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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第6章 みんな大好きモコモコ村!

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第310話 走る準備


 明道管が照らしていた光りが(うす)れ、静かな(やみ)があたりを包み、これまで感じられていた()の熱のようなものまでが()(はら)われて消えていく。文字どおりの静寂(せいじゃく)の中では、時折脈打つような()の内側に流れていく水音だけが聞こえていた。


「なぁニコル。アンタ、この先のことも(くわ)しいのか?」


「アタシが情報として持ってるのは上層(じょうそう)のものがほとんどよ。だけど、そんなことよりもっと重要なことを知ってるわ」


 ゴクリと息を飲むニコル。そして()(あせ)(にじ)んだ(ひたい)(ぬぐ)いながら、「上層(じょうそう)とは圧倒的(あっとうてき)魔物(まもの)のレベルが(ちが)うってこと」と(つぶや)いて微笑(ほほえ)む。たったそれだけで四バカは(すく)()がり、ガタガタと(ひざ)(ふる)わせた。


「な、なぁ旦那(だんな)、ほ、ホントに進むんですかい。(おれ)たちゃ上層(じょうそう)ですらどうにもなんねぇんだ、この先でどんなことがあっても、(おれ)たちなんかじゃとても……」


 そうバーサムが言いかけたところで、前行くシルシルが鼻を小刻(こきざ)みに鳴らしてピタリと足を止めた。無意識にハッと呼吸(こきゅう)を止めたシーリカは、両手で口を()さえ、ロッデムを(たて)にして()()(ごし)で身構えた。


「村長殿(どの)


「ああ、うん。結構いるね。どうする?」


「ここは(われ)が」と(おく)(やみ)(にら)みつけるシルシル。

 すると(おもむ)ろにギロリと(かがや)数多(あまた)の玉が、漆黒(しっこく)(やみ)(ちゅう)空に()かび上がった。


「あ、あ、あ……、アンバージャックウルフの群れ……。しかも、デカい」


 これまで口を開いたことがなかったロッデムが、想像より2400度高いトーンで(つぶや)いた。グルルと吐息(といき)()らし(きば)()いたシルシルは、小型化している自身の背丈(せたけ)(ゆう)()える大集団を前に、あまりにも堂々と()(ふさ)がった。


「あ、(あに)さん、あんなの勝ち目がねぇっすよ!? シルシルのアニキがやられっちまいますぜ!」


 ランドが(うで)(つか)んで引っ張るけど、残念ながら()が村の(たみ)()めてもらっちゃあ(こま)る。それどころか、あの程度の魔物(まもの)相手に(ふる)えていたんじゃ、()が村に住む資格すらないわけで……。


「意思も持たぬ低俗(ていぞく)なウルフ風情(ふぜい)が、(われ)らの行く手を(はば)もうとは。片腹痛(かたはらいた)いわ!」


 ウォーンと(たけ)った遠吠(とうぼ)えがウルフたちの身体を()らす。

 すると我慢(がまん)ならず、先頭の一頭がシルシルめがけて(おそ)いかかってきた。


「ひ、ヒィィ!」


 ランドが身を引き()()った。

 しかし小さな首を相手の巨体(きょたい)にぶつけただけで先頭のウルフが()()ばされ、(かべ)にバウンドし転がった。

 続けて三体が同時に飛びかかる。しかし(あわ)てる素振(そぶ)りなく口から氷結魔法(まほう)を放ったシルシルは、一瞬(いっしゅん)で敵を(たた)(おと)し、その喉笛(のどぶえ)()()った。


「ふん、所詮(しょせん)統率(とうそつ)も取れぬ下級ウルフよ。残りもさっさとかかってこぬか。軽く(たた)(おと)してくれる」


 フグフグと(あら)呼吸(こきゅう)()()らして()()んできたウルフを数秒で(はら)()け、最後の一頭の首元に()()くシルシル。そして余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)放り投げ、わざわざウルフの山を作って(おれ)一瞥(いちべつ)した。


