表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

226/313

第226話 どんなものよりも


 聞こえる。

 愛するヒトの声が。


 その声は、いつもどこかで(おれ)の名前を()んでくれていた。

 どれだけ(すさ)んでも、(くる)っても、いつだって(おれ)をこの世界に()(もど)してくれた。


 (くも)った景色(けしき)に、二つのシルエット。

 ()()くす(おれ)の前に立った彼女(かのじょ)は、何も言うことなく、(おれ)の左(ほお)を思い切り張った。


 よろめき、思わず片膝(かたひざ)をついてしまう。

 しかし今度は、(となり)にいる小さな手のお出ましだ。


 (おれ)の顔を何度も小突(こづ)き、「バカ」「バカ」と泣きじゃくっている。

 モコモコの小さな手を(つか)まえ、「ホントにバカだよな、(おれ)は」と()きしめる。

 グズグズ鼻をすするポンチョの背中(せなか)にリュックを(もど)し、ポンと軽く(たた)いてやる。


「……マーロンさん」


 (うつむ)彼女(かのじょ)に話しかける。

「うるさいっ!」とそっぽをむいた彼女(かのじょ)は、どうやら許してくれそうもない。


 そりゃそうか。

 あれだけ勝手なことをしたんだ。


 引き留める彼女(かのじょ)を残し、勝手に出ていった。

 どうして許してもらえると思ってるんだ、(おれ)は。

 それでも……。


「本当にごめん」


 こちらを向いてくれない彼女(かのじょ)のことを、ぐっと()き寄せる。

 どれだけ勝手だとしても、(おれ)にはもう、これしか自分を証明できる方法がないから。



「トアは……、本当に馬鹿(ばか)だよ」


「うん、わかってる」


「わかってない! トアはいつも自分勝手で、全部自分ひとりで解決しようとして。……どうしてそうなの!?」


「なんでだろう。きっと……、もう(だれ)も失いたくないから、……かな」


 しかし彼女(かのじょ)(おれ)(うで)()り切って、「だからそれが間違(まちが)ってるって言ってるの!」と声を(あら)らげた。


「マーロンさん……」


「もっと(たよ)ってよ! (わたし)や、村のみんなだってそう。どうしてトアは、いつもひとりで。そうやって、全部をひとりで背負(せお)()もうとするのよ。どうして……」


 (なみだ)(ほお)を伝う。

「ごめん」と(つぶや)くので精一杯(せいいっぱい)だった。


「トアはわかってない。もしトアが。もしトアが死んじゃったら、(わたし)たち、これからどうすればいいの? トアは、もうトアだけで生きてるんじゃないんだよ!」


 (かた)(ふる)わせる彼女(かのじょ)の足にポンチョがギュッと()きついた。頭を()でながら()()げた彼女(かのじょ)は、ポンチョを(おれ)(いだ)かせながら、毅然(きぜん)とした目で言い聞かせるように言った。


「約束して。これからはもう絶対こんなことしないって。ポンチョや村のみんなを不安にさせるようなことを、もう絶対しないって!」


 ぐいとさらに一歩()()る。

 (おれ)は半歩身を引き、「わかりました」と(うなず)く。

 さらに顔を寄せた彼女(かのじょ)は、「本当に!?」と一言。

「ホントーに!」とポンチョまで一緒(いっしょ)になって。


 (おれ)はモコモコの(ほお)におでこをぐりぐり()()けながら、「ああ、約束する」と返事をする。


「トーア、マーロンと、ポンチョと、約束!」


 ポンチョが(おれ)とマーロンさんの顔を引っ張り、それぞれに顔を()()せた。

「破ったらただじゃおかないんだから!」とウチのモコモコさんと一緒(いっしょ)になって(ほほ)(ふく)らませた彼女(かのじょ)は、最後に(おれ)(ひたい)にデコピンを一撃(いちげき)


 これは今までのどんな一発よりも効いたなぁ。

 ……何よりも効いた。



「本当にごめん。もうこんな無茶は絶対にしないよ、約束する」


 二人(ふたり)の頭を()でながら約束する。

 ようやく少しだけ機嫌(きげん)(もど)してくれた二人(ふたり)(そろ)って微笑(ほほえ)んでいる。



 ……だけどね、マーロンさん。

 多分(おれ)は、これからも、何度だって無茶をすると思う。

 二人(ふたり)や村のみんなが笑って()らしていけるのなら、何度も、何度だって無茶をする。


 みんなを守るためなら、どんなことでもしてみせる。

たとえこの身が()()てたとしても――



 そうこうしていると、遠くから(だれ)かが(おれ)たちのことを()んだ。

 手を()っていたのはローリエさんで、こちらに気付いて()()るなり、思いっ切り(おれ)()きついてきた。その拍子(ひょうし)転倒(てんとう)してしまった(おれ)は、二人(ふたり)して砂地(すなじ)の地面を転がった。


「ちょっ、ローリエさん!?」


「さっすが村長さん、よーく頑張(がんば)った! おかげでギルドのみんなが無事に帰ってこられたよ。ん~んッ(チュッ)♪ (わたし)があと10(わか)かったら、き~っと今頃(いまごろ)村長さんと結婚(けっこん)してるわよ、この色男!」


 (おれ)(ほお)にチュッチュとキスをした彼女に対し、「ローリエさん、何してるんですか!?」とマーロンさんが()って入った。オホホホホと上機嫌(じょうきげん)なローリエさんから少し(おく)れてやってきたテーブルは、「おいおい」と(あき)れながら(おれ)の頭に手を置き、「よくやってくれた」と端的(たんてき)に言った。


「ま、どうにかこうにかね。このとおりボロボロですけど」


「なんにしても、まさか無事に全員(もど)ってこられるとは思いもしなかった。本当に感謝している」


 テーブルが頭を下げながら礼を言った。

 そして(おれ)の手を取って立ち上がらせながら、「どうか今後ともよろしく(たの)む」と()みを()かべた。


「そ、そればっかりはお手柔(てやわ)らかに」


 ハッハッハと久しぶりの笑顔(えがお)(みな)から(あふ)れた。

 思い思い喜びあっていた(きば)の面々も集まってきて、それぞれがひとしきり手を取り合った(ころ)、思い出したかのようにテーブルが「アッ!」と(つぶや)いた。


「いいや、ちょっと待て! 再会の喜びを分かち合ってる場合じゃなかった。おいアシュリーと村長、例の化物(ばけもの)はどうなった!?」


 ()(みだ)した様子で(おれ)襟首(えりくび)をたくし上げるテーブル。そういえばまだ伝えてなかったと(かれ)の手を解いた(おれ)は、「大丈夫(だいじょうぶ)だから落ち着いて」と(かれ)(かた)をポンポンと(たた)いた。


「だ、大丈夫(だいじょうぶ)って、災害級の化物(ばけもの)なんだろ!? いくら全員無事に帰還(きかん)できたからって、もしそんなのが外に出てきたとしたら!」


「その点は問題ない。土竜(どりゅう)については地下でハク……。いいや、(われ)らが共に討伐(とうばつ)した。(やつ)が地上へ上がってくることはない。案ずるな」


 (おれ)を横目に見ながらアシュリーが付け加えた。(おどろ)き半分、安心半分でストンと(こし)を落としたテーブルは、(かた)の荷が下りたかのように脱力(だつりょく)し、大きく息を()いた。


 (きば)の面々もそれぞれが(うなず)いてみせる。

 (おれ)は何も付け加えることなく、ウンウンと肯定(こうてい)した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