表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/130

第100話 ハク村爆誕!


 良い話ではあるものの、こればかりは俺の一存で即決することはできない。「前向きに考えたいがすぐには決められないため、改めてお返事を」と躱しておいた。


「おお、本当か。よろしく頼む。細かな話は我が国の商会を通し、改めて話をさせていただこう」


 となると、やはり村に商会を作りたいというリッケさんの提案を飲まないわけにはいかないな。しかしそうなれば、必然的に俺が商会の代表になってしまう。できればそれは避けたいが、どうしたものか……。


「ちなみにもう一つ噂で聞いたのだが、何やらそちらの村で、驚くほど美味いコリツノイモが作られていると。あのガロウ氏もいたく気に入っていたとテーブルから聞いているが、どうだろうか……?」


 テーブルめ!

 どうやら俺たちの情報は奴を通じて全部筒抜けらしい。こうなったら隠しておいても仕方がない。いっそのこと、ここでアピールしておいた方が早いのかもしれない。


 こんなこともあろうかと、俺はポンチョのリュックから既に焼いておいたコリツノイモを一つ取り出し、サワーに手渡した。「そのような得体の知れぬものを口にするのは!?」と慌てる部下たちを制して受け取った彼は、毒が盛られている可能性すら鑑みず、あむっと大きく一口かじってみせた。


「んなっ!? なんだこれは!!? これがあの、味気なく淡白で口の中がパサつくばかりのコリツノイモだというのか! バカな、信じられん!」


 イモの香りで目を覚ましたポンチョが、自分も食べるとリュックからイモを取り出し食い始めた。そのあまりの甘い香りに、謁見の間にいた全員が一斉にノドを鳴らしたのは言うまでもない。


「こ、これは恐ろしい。よもやこのような恐ろしいものまで作り出していようとは……。して村長殿よ、こちらのイモも我が町に卸してはもらえぬのか!?」


「そちらも前向きに。ですが今回のことで私たちにもそれほど余裕がございません故、もう少々お時間をいただくことになると思います」


「それは構わぬ。しかしこれが世に出回ることとなると、もはや普通のコリツノイモでは満足いかぬようになるぞ。それはそれで困りものだな、ハッハッ!」


 トントン拍子で進んでいく話に、少しばかりむず痒くなってくる。しかしそれは同時に、俺にとっては不都合が大きくなることを意味している。村にとってかけがえのない話ではあるものの、その先に果たして俺の居場所はあるのだろうか――


「一時はボアを飼い慣らす輩が森にいるなどと良からぬ噂に振り回されることもあったが、此度(こたび)はこうして町を救っていただいた。今さらそれをどうこう言うのは野暮というものだ。なぁテーブルよ」


「ですが何かあれば、我らは国のため、誰が相手でも関係なく対処する所存。お前たちもわかっているな?」


 妙な圧をかけてくるテーブル。

 これはアレだな。あまり調子に乗るなよという忠告だな、多分。


「ボアとウルフたちについては、彼ら猫族と私とで問題なく対処できるものと考えております。願わくば、彼らの寝床となる村の周辺に、不要な侵入をなされぬことを望みます」


「うむ、ギルドを通じて忠告しておこう。テーブル、頼んだぞ」


 こちらをグッと睨むテーブル。

 あまり調子に乗ると後で怒られそうだ。


「ではこのあたりで。そうだ、一つ伺い損ねておったが、主らの村は名をなんと申すのだ? 正式な名があるのであろう?」


 そういえばリッケさんにも言われてたけど、何も考えていなかった。しかしそんな俺をよそに、隣にいたマーロンさんが何事もなく返答した。



「我が村の名はハク村と申します。以後、そうお呼びいただければと存じます」



 …………は?


 いや、マーロンさん。

 何言っちゃってるんですか?



「ちょ、ちょいとマーロンさんや。そんな勝手なことを言われちゃうと困るというか、なんというか」


「なに言っているんだ村長。ずっと前から我々は村のことをハク村と呼んでいたのだぞ。もはやそれで慣れてしまっているからな。今さら変えられないよ」


 いやいや、初耳なんですけど!?

 俺の動揺をよそに、勝手に決められた村の名前の話題を(しめ)て解放された俺たちは、緊張続きの城内を後にした。


 しかしそれにしても、ハク村はちょっと問題が大きくなっている気がする。これ以上俺自身が目立つのは避けたいが、いやはやどうしたものか……。


 その後、村へ戻って「その名前は良くない!」と抵抗するも虚しく、村の名称は『ハク村』ということで正式決定してしまった。だから、どうしてそうなるのよ!?



 俺の意見、

 いつもみんなに無視されるんですけどッ!!



 そんなこんなで、まだまだハク村の物語は始まったばかりです。さてさて次は、どんなモフモフさんが出てくるんでしょうね……



――――――――――

――――――――

――――――

――――

――


第3章 完


ここまでお読みいただきありがとうございます。

物語は本話でひとまず一区切り、でもまだまだ続きます。


もし少しでも面白いと思っていただけましたら、評価やブックマーク等を頂けますと励みになります。

多分ポンチョも喜びます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