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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第221話 絶望に堕ちる瞳


「こ、このバカ!? 最後に残ってたポータルの魔力(まりょく)、全部使っちまいやがった。(おれ)ひとりなら行って帰るくらいの魔力(まりょく)は残ってたのに、どうしてテメェなんぞが!」


 小脇(こわき)でゴチャゴチャうるさい女子を放り投げ、(おれ)はポンチョから拝借(はいしゃく)したリュックからハイポーションを取り出し、彼女(かのじょ)の頭にぶっかけた。


「なにすんだ!?」と(いか)(くる)っているペッツの(ひたい)にポーションを()()むようガシガシ()さえつけ、「テメェはもう(だま)ってろ」と()()てる。


「こンのクソ野郎(やろう)ッ! (だれ)だか知らねぇが、テメェなんぞきたって無駄(むだ)なんだよ。わざわざ死ににきやがってマヌケ野郎(やろう)!」


 うるさい(けい)女子の口をぎゅむっと(つか)み、「さっさと案内しろ」とひと(にら)み。

 しかし直後、どこそかの(かべ)からドゴンッと水が()()し、思わず身をすくめる。


「ちっ、前きた時よりもさらに足場が悪化してやがる。おいチビスケ、兄貴(あにき)はどこだ。さっさと案内しろ」


 兄貴(あにき)という言葉で(われ)に返ったペッツは、(おれ)の手を()()って走り始めた。

 まったくどんだけ勝手なんだよ、コイツ……。


「アニキ、それに(きば)のみんな、無事でいてくれ!」


「他人の心配よりも自分の心配をしろ。んなことより状況(じょうきょう)整理だ。二度と同じこと言わせるな」


「ダー、なんなんだよテメェ! (きば)のみんなは、この先の大空洞(だいくうどう)でまだ戦ってる、…………はずだ。(おれ)はどうにか()げて上に状況(じょうきょう)を伝えろって、……兄貴(あにき)が」


 シュンと(だま)()んでしまったペッツ。

 どうやら相当旗色は悪いらしい。


 水で泥濘(ぬかる)んだ足元は悪く、さらに秒ごとフロア状況(じょうきょう)()()えられていくダンジョンの様子も異様(いよう)だ。いつ大きな異変(いへん)が生じ、ダンジョンの空間ごと()()まれるともしれない。こうしている間にも、脱出(だっしゅつ)する道すら()ざされてしまう可能性がある。


 もともと最深部フロアは、上層(じょうそう)比較(ひかく)すればそれほど大きくはない。しかし雨水で生み出された無数の(あな)が新たな通り道を作り、さらに(おく)(おく)へと(なが)()んだことで、これまで存在(そんざい)しなかった新たな領域(りょういき)を生み出していた。さらにもともと住み着いていた巨大(きょだい)魔物(まもの)や水中を住処(すみか)とする魔物(まもの)(はば)()かせ、(おく)領域(りょういき)牛耳(ぎゅうじ)っているらしい。目的の広間へ向かうさなかも、巨大(きょだい)なナマズに似た魔物(まもの)や、以前(たお)した小型の水竜(すいりゅう)などが、流されてくる魔物(まもの)冒険者(ぼうけんしゃ)を舌なめずりして待ち構えていた。


「悪いがお前らの相手をしてる時間はない。全部無視(むし)して()()る」


 ペッツを(かか)えた(おれ)は、向かってくる魔物(まもの)を正面から(かわ)し、(やつ)らの頭を足場にして()()える。「え!?」と(おどろ)いているチビスケを無視(むし)して(かべ)(はし)()けた(おれ)は、いよいよ彼女(かのじょ)の言葉にあった大空洞(だいくうどう)を検知し、(あわ)てて足を止める。


「な、なんだ。どうしていきなり止まんだよ!」


「……この先にヤバそうなのがいる。どうやらお出ましのようだな」


 魔力察知(サーチ)空洞(くうどう)の中心部を調べてみれば、初めてその巨体(きょたい)(あら)わになった。砂地(すなじ)の地面を()()らし、水しぶきを上げながら移動するその(きょ)(りゅう)は、(おそ)ろしいほどの魔力(まりょく)()()らしながら、近くで動く小さな魔力(まりょく)執拗(しつよう)()()み、攻撃(こうげき)を続けていた。


