第八話:真実の裁きと、クォーツの戴冠
1. 王太子の裁定
数日後。ダリウスは、王太子の執務室にクォーツ伯爵と継母、異母妹を呼び出した。エララは、ダリウスの隣で、ジェムエンゲージを輝かせながら、静かに座っていた。彼女の表情は、微かに優しく、揺るぎない覚悟を帯びていた。
ダリウスは、弟たちから得た完璧な調査報告書を机の上に広げた。
「クォーツ伯爵。あなたの家で行われてきた、エララ嬢に対する長年の虐待、栄養失調状態の放置、そして王族の婚約者候補への悪役強要は、すべて事実としてここに記録されている」
ダリウスのダイヤモンドの瞳は、一点の曇りもなく、伯爵たちを射抜いた。彼の眼には、伯爵たちの焦燥と、継母と異母妹の倍増した悪意が映っていたが、エララの指輪から放たれる守護の魔力が、その悪意を静かに中和していた。
「この行為は、王太子の婚約者を不当に扱った、国家に対する重大な侮辱にあたる。為政者として、私はこの理不尽を許さない」
伯爵は顔面蒼白になり、継母と異母妹は、ダリウスの絶対的な威厳に気圧され、反論の言葉を失った。
ダリウスの裁定は厳格だった。クォーツ伯爵には爵位剥奪は免れたものの、重い罰金と謹慎処分。虐待を主導した継母と異母妹は、貴族籍を剥奪され、地方へ追放された。
「これは、僕が愛する女性に対する、僕からの、最初で最後の正義の執行だ」
2. 水晶令嬢の真実のデビュー
その翌週。王宮では、王太子とエララ嬢の婚約を祝う、盛大な披露の夜会が催された。
広間の中心に立つエララは、もう以前の無表情な悪役令嬢ではない。彼女はダリウスが選んだ、淡い桃色のドレスに身を包んでいた。
彼女の指には、命の誓いが込められたダイヤモンドのジェムエンゲージが輝いている。
彼女の周囲には、以前のような倍増した悪意の闇はなく、彼女の体質は「神聖な増幅器」としての本来の清らかさを取り戻していた。
そして、エララは、ダリウスに心から愛されているという絶対的な真実を知っている。彼女の表情には、以前の無機質さの代わりに、穏やかな愛と自信が溢れていた。
広間の誰もが、エララが放つ静かな美しさと、ダリウス殿下が見つめる熱烈な愛情に、言葉を失った。
ダリウスは、エララの手を優しく引き寄せ、彼女の唇に、公衆の面前で静かにキスを落とした。
「これで、君はもう、誰かの悪役を演じる必要はない。君は、僕の隣で、君自身の真実として輝いていればいい」
エララは、ダリウスのダイヤモンドの瞳に、心からの暖かい笑顔を返した。
(この方の命がけの愛が、わたくしの孤独を終わらせてくれた。わたくしはもう、世界一幸せな王太子妃だ)
こうして、清廉なダイヤモンドは、清らかな水晶を見つけ、その真実を解明し、そして命を懸けた永遠の守護を誓ったのだった。




