第217話 俺たちの目指す場所
それにしても、話が少々横道にそれてしまった。
俺たちがこれからすべきこと。それはまず「高ランクダンジョンに入ろうとしていたアナグマ族の冒険者」を見つけ出すことだ。そのためにも、人探しを行っていたとされる人物を早いところ見つけなければならない。ここでこうしている間にも、孤高の存在である彼らは待ってくれないのだから!
「あ、ハクたま、はーい! 僕ら、その人に会ったことあるよー!」
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ええと、モックさん。
アアタ、今なんとおっしゃいました(※徹子風)?
ざわつき始める村人たち。
嬉しそうに手を挙げているモックさん。
しかし考えてみればそうだ。
彼らは実際に、ガーンビア地下迷宮に入った冒険者だったのだ。目当ての人物が迷宮近くでパーティーを探していたのなら、彼らにも声をかけたに違いない。俺はどうしてそんな単純なことにも気付かなかったんだ!?
「ええと、それは何処で……?」
「ええとねぇ、確か地下迷宮近くのラピットって村だったかなぁ。あ、でもね、今から行っても会えないかもです!」
ビシッと敬礼。
俺はそんなモックさんを抱え上げ、「どうしてですか!?」と問いただす。
「しょ、しょれはね、確かあのしとね! 僕らに声かけたあと、場所を変えてね、もっと下層を目指すパーティーを探すって言ってたから!」
「うっ。そ、そうなると、もう近くの町にはいないかもしれないってことか」
「あっ、でもね、そうでもないかも!」
どうしてそう思わせぶりなことを言うのですか、この子は!?
再び持ち上げて問いただす。
「しょ、しょれが、確かあのしと、マイルネの町で探してみようかな~とかなんとか。あ、でもギルドは嫌いだから、町を出てく冒険者に直接声をかけてるんじゃないかな」
おいおいおい。
それってぇことは……!?
「完全に行き違いじゃないか。せっかく村まで帰ってきたのに」
頭を抱えるしかない。
どうしてこうもチグハグなことばかり続くんだ!
しかし同じタイミングで、誰かが「あっ」とささやいた。
不意に振り返った俺は、何か思いついたように左斜め上を見つめているマーロンさんに質問した。
「どうかしましたか……?」
「ちょっと思ったんだけどさ。そのアナグマ族の人って、高ランクのパーティーを探してたんだよね?」
「サワーさんの話では。それが何か?」
「でもギルドや冒険者と一緒に行動してないから、ダンジョンの情報には疎い、……かもしれない」
「ま、まぁそうかもしれませんね。それがどうしたんです?」
う~んと腕組みするマーロンさん。
そしてしばし考えてから、一つの可能性を示唆した。
「情報がないってことは、もしかしてダンジョンが水没してるってことも知らなかったり?」
「可能性としては、そうかもしれないですね」
「だとしたらあり得ると思わない? あの可能性」
村人たちが一斉に耳を澄ませる。
俺も思わず彼女に一歩詰め寄った。
「ガーンビア地下迷宮の下層を目指していて、かつマイルネの町を出発した最も高ランクのパーティー。私の考えていることが正しいとしたら、それはきっと一組しかいないと思う」
彼女の指摘に、思わず「あっ」と声を漏らしてしまう。
確かに彼女の言うとおり、もしその人物が高ランク冒険者を探しているのだとしたら、うってつけのパーティーがいるじゃないか!
「隣国唯一のSランクパーティーで、迷宮の下層を目指している『双龍の牙』。もし私がその冒険者なら、きっと彼らについていくと思うんだ」
思わず納得してしまう。
確かにSランクパーティーが下層を目指していると知れば、嘘をついてでも彼らについていくに違いない。いや、間違いなくそうに決まってる!!
「だが困りましたな。その冒険者がどの程度の強者か存じませんが、もしダンジョン内で命を落とすなどあれば、永遠に会うことはできませんぞ。しかも今は有事中の有事。地下の崩落などに巻き込まれでもしたら、部外者の獣人など最初に切り捨てられますぞ」
と、猫族の族長が。
いやいや、そんなこと言われたら不安になっちゃうじゃないか。
「でもハクたま! ギルドマスターさんが、今は危ないから許可された冒険者以外はダンジョンに入れないって言ってましたよね!?」
モックさんがハワハワしながら慌てて質問した。
そう、確かにそうなんだ。現在迷宮の入口は、冒険者ギルドのテーブルの命により、その出入りが厳重に管理されているはずだ。入口では関係者が目を光らせているだろうし、たとえ俺たちが入りたいと言っても許可は出ないだろう。どうすりゃ良いんだ!?
「どっちにしろ、行ってみるしかないんじゃな~い。ここでダ~ラダラしてても、お目当ての人物は見つからないよ~っと?」
クラッカーの影から現れたリッケさんが、悪戯に「しっしっし」と笑いながら俺たちを煽った。彼女の言うとおり、ここでボーっとしていても始まらないのは確かだ。だったら……
「マーロンさん」
目を合わせ、頷き合う。
「だね、急ごう!」
目指すはガーンビア地下迷宮の下層。
こうなったら、考えるより先に動くしかないだろ!
だがしかし、この時の俺たちは知らなかった。
目指すその場所で、まさかあんなことが起きていようとは――




