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元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第5章 みんな大好きキノコ作り!

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第215話 死ぬ気で走れ!


「この先に川が見えよう。あの川はここから東の果て、モリスの森にあるセデスの(いずみ)から、マイルネの西に位置する海にまで(つな)がっている。(われ)らが村はこの川を辿(たど)った先、(いずみ)(ふもと)にある。よりシンプルに言えば、この川を沿()って進めば、何事もなく村まで辿(たど)()けると言って()(つか)えない」


「この川を()()ぐですね、わっかりました!」


 確かにそれはそうなのだけど……。

 しかし川は蛇行(だこう)し入り組んでいるうえ、森の木々に(はば)まれて視界(しかい)も悪い。そんな中を高ランクの魔物(まもの)対峙(たいじ)しながら進むとなれば、(なみ)冒険者(ぼうけんしゃ)では普通(ふつう)に命を落としてしまうだろう。(かれ)らはCランクの冒険者(ぼうけんしゃ)と言っていたから簡単(かんたん)に死ぬことはないと思うが、それでもシルシルについて村まで到達(とうたつ)するなど最初から不可能だ。森で迷った挙げ句、村の者たちが助けに向かう未来がもう見えているじゃないか!


「先に言っておく。(われ)らに()()かれ森で魔物(まもの)(おそ)われたとて、(われ)らが手を貸すことはない。良いな?」


「は、ハイ! が、頑張(がんば)りましゅ!」


 いやいや、本当に大丈夫(だいじょうぶ)なのか……?

 一斉(いっせい)敬礼(けいれい)しちゃってやる気満々ですけど、(おれ)もう知らないよ!!?


「では参る。準備は良いな?」


 小さなモコモコたちは、矢印の隊列に(なら)び、太短い足に力を()めた。シルシルの背中(せなか)で仕方ないなぁと右手を(かか)げたマーロンさんが、位置についてと号令をかけた。



『 よーい、……スタート! 』



 四肢(しし)魔力(まりょく)をまとわせ、(かた)い土の地面をひと()りする。

 飛び出したシルシルが、グンと加速し、秒ごとに速度を増していく。それと比較(ひかく)にならないスピードでぴょんと走り出したモックさんは、(おそ)ろしい速さで()けていくシルシル相手に、たった数秒で大差をつけられ(はな)されてしまった。だから言わんこっちゃない!


「あー、……もう見えなくなっちゃった」


 (ひたい)に手を当ててマーロンさんが(つぶや)く。

 そんなの当たり前じゃないかとシルシルの耳元でぼやくも、「武士の情けはかけませぬ」と手を()く様子は微塵(みじん)もない。(おに)かよ。


 ものの数分で探知(たんち)可能な範囲(はんい)をオーバーし、居場所不明になってしまったビーバー族を置き去りに、シルシルが問答無用で()(はな)しにかかる。だけどこれで(かれ)らのことを気にする必要がなくなったと思えば、それはそれで良いことなのかもしれない。


「でもちょっと可哀想(かわいそう)なことしちゃったかな」


 同じ獣人(じゅうじん)族同士、思うところがあるのかもしれない。

 マーロンさんは、どこか(さび)しそうな表情だ。

 しかしシルシルの顔は真剣(しんけん)そのもので、ひとつの手心も(あた)えない本気度だ。

 これではもはや、結果を見るまでもなさそうだ。


 退屈(たいくつ)さにかまけた(おれ)は、連日の疲労(ひろう)に加えて寝不足(ねぶそく)続きの睡魔(すいま)(おそ)われ、欠伸(あくび)を一つ。「村に着くまでお休みください」というシルシルに(あま)え、しばしの休息を取ることに決めた。しかしその時だった。


 ううううと大地が(うな)るような音。


 シルシルの身体を通じ、地面の底から伝わってきた異音(いおん)に耳を(うば)われ、(おれ)は思わず身を起こした。どうやら同じく異音(いおん)に気付いたシルシルも、「なんだ?」と周囲に目を光らせる。しかし一見したところ、それらしきものはどこにも見当たらない。


 (いま)()り続く雨の中、いよいよ森に入った(おれ)たちは、ずっと続いている異音(いおん)の正体を(さぐ)(つづ)けていた。こころなしか近付いているとすら思わせる(かす)かな異音(いおん)は、(いま)だその正体を現すことなく鳴り続けていた。


