↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元チート級暗殺者のもこもこ村開拓記 ~すでに2度死んでる最強の殺し屋ですが、新たな人生はもふもふケモナーさんに囲まれた優雅で静かなスローライフを送りたい!  作者: THE TAKE
第3章 雪雪危機一髪!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
99/441

第099話 サワー・ダーリング


 謁見(えっけん)の間に通された俺(おれ)は、もしかしてランヴィル公爵(こうしゃく)と鉢合(はちあ)わせしやしないかとヒリヒリしていたが、どうやら本日は不在中とのことで、ひとまず胸(むね)を撫(な)で下(お)ろした。


 俺(おれ)たちの村とは一線を画す異世界(いせかい)すぎるきらびやかで美しい装飾(そうしょく)の数々は、これまた中世ヨーロッパのゴシック建築調とでも言うのだろうか。国のトップが君臨(くんりん)するに相応(ふさわ)しい雰囲気(ふんいき)に飲まれてそわそわしていると、わざとらしく扉(とびら)を叩(たた)いた誰(だれ)かが「邪魔(じゃま)するよ」と部屋(へや)に入ってきた。立ち上がって頭を下げるテーブルに続き、俺(おれ)とマーロンさんも慌(あわ)てて平伏(へいふく)する(ポンチョは器用に俺(おれ)の頭の上で寝(ね)てるけども……)。


「よいよい、すぐに頭を上げたまえ。むしろ我(われ)らがそちらに頭を下げねばならぬくらいだ。おっと、自己(じこ)紹介(しょうかい)が遅(おく)れたね。私(わたし)はコーレルブリッツ公国の公爵(こうしゃく)付補佐(ほさ)のサワー・ダーリングだ。以後お見知り置きを」


 銀色の髪(かみ)に銀色のヒゲを蓄(たくわ)えた、見るからにデキる空気を漂(ただよ)わせるナイスガイオジサマは、自身のことをサワーと名乗り、部下たちを自分の背後(はいご)に並(なら)べて休めの合図を出した。慌(あわ)ただしく腰掛(こしか)けたサワーは、さっさと座(すわ)ってくれとこちらに呼(よ)びかけた。粗相(そそう)がないように俺(おれ)に目配せしたテーブルに「へいへい」と目で返事した俺(おれ)は、仕方なく背(せ)筋(すじ)を正しながら口をへの字に曲げた。


「そちらの御二方(おふたかた)が、例のモリスの森の奥地(おくち)に住むという村の代表であろうか」


「は、はぁ……。私(わたし)は村の村長をしておりますハクと申します。こちらは猫(ねこ)族の頭首代理、兼(けん)冒険者(ぼうけんしゃ)窓口(まどぐち)の担当(たんとう)をしているマーロンです。よろしくお願いします」


「マーロンです」と彼女(かのじょ)も揃(そろ)って挨拶(あいさつ)する。

 畏(かしこ)まらないでくれと言ったサワーは、挨拶(あいさつ)よりもまず礼だと徐(おもむ)ろに立ち上がり、深々と頭を下げた。部下と俺(おれ)たちが慌(あわ)てて諌(いさ)めるも、彼(かれ)は一切(いっさい)躊躇(ちゅうちょ)することなく、「我(わ)が国(くに)の危機(きき)をお救いいただき感謝の言葉しかない」と最大限の賛辞を俺(おれ)たちにかけてくれた。


「やめてください。我々(われわれ)もこのマイルネの町に大いに世話になっております。当たり前のことをしたまでです」


「そう言っていただけると、こちらとしてもありがたいかぎりだ。本来であれば、我(われ)らが代表であるランヴィルがこうして礼を申し上げるところ、どうしても外せぬ事情があり、同席することが叶(かな)わなかった。重ねて申(もう)し訳(わけ)ない」


 たかが下々の村人にここまで礼を尽(つ)くす国のトップが、この世界にどれほどいるだろうか。少なくとも、俺(おれ)はそのように優(すぐ)れた者たちをほとんど見たことがない。しかし裏(うら)を返せば、俺(おれ)はそのような人格者であり、かつ良き国の統率者(とうそつしゃ)であった公爵(こうしゃく)の父を殺した大罪人だ。本来ならば、こうして彼(かれ)らの感謝を受けられるような人物ではない。