「お前ら仲間は何人いた?」


「こ、今回は危険(きけん)(ともな)うからって、精鋭(せいえい)部隊の八人だけだ。それがどうしたってんだよ!」


「八人……? ちっ、数が合わねぇな。何人かやられちまったってことか」


 (つぶや)きにペッツが両目を見開いた。

 ()しのけて走ろうとするが、(おれ)彼女(かのじょ)の頭を()さえ、それを許さない。


「ざけんなッ、なにしやがる!?」


「勝手に動かれちゃ迷惑(めいわく)なんだ。……さて、どうしたものか」


 水が流れ()んだせいでボトム状に広がった大空洞(だいくうどう)の中は、その中心にまるで武舞台(ぶぶたい)()したような足場が広がっており、どうやらそこで戦闘(せんとう)が続いているようだ。(はげ)しく地面を()らすほどの強い衝撃(しょうげき)(かべ)伝いに伝わり、否応(いやおう)なしに緊張感(きんちょうかん)は増していく。小脇(こわき)(かか)えたペッツの顔を()さえた(おれ)は、水に擬態(ぎたい)しながら天井(てんじょう)に張り付き、遠目に目標の姿(すがた)(とら)えた。


 見るからに、デカい。デカすぎる。

 以前(たお)した硬鱗海獣(ガノレヴィア)よりさらに一回り大きなその土竜(どりゅう)は、四本の首を()(みだ)しながら(あふ)れんばかりの魔力(まりょく)()()らしていた。巨木(きょぼく)の幹のような四本の(あし)泥濘(ぬかる)む地面を()()むたび、周囲の水が(はじ)け飛び、()し固められたはずの地面にヒビが入る。移動速度はそこそこだが、代わりに分厚すぎる装甲(そうこう)(すべ)ての攻撃(こうげき)(はば)んでいた。しかも、だ。


「こいつは……、〝絶対領域(りょういき)〟か」


 エリアボス戦にのみ適用される、ある種特有とされる戦闘(せんとう)領域(りょういき)

 本来、ボス部屋(べや)()ばれる空間に()()むことによって発生する、いわゆる逃亡(とうぼう)不可避(ふかひ)な空間を指す領域(りょういき)、それが絶対領域(りょういき)だ。どうやらダンジョンのフロアが(くず)れたことが(わざわ)いし、それが大空洞(だいくうどう)全体に(およ)んでいるらしい。もし中に入れば、(おそ)らくは敵味方、どちらかがやられるまで逃亡(とうぼう)は不可能。生きるか死ぬかの二択(にたく)となる。


「あ、兄貴(あにき)は!?」


 (おそ)らくはアシュリーが下した一瞬(いっしゅん)の判断だったのだろう。

 (きば)のリーダーである(かれ)は、絶対領域(りょういき)()()む直前に、自分たちがやられる可能性を考慮(こうりょ)し、ペッツだけを()がした。しかしその事実は、Sランク冒険者(ぼうけんしゃ)であるアシュリー自身が、瞬間的(しゅんかんてき)にそう判断せざるを得ない相手であることを暗に示していた。そして現に――


「あ、あああ、アシュリー!!」


 左腕(ひだりうで)一本を欠損し、どうにか巨大(きょだい)(たて)を構えたアシュリーに対して、土竜(どりゅう)無慈悲(むじひ)攻撃(こうげき)()()ろされる。間一髪(かんいっぱつ)のところで受け止めた(すき)に、(たて)の真後ろでタイミングを(はか)っていた(きば)のメンバーが、反撃(はんげき)一撃(いちげき)(たた)()んだ。しかし(もろ)くも武器は(くず)れ、反対にカウンターの首()りに()(はら)われてしまい、()()ばされた一人(ひとり)がボロ雑巾(ぞうきん)のように地面を転がった。