「なぁシルシル。これなんの音なんだ……?」


(われ)もずっと出処(でどころ)(さぐ)っているのですがわからぬままで。一度高き場所から確認(かくにん)いたしましょうか」


 そう(つぶや)くと、シルシルは近くで一番高い木を()(あが)り、てっぺんからさらに高く飛び上がった。「ホッホ~」と眠気(ねむけ)も飛んでしまうほど(はげ)しい風に()られながら、周囲360度を回し見た(おれ)は、そこで初めて音の正体を垣間見(かいまみ)る。


「ねぇハク、あれなんだろう……?」


 先に気付いたのはマーロンさんだった。

 彼女(かのじょ)が指さした先。(おれ)たちが走ってきた後方から、さらに遠く。雨粒(あまつぶ)と川の水が揮発(きはつ)してできた(うす)い雲の隙間(すきま)から流れた光の(すじ)を、(かす)かな()れが(はじ)く。眼下の川伝いに広がっている細い道と、鬱蒼(うっそう)()(しげ)った森だけが(うつ)る風景の中に、時折()かび()がるように()ねる(しずく)がひとつ。まだまだ遠く、一キロ以上の距離(きょり)があるものの、(はげ)しい音を鳴らしながら、何かが蛇行(だこう)しながら飛沫(しぶき)を上げていた。


「な、なんだありゃあ……?」


 音の原因は、まるで川をなぞるように移動し、ほんの少しずつこちらへ接近していた。異音(いおん)は確実に大きくなり、より確実に、(おれ)たちの(はら)の底を()らすよう、自らの存在(そんざい)をアピールしているようだった。


 川沿(かわぞ)いの木々をなぎ(たお)すほどの勢いで近付いてくる音は、全速力で走っているシルシルよりも(わず)かに速く、距離(きょり)(はな)れているものの、確実にその距離(きょり)()めていた。まさかと(つぶや)いた(おれ)は、シルシルの()から飛び出し、空中に身を投げ出してさらに広範囲(こうはんい)へと探知(たんち)(はば)を広げた。すると――


「は、はは……、(うそ)だろ……?」


 検知した異音(いおん)の正体。

 それはあまりにも、あまりにもすぎる言葉だった。



『 ハ ー ク ー た ー ま ーーー!!! 』



 思わず顔が(ゆが)んでしまう。

 バチャバチャと水面を(たた)く音に加えて、聞き覚えある声で(おれ)の名を(さけ)(だれ)かの存在(そんざい)

 (あわ)てて空中の(かべ)()ってシルシルの()へと(もど)った(おれ)は、「急げ、速度を上げろ」と(ほこ)(たか)きウルフ族の(しり)(たた)く。


「村長殿(どの)……? も、もしや」


「そのまさかだ。アイツら、追いついてきてるぞ!」


 思わず()みがこぼれる。

 声の主の正体は言わずもがなのビーバー族で、なんともなんと、川を(もう)スピードで泳いで、(おれ)たちとの距離(きょり)を一気に()めていやがった!


「え、ちょっと待って。さっきの音、本当にモックさんたちなの!?」


間違(まちが)いなく。アイツら、こんな(おく)()(かく)してやがったとは。まったく(おれ)たちの想像の大外からまくってきやがったぜ!」


 しかも。しかもだ。

 当たり前だが、通常川というものは、常に海へと向かってその水流を泳がせている。

 言ってみれば、(いずみ)へ向けて泳ぐという行為(こうい)は、水の流れに逆らって進んでいるということ。それはつまり……



『 ハーーークーーーたーーーまーーーー!!!! 』



 (やつ)らにとってさらに不利な条件を(くつがえ)し、(おれ)たちとの差を()めてるってことだ!


「おいおいおい、マジか、マジかよ……」


 シルシルが手を()いている様子はない。

 なのに(やつ)らの水面を()って接近してくる音は、秒ごとに確実なものとなっている。


 思わず笑ってしまう。

 (おれ)の知らない世界はまだまだあるんだなと、笑いがこぼれて止まらない!


「なぁシルシル。そういえば、お前が負けたときの条件を決めてなかったっけ」


 (おれ)の言葉にピクリと耳を動かしたシルシル。

 不服そうに(わず)かに()()くなり、これまでより強く四本の(あし)魔力(まりょく)()めて強く()()った。


「よ~し決めた。負けたらこの前約束した美味(うま)い飯の件はなしな。(いや)だったら死ぬ気で走れ、(ほこ)(たか)きシルバーグロウウルフの(おさ)、シルシルよ!」


 ワオーンと遠吠(とうぼ)えを(ひび)かせ、シルシルがさらにスピードを上げた。

 そうして(おれ)たちは、過去最速時間を(わず)かに更新(こうしん)し、村までの道程を(おそ)ろしい速度で()()けたのだった ――



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