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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第6章 みんな大好きモコモコ村!

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第311話 封鎖虫


「ハイ~!?」と苦悶(くもん)の表情で死にそうな三人をよそに、指先に(つば)を付けて通路内の風向きを確認(かくにん)したニコルは、持参した荷物の中から小瓶(こびん)を取り出した。それから取り出したのは小さなナイフで、(かべ)に小さな(きず)をつけ、(にじ)んできた液体を少量だけすくって(びん)の中に混ぜ合わせた。


「それは?」


「まぁ見てなさいよ。ただ……、少しだけ覚悟(かくご)しといて」


 グニュグニュと粘着性(ねんちゃくせい)のある何かを混ぜ合わせたニコルは、最後に液体化させた自分の魔力(まりょく)一滴(いってき)投入する。すると突如(とつじょ)ゴポゴポと沸騰(ふっとう)したように暴れ始めた液体が気化し、(おそ)ろしい勢いで(けむり)()()げた。


「な、なんだこりゃ!?」


「ルスカの千年樹名物、『無限爆煙(ばくえん)』とはこれのことよ。少量の粒良石(ツブラいし)に千年樹の根液、さらに少しの素材と魔力(まりょく)を混ぜ合わせてやるだけで、(おそ)ろしいほどの(けむり)を発生させられる液体の出来上がり」


 モクモクと(ふく)()がった(けむり)の束が、進行方向だけでなく全空間を()()くしていく。「これじゃ何も見えないぞ!?」と(さわ)ぐ三バカに対し、(おれ)(うで)をギュッと(つか)んだニコルは「アンタたちに(つか)まってればきっと大丈夫(だいじょうぶ)よね?」とウインクし、(おど)けながら言った。


「アハハ……、まぁそういうことね。ホントちゃっかりしてるよ」


 (けむり)一瞬(いっしゅん)のうちに地下一帯へと広がり、細い通路を()うように(うす)(けむり)が包んでいく。

 しかし視界(しかい)(うば)われる代わりに、(けむり)が行き(とど)いた端々(はしばし)から別の情報が探知(たんち)()()んでくる。


「おい、これ……!?」


「そういうこと。この(けむり)はちょっと特殊(とくしゅ)な性質を持っててね。(けむり)()れている対象者の魔力(まりょく)を、遠くの場所まで辿(たど)って(さぐ)ることができるの。もともと広範囲(こうはんい)探査(たんさ)ができる人なら、さらに精度を上げて思った範囲(はんい)(しぼ)って(さぐ)ることもできるってわけ」


 (けむ)った空間から「おおっ!」と(だれ)かの(おどろ)きが聞こえてくる。

 しかしニコルは、「だけどねぇ」と気怠(けだる)そうに言葉を(つな)げた。


「こっちからもわかりやすくなるってことは、〝相手〟からもってことなのよねぇ。ほら、ここって高ランクのダンジョンでしょ? 中には探知(たんち)の力が強い魔物(まもの)もいるのよねぇって」


 そう彼女(かのじょ)が言ったのも(つか)()(けむり)(おく)(かす)かに光った。

 主に人型の魔物(まもの)と言えば良いだろうか。これまで可能な限り()けてきた、二本足で歩きがちな魔物(まもの)さんが、軒並(のきな)(そろ)っての登場です。


 はてさて(こま)りました。

 さすがに(おれ)とマーロンさん、そしてシルシルだけで、この数を相手するのは(ほね)が折れます。

 いやむしろ、全滅(ぜんめつ)してもおかしくありません!


「ということで、皆様(みなさま)準備はよろしいでしょうか?」


「いやぁぁぁ!?」と悲鳴を上げる面々をよそに、魔物(まもの)たちが一斉(いっせい)(おそ)いかかってくる。


「よぉぉし、それじゃあ一斉(いっせい)に走るぞ、()げろ―!!」


 (おれ)()(ごえ)をきっかけに、四バカの悲鳴やポンチョの(うれ)しそうな声がダンジョンの細道を()けていく。アハハハと笑いながら逃亡(とうぼう)する様は奇怪(きかい)そのものですが、たまにはこんなのも良いもんだ!