大丈夫(だいじょうぶ)か、返事をしろマーック!?」


 アシュリーの()びかけが(むな)しく(ひび)く。

 (かれ)の声に反応し、ギリッと奥歯(おくば)()んだペッツは、(おれ)の手を()()り、目に(なみだ)()かべながら領域(りょういき)へと()()んだ。


「よくもマックをぉぉ、殺してやるッ!」


 魔力(まりょく)を解放させ天井(てんじょう)()って一気に速度を上げたペッツは、足元に装着(そうちゃく)していた二本の短剣(たんけん)を逆手に(にぎ)るなり、土竜(どりゅう)の真上に飛び出して死角から(おそ)いかかる。


()めてんじゃねぇぞクソがッ。(おれ)はSランクパーティー、双龍(そうりゅう)(きば)の副リーダー。『双牙(そうが)のペッツ・ドライモット』だ。覚えとけ、このド(くさ)土竜(どりゅう)ふぜいガァァァ!!」


 小さな肉体からは想像もできないほどの魔力(まりょく)を放出させながら、ペッツは変換(へんかん)させた(かみなり)魔力(まりょく)を両手の武器に乗せ、眼下の(きょ)(りゅう)の首元を見据(みす)えた。そして(はげ)しく身体を回転させながら全体重を乗せ、一直線に突進(とっしん)していく。


瞬光追撃(ブリッツストリンガー)アァァッッ!』


 短剣(たんけん)共振(きょうしん)し、(はじ)けるように(いなな)雷鳴(らいめい)。速度を増したペッツの身体は、自分自身を光の(すじ)に変えるほどのスピードで一瞬(いっしゅん)のうちに距離(きょり)()め、極限まで高めた魔力(まりょく)を武器に()とし()む。()(うご)いていた四本(よつもと)の首の隙間(すきま)()った双剣(そうけん)は、その首元でいよいよ組み合わさり、化物(ばけもの)の急所を一瞬(いっしゅん)にして(つらぬ)かんと(かがや)きを増していく。


(くだ)けぇぇぇェェェッ!」


 稲光(いなびかり)(またた)き、(わず)かに(おく)れて雷鳴(らいめい)(とどろ)いた。

 しかしコンマ数秒後、これまでとは別の(にぶ)い音が、空洞(くうどう)内に(ひび)(わた)った。


「えっ……?」


 全力の一撃(いちげき)を放った彼女(かのじょ)短剣(たんけん)が、()ぜるように(くだ)けて散っていく。

 直後、背後(はいご)から()()ろされた土竜(どりゅう)尻尾(しっぽ)直撃(ちょくげき)し、彼女(かのじょ)(はげ)しく地面に(たた)きつけられ、砂地(すなじ)の地面を転がっていた。


「ガッ!? ア、ガフッ!」


「ぺ、ペッツ!? なぜだ、どうしてお前がここにいる!」


 ()がしたはずのペッツを助けようと、アシュリーが手を()ばした。しかし満身創痍(まんしんそうい)の身体は自由がきかず、(たの)みの(つな)である魔力(まりょく)も切れかけている。なのに無慈悲(むじひ)()()ろされる土竜(どりゅう)の首は、アシュリーの目の前に倒れた血を分けた妹を()(つぶ)さんと速度を上げていた。


 (とど)かない。無理だ。

 戦士の顔から生気が()けていく。


 万全(ばんぜん)の準備を整えたはずだった。

 不測(ふそく)事態(じたい)にも(そな)えていた。


 (おれ)たちは強い。

 (おれ)たちなら、どんな相手であろうと負けることはない。


 そんな自負を()()してしまうほどの圧倒的(あっとうてき)暴力に(おそ)われ、守るべき(すべ)てのものが目の前で()()されていく。()ばした手は(とど)かず、(こころざし)を共にした者たちが死んでいく。そんな絶望に(しず)んだ人間の目だ。



 ―― しかし、(おれ)はそれをよく知っている


 同じように(やみ)に飲まれていくその目を、これまで何度も見てきた。

 いいや……、ちょっと(ちが)うか




「 楽しいかよ、ウスノロ 」


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