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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第224話 解放の代償


 ゆっくりと歩み寄り、土竜(どりゅう)喉元(のどもと)剣先(けんさき)()()す。

 そして()(はら)うようにそのまま真横へ()るい、刀身に付いた血を(はら)う。


 (ひざ)から(くず)れた土竜(どりゅう)がその場に(たお)()み、数秒の痙攣(けいれん)ののち、動かなくなった。(おれ)(はじ)けそうになる心臓(しんぞう)をどうにか()さえつけるように(にぎ)ったまま、深呼吸(しんこきゅう)()(かえ)す。それなのに――


「マズい、力を使いすぎた」


 急な魔力(まりょく)の解放に加えて、暴走した感情に精神が追いつかない。

 酸素を失った(のう)がオーバーヒートを起こし、呼吸(こきゅう)することすらままならない。


 目の前の景色(けしき)が白み始め、身体が動かなくなっていく。

 歯を食いしばって前を向こうとするも、水没(すいぼつ)しつつある(すな)の小島に(ひざ)を落とし、何もない中空へと手を()ばしていた。


「こ、こんなところで死んでどうすんだ……、お、(おれ)は、(おれ)は……」


 聞こえていた水の落ちる音すら、もはや聞こえない。

 口端(こうたん)から(あわ)()きながら、胸元(むなもと)()さえて(たお)()む。

 (すな)の上を(すべ)っていく水の流れに(ほお)(しず)め、呼吸(こきゅう)できず、目も見えない。


 ダメだ……


 マズい、 し、…… ぬ ――――




 ――――――――――――

 ――――――――――

 ――――――――

 ――――――

 ――――

 ――

 ―









 死後の世界とは、どのようなものなのだろう ――

 二度目の死を目前にしてからというもの、ひとり考える場面が増えた。



 また前と同じように別の世界へ転生するのか。

 それとも文字通り()()せ、無に()すのか。

 どちらにしろ、また別の(おれ)となって生きていくんじゃないのかな。

 なんて、漠然(ばくぜん)と考えるようにしていた。


 しかしこの世界の(おれ)は、転生前と(ちが)って、あまりにも多くの人間を殺しすぎた。

 運命に(しば)られ、(あらが)うことすらできず、流されるまま、ただ殺し続けた。


 でも本当のところは(ちが)っている。

 自分がやられないため。

 真実を言えば、それだけのために他人の命を(うば)っていた。

 自分の不幸さにかこつけて、他人を()()んで殺し続けてきただけだ。


 虫のいい話さ。

 とうの昔に気付いてる。


 もし次死ねば、この先の(おれ)なんてものは、もう存在(そんざい)しないだろう。

 地獄(じごく)というものがあるのなら、間違(まちが)いなく地獄(じごく)()ちだ。そうに決まってる。


 何が悲しくて、もう一度転生などできるものか。

 ちゃんちゃらおかしくて泣けてくる。



 …………

 …………


 ―― それでも


 だとしても。もし、あとひとつだけ願いを言えるのだとしたら……



「ほんの少しだけ、あとほんの少しでいいから、ポンチョやマーロンさん、村のみんなと、一緒(いっしょ)に過ごしたかったなぁ」



 みんなみんな、(おれ)の願望を(かな)えるように集まってくれた、モコモコした可愛(かわい)い人たち。本当に気の良い(やつ)らさ。


 (くさ)りきってた(おれ)のことを(やさ)しく(むか)え入れてくれた人たちと、もう少しだけ一緒(いっしょ)にいたかった。


 たとえ最期(さいご)(さげす)まれ、排除(はいじょ)される運命にあったとしても。

 ほんの一時の、偽物(にせもの)の安らぎで構わないから、(あた)えてほしかった




 ―

 ――

 ――――

 ――――――

 ――――――――

 ――――――――――

 ――――――――――――







「 ―――― ォイ! ――い! 」



 声が聞こえる。

 耳障(みみざわ)りなほどに甲高(かんだか)い声だ。


 冗談(じょうだん)にも好みとは言えないが、(みょう)なほど(はら)(おく)(ひび)いてくる声。

 変な気分だ。


 ゆりかごで()らされているような、おかしな気持ちのよさがあるのに、頭が不快でハッキリしない。身体には力が入らず、目を開けることすら(かな)わない。なのに……



「―― ……ニキ! 目ぇ覚ました、おいテメェ、まだ生きてるか!?」



 またあの甲高(かんだか)い声だ。

 (だれ)かが(おれ)(ほお)を何度も(たた)いている。


 やめろ。

 何度もピシピシ(たた)くな。

 (いて)ぇんだよ、やめろ!


「いいから走れペッツ。このまま(しず)んだら(おれ)もお前も一巻(いっかん)の終わりだ。まずは(だま)って走れ!」


 今度は男の声。

 どっしりと落ち着いた声なのに、心情はどこか落ち着かない様子だ。


 それにしても、わからない。

 (おれ)は死んだのか。

 それともまだ夢を見ているのだろうか。


 (わず)かに耳がハッキリしてきた。

 ずっと耳元で、(だれ)かの声がしている。


 ギャアギャア(さわ)がしいが、やはり(あわ)てているのだろう。

 聞けば、声とは別に(はげ)しい雑音も混じっている。

 ……というよりむしろ、雑音の方が声よりもかなり大きい。


 いや。これはもう雑音なんてレベルじゃない。

 鼓膜(こまく)()らすほどの、衝撃的(しょうげきてき)轟音(ごうおん)だ!



「アーーニーーキーー!!」


「泣き言を言ってる(ひま)があるなら走れ! もうポータルは(しず)んじまった。(おれ)たちは自力で、ここを()()すしかないんだ。とにかくいいから走れ!」


 今度はハッキリ聞こえてきた。

 脳内(のうない)にかかっていたモヤが晴れ、思考も定まり始めた。


「そ、……双龍(そうりゅう)、の……?」


兄貴(あにき)、コイツ、気がついた!? ちゃんと生きてる!」


「おうおう、そうか。そんじゃあ(おれ)たちが、ちゃんと生きて帰してやらないとな!」


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