(たやす)いものです」と得意気に尻尾(しっぽ)()って(こた)えた。


 シーリカに()きつかれたままなマーロンさんは、目の前の現実がまだどこか(うそ)のように感じているのか、(かか)えた彼女(かのじょ)背中(せなか)()しに(にぎ)ったククリ刀の刀身に(うつ)(おのれ)姿(すがた)を見つめていた。そして、


(わたし)、……勝ったんだ」と(つぶや)き、グッと目を(つぶ)り、勝利の余韻(よいん)()()めた。


 ガゴンと、どこからか音が聞こえてきた。どうやらエメラルドドラゴンフライは、ダンジョンにおけるエリアボスの(あつか)いだったらしく、()ざされていた空間が解放されたようだった。


 二人(ふたり)()()って勝利の喜びに(ひた)(かれ)らの姿(すがた)俯瞰(ふかん)(なが)めた(おれ)は、(だれ)にも気取られぬように顔を()せ、ひとりガッツポーズする。自分自身の勝利とは全く(ちが)う格別な感情が、そこに確かに存在(そんざい)していた。


「やった、やりましたね(あね)さん! あっし、ずっと信じてましたぜ!」


(うそ)つけよランド、テメェずっと(おれ)たちはもう死ぬんだとか言ってたじゃねぇか。なぁロッデム!」


 何度も(うなず)くロッデムに「うっせぇ!」とツッコむランド。

 ま、たまにはこんな場面も良いものですね。


 (おれ)は喜びを(かく)すようにひとり深呼吸(しんこきゅう)してから、パンッと大きく手を(たた)いた。

 魔物(まもの)が復活したかと(おどろ)いてこちらを向いたみんなに、再度パンパンと手を(たた)き、(かれ)らの苦労を(ねぎら)いながら、「少し休憩(きゅうけい)にしましょう」と提案した。


「ヒャッホー! 休憩(きゅうけい)だ、休憩(きゅうけい)! 飯だ飯!」


 気持ちを()()えたバーサムがウキウキで荷物を()()てた。飯という単語に反応し、頭上で()ていたポンチョが目を覚まし、「ごは~ん?」と(ねむ)そうに目を(こす)った。



 それから(おれ)たちはしばしの休憩(きゅうけい)を取り、旅の(つか)れを()やすことにした。(みな)が手分けして食事の準備をする中で、フロアボスは美味(うま)いというジンクスを信じてエメラルドドラゴンフライの肉を切り出した(おれ)は、(ため)しに〝フライのフライ〟を作って味見をしてみた。しかしドブ(くさ)すぎる肉は食えたものではなく、残念ながら素材として回収(かいしゅう)するに留め、仕方なく持参した食材を全員に()()った。


「ポンチョ、おイモとキノコ好き~♪」


「おれっちもキノコ好き~♪」


「ムー、ポンチョのがもっと好きー!」


「へっへ~ん、おれっちのが好きだもんね~。ほ~れ、焼いたキノコにべっちょりタレをぶっかけて、お口にポーン!」


 得意気にキノコを頬張(ほおば)るランドに対し、(いか)りに(ふる)えてムググと歯ぎしりしているポンチョ。

 こらモコモコさん、そんなの相手してたらバカが移るのでおやめなさい。


 ()()を囲んでギャハギャハと(やかま)しい面々から少し(はな)れて(すわ)り、肉が乗ったままの皿を手に、どこかまだ現実と虚構(きょこう)彷徨(さまよ)っている様子のマーロンさん。彼女(かのじょ)(となり)にそっと腰掛(こしか)けた(おれ)は、彼女(かのじょ)の皿から肉を一欠片(ひとかけら)拝借(はいしゃく)し、ポンと自分の口に(ほう)()んだ。


「…………あ、……トア」


「どうしたの、ボーッとしちゃって。あっちでみんなに混じればいいのに」


 うんと(うなず)いたものの、まだぼんやりと宙空(ちゅうくう)(なが)めている彼女(かのじょ)は、皿を地面に置き、改めて自分の手のひらを見つめた。


(わたし)さ、エメラルドドラゴンフライに、……勝ったんだね」


「そだね。だけど当然だよ。マーロンさん、いつも頑張(がんば)ってるし」


頑張(がんば)るだけで強くなれるなら苦労しないよ。それにトアだったら、もっと簡単(かんたん)(たお)せちゃったりするだろうし」


「それはそれ、これはこれ、だよ。何より今回の成果は、マーロンさん自身が努力してきた結果じゃないか。ちゃんと喜べば良いと思うよ」


「そうかな……?」と(つぶや)いた彼女(かのじょ)の顔に、初めて(かす)かな笑顔(えがお)()かんだ。

 そうそう、貴女(アナタ)にはいつも笑顔(えがお)が似合います。


「あ、そうだトア。これ貸してくれてありがとね」


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