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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第225話 まだ生きてる


 地響(じひび)きのように横隔膜(おうかくまく)振動(しんどう)させる衝撃(しょうげき)(げき)しすぎる。

 同時に聞こえてくる複数(ふくすう)の息づかい。

 どうやら(おれ)は、(だれ)かに(かつ)がれながら移動(いどう)しているらしい。


「こ、ここは……?」


「多分第三階層(かいそう)あたりだと思うけどハッキリはわかんねぇ。ってか、正直そんなこと気にしてる余裕(よゆう)ねぇんだって!」


 この甲高(かんだか)い声はペッツか。

 真後ろから聞こえるってことは、(おれ)はアシュリーに(かつ)がれてるらしい。

 なんとも無様だな……。


 さらに後方からは別の足音も聞こえていた。

 どうやら(きば)のメンバーも生き残っていたのだろう。そいつは何よりだ。


「チビ、スケ、……おい」


「起きてそうそうチビスケ()ばわりとは、生意気な野郎(やろう)だなおい!?」


「いいから……、(だま)って(おれ)のリュックから、……小瓶(こびん)を出してくれ。そいつを(おれ)にぶっかけろ」


小瓶(こびん)だぁ!? んなもんどうするつもりだ!」


「いいから、……早くしろ」


「んだよそれ! ……ったくしゃあねぇな、待ってろクソがっ!」


 ペッツがリュックに手を入れ、ゴソゴソと中をまさぐった。

 そしてようやく見つけた小瓶(こびん)を取り出し、「こいつか!?」と聞く。


「ああ、……早くしろ」


(おれ)に命令してんじゃねぇ!」


 小瓶(こびん)突起(とっき)()り、(おれ)の頭に(ざつ)にぶっかける。

「おい、なんか冷たいぞ!」とアシュリーがぼやいているが、そこは我慢(がまん)してくれ。


 自分特製(とくせい)のポーションを全身に浴びたことで、どうにか意識(いしき)と肉体の細胞(さいぼう)(もど)ってくる。(おれ)伝いにポーションを浴びたアシュリーも多少の回復(かいふく)があったらしく、「おっ、おおぉ!?」と(おどろ)きの声を上げていたが、ここにきてようやく状況(じょうきょう)が読めてきた。どうやら今はそんなことに(おどろ)いている場合じゃないらしい。


「1/10ぽっちだが、体力が(もど)った。どうにかいけるか」


 リミッターを解除(かいじょ)して戦ったせいで、筋繊維(きんせんい)が千切れているのか身体は自由に動かない。しかしどうにか走るくらいはできそうだ。(かつ)いでいたアシュリーの(かた)を足場にして一回(こか)して着地した(おれ)は、「テメェ、大丈夫(だいじょうぶ)なのかよ!?」と目を丸くしているペッツの頭を()でてやる。


「悪いな、助かった。今回ばかりは()めてやるよ。ありがとうな」


 頭を()でられたからなのか、カァァァと顔を赤らめたペッツは「な、なにいってんだ、このバカ(ばか)野郎(やろう)!?」と目を回している。謙遜(けんそん)しようがバカにしようが(かま)わないが、助けられたことに変わりはない。


「アシュリー、アンタもだ。助けてもらって()まなかった。運ばせちまって悪かったな」


 背後(はいご)(おれ)一瞥(いちべつ)したアシュリーは、無言で(うなず)きつつ「そいつは言わない約束だろうが」と(ひと)(ごと)のように言った。


「助けられたことに変わりはないさ。しかし、こんなとこで死んじまったら元も子もないよな? ……ってことで、みんな全速力で走れー!!!」



 こうして(おれ)たちは、(ふたた)びの水が()(くる)大迷宮(だいめいきゅう)を、右往左往(うおうさおう)しながら地上目指して走り続けた。

 奇跡的(きせきてき)(だれ)ひとり欠けることなく生き残った双龍(そうりゅう)(きば)の力を借りながら、(おれ)たちは残る力を()(しぼ)り、強引(ごういん)に、かつ確実(かくじつ)に進み続けた。


 どうやら地上では(ふたた)雨脚(あまあし)が強くなっているに(ちが)いない。(なが)()んでくる水量も時間ごとに()し、もはやダンジョンが崩落(ほうらく)するのも時間の問題だろう。しかし状況(じょうきょう)はマイナスの面ばかりでもなく、水流によってより直線的に(つな)がった行路は、確実(かくじつ)に地上へと(つな)がっていることを意味していた。そんな中、(おれ)たちは各自のスキルを総動員(そうどういん)させ、地面を固めては水を止め、空中に道を作ってはそこを走り、環境(かんきょう)自在(じざい)(あやつ)って出口を目指した。


 今となっては(おれ)の知っているダンジョンの面影(おもかげ)は全く無くなってしまった。(すで)に自分たちがどこにいるかもわからず、ただ上へ上へと続いている道を全員で切り開くのみだった。それがいつ終わるともわからないが、(あきら)めてしまいそうになる(きば)の面々の(しり)(たた)いたペッツは、「大丈夫(だいじょうぶ)、もうすぐ地上だ」と()りることなく鼓舞(こぶ)し続けた。


 それから時は()ぎ、(おれ)が目を覚ましてから丸三日が経過(けいか)した(ころ)だろうか。

 (きば)のメンバーのひとりが、瓦礫(がれき)隙間(すきま)から光が差していることに気付いた。すぐに()()ったアシュリーが、瓦礫(がれき)除去(じょきょ)しながら隙間(すきま)(うで)を入れて、外の空間を(のぞ)()んだ。すると(あな)の向こうから、ダンジョン内に充満(じゅうまん)している(よど)んだ空気とは(ちが)う、()んだ外界の空気が流れ()んできた。