「じぬ゛ぅぅぅ!! ダズゲデェェェー!」


 文字通り(けむり)()くを地で行く逃亡(とうぼう)(げき)がしばらく続き、小一時間(ひび)いた悲鳴の(うず)がようやく消えかけた(ころ)(おれ)たちの進む先にこれまでと(ちが)異変(いへん)が現れた。(あわ)ててストップをかけた(おれ)の指示をきっかけに、(はげ)しく転倒(てんとう)したバーサムは、「もういい加減にしてくれ……」と(なみだ)とヨダレでぐしゃぐしゃな顔で泣き言を言った。


「とは言え、さすがにコレは止まらずにおれんでしょうが。ちなみにニコルさんや、あそこの()()貴女(アアタ)は知っていらっしゃるの?」


 直線的に続く小道の先で、それは堂々と(おれ)たちの行く手を(はば)んでいた。

 (わず)かに開けた空間の先で(あわ)い光を放っているソレは、まるで微動(びどう)だにせず、静かにこちらを見つめていた。


「アタシも(うわさ)で聞いたことがあるくらいなんだけどさ、下層(かそう)にはね……、あの(おぞ)ましき()()がいるらしいの」


 本来アレに対しアレで返すのはいただけませんが、どうやら覚えがあるらしい。

 ようやく(けむり)が晴れてきた通路の先を見据(みす)えて、ふぅと息を()いて(ひたい)(あせ)(ぬぐ)ったニコルは、荷物の中から小さな金属片(きんぞくへん)を取り出すと、(おもむろ)に地面に転がした。


 (ゆか)と金属が(かな)でるカツンカツンという(かわ)いた音が(ひび)き、先に見えていたアレに(かす)かな変化が生じた。ぐぃと持ち上げたアレの正体が初めて(あら)わとなり、ランドが「ヒェッ!?」と悲鳴を上げた。


「世間で(ぞく)()ばれてる『封鎖(ふうさ)虫』って聞いたことないかしら。いわゆる『三獄卒(ごくそつ)』の一つね。かの有名な悪魔(あくま)の通り道と()ばれるデスロードの番人として名高いテンペストビートル、通称(つうしょう)(おに)ゾウムシ』。そして二つ目が、魔界(まかい)(かま)に巣食うデモンズウォールの番人であるブラックデモンズフォーグ、通称(つうしょう)地獄(じごく)のムカデ』。そして最後の一つ。それが回廊(かいろう)下層(かそう)へと続く唯一(ゆいいつ)の道に住まう封鎖(ふうさ)虫。その姿(すがた)は飛ばないトンボ。もともと羽だったモノは無数の(うで)のように進化し、巨大(きょだい)な頭は内部に無数の()を備え、(すべ)てのものを見定めると言われているわ」


封鎖(ふうさ)虫ねぇ。で、それの正式名称(めいしょう)は?」


 こちらの質問に対し、しばらく()(だま)ったニコルは、自身の(むね)を三度(たた)いてから、(おのれ)に言い聞かせるように言った。


通称(つうしょう)『地を()うトンボ』こと、エメラルドドラゴンフライ。もはや伝説に近い魔物(まもの)の一つよ」


 ニコルの言葉に、あぅあぅと言葉が出ないバーサム、ランド、そしてロッデム。それもそのはずで、それら三種の魔物(まもの)は、冒険者(ぼうけんしゃ)便覧(びんらん)の1ページ目に記されるほどのビッグネームで、知らない冒険者(ぼうけんしゃ)はモグリと()ばれるほどだからだ。さすがのシーリカも、(くわ)えていたタバコの先が(ふる)え、「は?」と(つぶや)くので精一杯(せいいっぱい)だった。


「ちょ、ちょっと待ってよ。そんなバケモノが、この先にいるってこと!? 無理でしょ、どー考えたって無理に決まってるでしょ!!?」


 いつもならマーロンさんが言うはずの指摘(してき)をシーリカが(さけ)んだ。自分の台詞(せりふ)を取られて不服だったのか、マーロンさんがどこか(さび)しそうにしているぞ。大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)(かた)をポンポンしてあげます。


「ここの地下にそんなのがいるなんて、どこかでずっと(うそ)だと思ってたけど、どうやら本当だったみたい。その証拠(しょうこ)にアレ、多分だけど、過去にやられた冒険者(ぼうけんしゃ)亡骸(なきがら)よね」


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