表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
代理魔王の恋愛事情  作者: 天夜ゆる
新月の舞踏曲
PR
7/13

真理戦




しん、と全員が静まり返った。誰も言葉を発さない中、私は一歩、こつりと歩み寄る。


煮え切らなかった怒りは、といえば。唇を噛み締めることで、どうにか堪えていた。それが、本末転倒だとしても、一時的にどうにかなるのであれば、別にいいかなって。よぎったからだと、言い訳を並べた。



「そなたは……何が目的だ?」



魔法弾を手中に収めながらも、煙の男に問いかける。じり、とにじり寄ったからか、随分と彼は焦っているようだった。どうにも、彼自身に攻撃は通らなくても、精神攻撃ならば通るらしい。そんな憶測を、御託を並べてみた。



「姫君は変なところに御執心なんですねぇ。まぁ、いいでしょう。一つだけ、お教えしましょう」



にやり、と。それでいて、気味の悪い笑みを男は浮かべて、顎に手を添えて何かを考えるような仕草を男はとった。実際は、煙で身体ができているから完全にそうだ、と決まったわけではないのだけれど。たしかに、彼が嗤ったような気がして。また、苛立ちへと姿を変えた。


それから口元から手を離した男は、人差し指を立てて音を発する。



「全ては我らが主のためならば。ワタシたちは主のための駒であり、手でも足でさえもなれる。たとえ、それが――――世界の破滅だとしても!!」



しん、と。再び暗黙がこの場に落ちた。ただ、男の声だけが残滓として残され、拡散されていく。ただ、私は呆気にとられて、その様子を眺めているしかできないのである。我ながら、大事なところで臆病になるな、と反吐が出る。もはや、簡単に罵ってくれた方が楽なまであって。



「……意味がわからない。それが俺が思い通りに動いていているのと何が関係がある?」



「おや…。勇者殿はそこが気になりますかぁ?でもまぁ…もうワタシも魔法(・・)の効果が切れてしまうのでね。次までの宿題とでもしておきますよぉ」



ユイトの発した威圧感は、飄々とした口調で躱されてしまったらしい。けらけらと笑う男に対して、こっそり無詠唱で拘束(バインド)をかけてみたけれど、何も変化はなく。無謀で終わったらしかった。


ぺこり、と本来は敵……なはずして、頭を下げて霧散していった元煙をただ、最後まで眺めていたら。突然、ガクリ、と安堵からか気を張りすぎたのか。膝から崩れ落ちてしまった。多分、これを腰が抜けるっていうんだろうな、と苦笑を浮かべた。



「ア、アリサ様!!」



「……サラ。大丈夫だから心配しないで」



そう、ただいつも通りに返したけれど。サラの瞳には、無茶するなという念が籠もっている気がした。私、そんなに信頼ないかなぁ…と頭をよぎったそれを振り切った。


そういえば、と。この場に勇者がいたことを思い出して、私はあ。と零した。それらをユイトが聞き取ったのか、不安で振り向けば。ユイトは俯いて、手のひらを血が滲むほど握りしめているらしかった。


ツン、とじわじわと鼻につく鉄の香りがどうにも慣れなくて。治療しようと、サラの肩を借りてユイトの元へと近寄った。私はずっと。助けられる者は見捨てたくないのだから。それが、王たる者の器かと問われれば、そうとは言い切れないと思う。だから、先生も私に冷めた紅茶を飲まないように、と教え込んだのだろうか。取捨選択が、できるようにと。



「…………みんな!ユイトいたぞ!」



どうやら、勇者パーティーの仲間が勇者を見つけたらしい。大通りの方から、声が反響して聞こえてくる。まだ、夜中だからだろうか。このあたりの住民の避難誘導が既に済んでいるからだろうか。人気のない場所では、障害物がないから音が通りやすい、とかいう話は本当だったみたいだ、なんて。やけに冷静な私がいることに驚いた。


それから、パーティのヒーラーをやっているという、サクラさんが私の状態を見て、



『ユイトは自業自得なんだから後ね!!』



と一喝してくれて、少し離れたところへと移動した。一喝してくれたおかげで、なんとなく…私の気も晴れた気がして。もう、サクラお姉様と呼ぼうかな…。なんて、馬鹿らしい考えが頭に浮かんだ。たとえ、それを口にしたとしても。形骸状は対抗していたのだから、まだ抵抗が残っているだろうし、怖いという感情しか浮かばないだろう、と検討して、口を噤んだ。



「別に、私は貴女が好きなように呼んでくれて構わないわよ」



「えっ!?あっ……声に出てた……!?」



「そりゃ、もうバッチリ」



あはは、と煙の男よりも快活に笑う彼女に勇気を貰って。じわじわと喜びが浮かんでくる。どうにも、私は単純らしい。それくらいは容易にわかってしまった。


それよりも、だ。サクラお姉様と二人きりになってから、魔王代理としての"アリサ"の仮面を忘れている気がして、ならない。取り繕わなければ、私の人望など、取るに足らなくて。いくら手を伸ばしても、届かない日の光すらあるのだから、私は届く月光の方がまだ……良いと思える。そもそも、今日は新月だから月光すらないのだけれど。



「あのさ……魔王様。ううん。アリサ様は、実は無理してたりしない?」



いつの間に、名前がバレたのか。隠してはいないけれど、バレた経緯が知りたくて。女同士の方がいいから、と連れられてきたサラを目をやれば、今度は彼女が目を逸らした。私の名前を零したらしい。そういえば、腰を抜かした時。サラが私の名前をそこそこ大きな声で呼んでいた気がして、頭を抱えた。


――――犯人はサラだったんかい。



「わらわは……無理など、していない」



「本当に?」



ただ、サクラお姉様のシャンパンガーネットのような吸い込まれてしまうほど綺麗な瞳が。必死になりながらも、気丈に振る舞っている私の姿だけを映し続けていた。




真理、心理、審理。とりあえず、一章(?)は多分そろそろ終わります。謎が謎を呼びすぎて、何も残ってない気がします。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