「そ……、外だ。…………やった、……(おれ)たちはやったぞ!」


 (あな)に身体を()()んで()()すなり、アシュリーが勝鬨(かちどき)をあげて高々と右腕(みぎうで)(かか)げた。続いた(きば)のメンバーがこぞってリーダーの(かれ)(かか)え上げ、順々に地上へと運び上げていく。(おれ)は最後方でひとり大きく息を()きながら、安堵(あんど)なのか、それとも別の不安なのか、どちらとも知れない感情(かんじょう)(おお)われていた。


「な、なぁ……アンタ」


 喜びの声を上げているメンバーから少し(はな)れて、ペッツが声を()けてきた。

 (おれ)はもう一度ペッツの頭を()でながら、「どうしたよ、チビスケ」と返答する。


「ち、チビスケって言うな! (おれ)にはちゃんとペッツっていう名前があんだ。それに、(とし)だってもう22だしな」


「そりゃ(もう)(わけ)なかった。で、なんの用だよ?」


「そ、そりゃあ、その……、アレだ……」


 (みょう)に歯切れが悪い。

 視線(しせん)(ただよ)わせながら、ああだこうだと(ひと)(ごと)を言っている。


「なにもないならさっさと行けよ。上で兄貴(あにき)が待ちくたびれてるぞ」


 (あな)の上部では、アシュリーが中の(おれ)たちが出てくるのを待って手を()ばしていた。しかしペッツは「ちょっと待ってろって!」と兄を(せい)し、()ずかしそうに(おれ)から顔を反らしながら言った。


「そ、そのよ……。あ、ありがとな。お、お前がきてくれなかったら、多分、みんな死んでた」


 (おれ)は「ハァ」とため息をつきながら、彼女(かのじょ)(しり)をパシンと(たた)く。「なにすんだテメェ!?」と(いか)っているペッツを(かか)えてアシュリーにトスした(おれ)は、「礼なら(おれ)の仲間に言ってくれ」と付け足した。


「な、仲間……?」


「そう、(おれ)の、(おれ)たちの村のみんなにだな」


 (あな)の外から不思議そうに(のぞ)()んだペッツが、アシュリーに代わって手を()ばした。(おれ)彼女(かのじょ)の手を(にぎ)り、最後にダンジョンから脱出(だっしゅつ)した。


 (おれ)たちが入ってきた出入り口とは別の場所なのだろう。ボトム上に(くぼ)んだ(あな)底というのは同じだったが、知っている風景とは(いく)らか(ちが)っていた。(あな)から先に出ていた(きば)のメンバーが、すり(ばち)(じょう)(かべ)()って登り、高い位置から砂漠(さばく)地帯を見回した。すると何かを見つけたのか、その場で()()ねて、「おーい」と大きく手を()った。


「アハッ」と()みをこぼしたペッツ。

 どうやら外で待機していたギルドの者たちを発見したようだ。(すで)に体力も限界(げんかい)だったはずの面々が、喜び勇んで竪穴(たてあな)()()がっていく。(こし)に手を置いてその(うし)姿(すがた)を見上げた(おれ)は、じわじわと聞こえてくる喜びの声に安堵(あんど)し、初めて自分自身が生きていることを実感した。


「おい、お前。なにボーっとつったってんだ。(おれ)たちも早く行こうぜ」


 今度はペッツが(おれ)(しり)(たた)いた。「生意気なんだよチビスケめ」と先に()けていく彼女(かのじょ)を追いかけようとするが、気が()けたのか足に力が入らずつんのめる。深く(しず)んでいく(すな)の地面は重く、どうやら今の(おれ)にとっては(ひど)苦痛(くつう)らしい。


「おい、大丈夫(だいじょうぶ)かよ。ほれ、手ぇかせ」


 ペッツとアシュリーの手を借りて大穴(おおあな)(えん)まで登った(おれ)は、遠くから()けてくるギルドの(やつ)らに手を()った。「もう大丈夫(だいじょうぶ)だな」と(うなず)いたアシュリーは、全身を(けが)していた(すな)(はら)いながら、(たん)(から)んでいる(のど)をただし、全員の無事を知らせるように身体を()らし、()けていった。



「おいおい、(ゆめ)じゃねぇだろうな、本当に全員生きてんだよな!?」


 いの一番に()けつけたテーブルとローリエさんが、(きば)の面々と()()い、喜びを爆発(ばくはつ)させている。どうやらマイルネに待機していた(きば)(ほか)のメンバーたちも待機していたらしく、それぞれが思い思いに仲間の帰還(きかん)歓迎(かんげい)している様子だった。


 (おれ)(かれ)らから少し(はな)れ、(かた)の荷が下りたように(うつむ)き、空を見上げた。(いま)()り続いている雨が直接(ちょくせつ)顔を()らしているが、(どろ)(よご)れた地下の水に(くら)べれば(いく)らかマシだなと、苦笑いがこぼれてしまう。


「願い…………、(かな)っちまったなぁ」


 一度は死を覚悟(かくご)した。

 自らの因果(いんが)(さと)り、それも仕方ないと受け入れた。

 それでも(おれ)はまだ、こうして息をしている。



「生きてる、……まだ生きてるなぁ」



 なんの(よく)もない。

 ただこの場に立てているだけで充分(じゅうぶん)だった。


 それなのに――



『 トア! 』


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