 返り血で血まみれになった身体を()(みだ)し、ハッハッと舌を出して()()ってくる様は、忠犬(ちゅうけん)のそれに似すぎている。キラキラした(ひとみ)で見つめられれば、自然とアゴ下と頭を()でながら「(えら)いね~、(えら)いね~」と()めてしまいそうだ。グッと我慢(がまん)我慢(がまん)


「……そ、村長殿(どの)如何(いかが)なされた?」


「い、いや、なんでもないよ!? さ、さっすが高位のウルフ、あれくらいは楽勝だね」


 ご機嫌(きげん)にフフンと鼻を鳴らしたシルシルの頭をポンチョがナデナデする。

 ……くそっ、(おれ)もしたい!


 そんなほのぼの空気の村人たちとは(ちが)い、4+1人は(おそ)ろしいものを目撃(もくげき)したかのように口を開けたまま()()くしていた。ニコルの(かた)をポンと(たた)いたマーロンさんは、「先を急ぎましょう」と何事もなかったかのように言った。


 しかし魔物(まもの)脅威(きょうい)(はば)むことができたとて、(おれ)たちは自分たちが目指すべき明確なゴールを知っているわけではない。大木の(すべ)てを支えている根っこは(いた)る所にまで()(めぐ)らされていて、必然的に広囲(こうい)(わた)る地下の捜索(そうさく)難航(なんこう)(きわ)めた。魔物(まもの)との戦いを極力()けつつ地下へ地下へと進み続けたものの、丸二日が経過するも(いま)だ根の底は見えず、(あみ)の目状に()(めぐ)らせた千年樹の先の先を闇雲(やみくも)に走り回るばかりだった。


 さらに道筋(みちすじ)は根の先に進めば進むほど細く(とぼ)しいものとなり、果てには中途半端(ちゅうとはんぱ)な位置で行き止まりになることもしばしばだった。そのたびに項垂(うなだ)れてため息を()く者もいて、いよいよタイムリミットを考えると、限界の時刻(じこく)(せま)りつつあった。


「時間的にはあと半日でちょうど半分になるけど、まだまだ底に到達(とうたつ)できる予感すらしないね。目的のアイテムだって、良く言ってまだ半分ってところかしら。ハッキリ言ってマズいわね」


 客観的に指摘(してき)してくれるマーロンさん。

 どうにかなるかもと簡単(かんたん)に考えていたあの時の(おれ)

 しっかり反省なさいよ、ホントに!?


「ちょ、ま、待ってくれ、アンタたちは大丈夫(だいじょうぶ)でも、(おれ)たちの方は精神が保ちそうにねぇよ。マジでなんなんだよ、ここの魔物(まもの)。どいつもこいつもバケモノばっかじゃねぇか……」


 精神をすり減らしすぎて、ダンジョンに入った(ころ)より30キロくらい()せたような顔してバーサムが言った。ランド、ロッデムも同じく限界が近そうだが、反対にシーリカとニコルは随分(ずいぶん)慣れたのか、ケロッとした顔でついてきていた。やはりいざというときは女性の方がシッカリしてますね……。


「ただこれだけ広いと、闇雲(やみくも)に走り回ったところで目的の場所へ辿(たど)()くのはいつになることやら。ねぇシルシル、何かいい方法ないかな?」


 さしものシルシルも首を横に()る。

 (にお)いや探知(たんち)(さぐ)れる範囲(はんい)などたかが知れており、しかもムダな体力を使うとなればなおさらだ。


「ニコルは何か知らない?」


「そうねぇ、……確かにそれらしい方法がないわけじゃないけど。でもねぇ」


 ()(よど)んだ彼女(かのじょ)は、(すで)にヘトヘトの三人を一瞥(いちべつ)し、「大丈夫(だいじょうぶ)かしら?」と聞く。

 彼女(かのじょ)の言動から察するに、どうやらこの三人がネックなのは明らかだ。


「なぁ三バカ。これからニコルが何かするんだってよ。走る準備しとけな」


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