 そんな野暮(やぼ)な人間が、このような場に長々といられるはずはない。俺(おれ)は礼の言葉を受け取るとすぐに、「これ以上我々(われわれ)のためにお時間を頂戴(ちょうだい)するわけには参りません」と前置きして、この場を後にしようとする。しかしサワーに「待ちなさい」と留められてしまった。


「そう慌(あわ)てることもあるまい。私(わたし)の予定などは気にせんでいい。何よりランヴィルより丁重(ていちょう)に頼(たの)むと指示を受けておるのでな。してそちらの村長殿(どの)と、マーロン殿(どの)でしたか。御二方(おふたかた)の活躍(かつやく)は、そちらのテーブルより色々と伺(うかが)っている。大層(たいそう)な活躍(かつやく)であったらしいな」


 身を乗り出して笑ったサワーは、どうやら既(すで)に『俺(おれ)たちのファン』といった様子で、これまでギルドから聞(き)き及(およ)んだ情報を一つひとつ読み並(なら)べ、わざわざ俺(おれ)たちに説明して聞かせた。しかも誇張(こちょう)というほかないほど大袈裟(おおげさ)にされた話は節々で嘘(うそ)も入り混じり、随分(ずいぶん)と派手(はで)な話になっているではないか。おいテーブル、どういうことよ!?


「しかもこの度(たび)は、かの御高名(ごこうめい)なエドワード・ガロウ氏までもを招集し、事態にあたってくれたそうではないか。我(わ)が国(くに)ギルドに所属するエンボスが彼(かれ)の43番目の弟子(でし)であることはもはや周知の事実だが、まさかその師匠(ししょう)本人を担(かつ)ぎ出(だ)してくるとは恐(おそ)れ入(い)ったぞ。公国としても鼻が高いというものだ、ハッハッハ」


 初めて聞くワードが色々とあったが、どうやらあのヒゲ男は、よほど凄(すご)い男だったらしい。もともと西の国に拠点(きょてん)を置き仕事をしている職人なのだが、過去この国に住んでいた弟子(でし)(※空き工房(こうぼう)となっていた家の主(あるじ))に用があって訪(たず)ねたものの、本人が既(すで)にマイルネの町を出ており会えなかったことに加えて、雪のため町から出ることができなくなってしまったことで、仕方なくあそこで野宿をしていたのだという。今より数日前に突然(とつぜん)帰ると西の国へ戻(もど)っていったそうだが、彼(かれ)が滞在(たいざい)中の間、マイルネのギルドや職人街界隈(かいわい)は、水を得た魚のように動き回っていたらしい。現金な奴(やつ)らめ……。


「それに聞いたぞ。此度(こたび)に作った魔道(まどう)具の荷台も凄(すご)いらしいが、それ以上に今回大量に卸(おろ)していただいた実の方も凄(すご)いのだとな。なんでも本来のピルピル草とは一線を画すほどの違(ちが)いがあるとか!」


 でしたらと相槌(あいづち)を打ったマーロンさんが、俺(おれ)の頭の上で寝(ね)ているポンチョのリュックから実際の実を出して彼(かれ)に手渡(てわた)した。すると「なんだ、この大きさは!?」とサワーとその部下たちが口々に驚(おどろ)きを露(あら)わにした。


「私(わたし)たちの村の特産品として試作している、新しいピルピル草の実です。あくまでも試作の段階(だんかい)ですが、今回は偶然(ぐうぜん)収穫(しゅうかく)を早めておりましたので、こちらを皆様(みなさま)にお分けすることができました」


「なるほど、確かにこの大きさであれば、これまで以上の収穫(しゅうかく)量が見込(みこ)めるというわけか。面白(おもしろ)いな。しかも聞けば、これまで我々(われわれ)が作っていたものよりも随分(ずいぶん)と美味だそうではないか。いや、むしろハッキリ美味(うま)いと申し上げよう。私(わたし)も何度か食さしていただいたが、それはそれは美味だった」


 確かにと全員が頷(うなず)いた。

 当たり前だ、俺(おれ)たちが努力に努力を重ねて作り上げた至極(しごく)の逸品(いっぴん)なんだぞ、美味(うま)いに決まってるだろ!


「そこで相談なのだが、こちらの実を今後とも我(われ)らの町に卸(おろ)してもらえぬだろうか。今回はもう量がないと聞いているが、現在巷(ちまた)で出回っている従来(じゅうらい)のピルピル草の実を食べた連中から苦情がきておるのだ。前に出してくれた実をまた売ってくれとうるさいのだよ。まったく、こちらの気も知らず勝手なものだな、ハッハッハ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。