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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第220話 俺ひとりで充分


 周囲の空気が静止する。

 ()りしきる雨の中、全員の視線(しせん)彼女(かのじょ)へと(かたむ)いていく。

 しかし(われ)に返ったテーブルがすぐに否定(ひてい)の言葉を口にする。

馬鹿(ばか)なことを言うな」と。しかし――


「助けを求めている人がいる。ならば(わたし)は行く。『獣傑(じゅうけつ)狩人(かりうど)』の名にかけ、その名に()じぬよう()(すす)むのみだ」


 (おれ)(うつむ)きながら、(だれ)にも聞こえないように口の中で舌打ちする。


 考えが(あま)かった。

 あの時の(おれ)は、(かれ)らの実力や装備(そうび)有無(うむ)、さらには絶対的なアイテム(※ポータル:移動用魔道(まどう)具)という存在(そんざい)を過信してダンジョン探索(たんさく)容認(ようにん)した。(おれ)があの場面で明確に引き止めていれば、ここで(かれ)らをバッサリ()()ててしまう手段(しゅだん)もあった。しかしこれは想定外だ。


 彼女(かのじょ)に話を聞かせてしまったこと。

 彼女(かのじょ)がそんな事実を知ってしまえば、手を()()べてしまうに決まっている。


 自分の力が足りているかどうかなど関係ない。『目の前にいる(だれ)かが助けを求めている』、彼女(かのじょ)にとって、それ以上の理由など必要ないのだから……


「止めても(わたし)は行く。テーブルさん、(わたし)冒険者(ぼうけんしゃ)ランクはAです。ダンジョンに入るための条件は満たしているはずです」


馬鹿(ばか)なこと言うんじゃねぇ! 今はランクがどうとか、そんな次元の話じゃねぇんだよ。行かせねぇ、行かせるはずがねぇだろバカ野郎(やろう)!」


 道に仁王立(におうだ)ちして()(ふさ)がるも、マーロンさんはそれを()しのけて進もうとする。「獣傑(じゅうけつ)の……?」と(つぶや)いたペッツは、(なみだ)(ぬぐ)いながら両の(こぶし)(にぎ)った。


「どきなさい! でないと、強引(ごういん)にでも貴方(あなた)を退ける」


「許すわけにはいかねぇな。アンタはウチにとっても大きな戦力だ。これからやってくるであろう厄災(やくさい)を前に、アンタまで失うわけにはいかねぇ。頭を冷やしやがれ!」


 (いか)りによって放出される魔力(まりょく)がぶつかり合い、周囲の雨を(はじ)いていた。両者の視線(しせん)が交差し(はげ)しく接触(せっしょく)する。しかしそんな二人(ふたり)を見つめてギリギリと奥歯(おくば)()()めたペッツは、断腸(だんちょう)の思いでらしくもなく消え入りそうな()みを()かべ、「もう大丈夫(だいじょうぶ)だ」と言った。


獣傑(じゅうけつ)の、もういい、もういいんだ。初めからわかってた。アンタら()()むつもりなんて(おれ)にはねぇからさ。だからさ、(おれ)たちのことは、もう(わす)れてくれよ……」


 笑顔(えがお)(はし)(なみだ)が交差し、雨粒(あまつぶ)に混じって地面に落ちた。

 ペッツは力が入らない(ひざ)に手を置くと、歯を(きし)ませながら立ち上がり、「行ってくる」と手を()った。


「おい、許可できるわけないだろ!」


 テーブルが手を()ばす。

 しかしそれよりも(わず)かに早く、(おれ)の指先が彼女(かのじょ)の手首を(つか)んでいた。


「な、んだよ……、アンタ……?」


「ギルマスさんよ」


 ペッツの問いを無視(むし)し、(おれ)はテーブルに質問する。


「アンタ、口は(かた)い方だったよな?」


 (ひたい)にシワを()かべたテーブルが、「どういうつもりだ?」と聞き返す。

 (おれ)は無言で(かれ)の目を見つめ、「(おれ)だけでいい」と伝える。


「お、お前ひとりって、それは……」


「足手まといはいらない。邪魔(じゃま)なだけだ」


 テーブルが一歩身を引き、「うっ」とたじろいだ。それをイエスと受け取った(おれ)は、ほんの(わず)か身体を(かたむ)け、(おれ)(にら)みつけているマーロンさんに頭上のポンチョを(たく)した。


「……どういうつもり?」


「ええとさ……、コイツ(ポンチョ)のこと、預かっててくれないかな」


馬鹿(ばか)なこと言わせないで。ハクだけには行かせない。(わたし)も行く」


「悪いけどそれはダメだ。キミはここで、コイツ(ポンチョ)と待っていてほしい」


「ふざけないで。どうしてハクは、……どうしていつもそうなの!?」


 その問いに答えたところで、(おそ)らく貴女(アナタ)納得(なっとく)しないだろう。

 そして今回の事態は、言ってみれば(おれ)怠慢(たいまん)が招いたようなものだ。

 貴女(アナタ)危険(きけん)(さら)すくらいなら、死ぬのは(おれ)ひとりで充分(じゅうぶん)すぎる。


「……超硬化(ハードニング)


「ちょっ!? う、動けな……!」


 相手の動きを(ふう)じる魔法(まほう)でマーロンさんを硬直(こうちょく)させた(おれ)は、彼女(かのじょ)胸元(むなもと)にポンチョを()かせ、「ごめんなさい」と(つぶや)く。そしてテーブルの(かた)(たた)き、「あとのことは任せる」と(うなず)く。


「任せるって、お前……」


「ま、ま……っ、て、と、……あ」


 (さび)しそうに指を(くわ)えてこちらを見つめているポンチョに手を()り、口を開けたまま唖然(あぜん)としていたペットの(しり)をバンと(たた)く。そして「テメェは一緒(いっしょ)にこい」と小脇(こわき)(かか)えた。


「なっ! 何すんだテメェ!?」


(だま)ってろ、テメェは(くそ)ほど迷惑(めいわく)かけてんだ。……(だま)って案内しすりゃあいい」


 無事に帰ることができたら、説教はいくらでも聞くよ。

 だから今回だけは、ごめん。

 ()()くす(かれ)らを残し、(おれ)はペッツを(かか)えてダンジョンの入口へと()()んだ。


「おいテメェ、バカなのか!? どこの(だれ)だがよく知らねぇが、テメェなんかじゃ――」


 (やかま)しいペッツの口を()さえ、入ってすぐの場所に設置されていたポータル(※転送用魔道(まどう)具)の前に立った(おれ)は、くるりと()(かえ)り、視線(しせん)の先にいる(かれ)らの姿(すがた)を想像しながら、「なるようにならぁ」と(つぶや)く。


 術者の魔力(まりょく)に反応し、魔道(まどう)具が光を放った。自分を中心とした半径五メートルほどに魔法陣(まほうじん)()かび()がる。「このバカ、放せ!」と(さわ)ぐペッツを(かつ)いだまま、(おれ)たちは化物(ばけもの)の待つ地下へと飛び立つのだった――


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