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へっぽこ魔人生  作者: 岸辺濫瀟
第6章

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16.戦いは突然に

ノリで書きました。辻褄が合わないところは後々修正する(と思う)ので目を瞑ってください。

 アタナシアによって転移された場所はリバティ中心部にあるアタナシアの居城。窓から見える景色から先ほどまでいた場所。おんぼろ城と思っていたが、中身もかなりがたが来ている。


 大広間の石壁はそこかしこに穴が開き、隙間風が吹きすさぶ。防音性なんて欠片もない。魔法も魔法陣も見えないことからただの壁でしかなさそうだ。長方形の部屋はなんのために作られたのか不明だが、ここが一番城で戦いやすいのだろう。


 床の石は角こそ削れているけれど、問題なく自分の体重を支えている。試しに強めに踏んでみてもびくともしなかった。


「安心しろ。見た目こそ風化しているが罠を仕掛けているなんてことはない。床が沈む、崩れるなんてことはないはずだ。少なくとも壊そうとしない限りな」


 悠然と俺のほうへ歩みを進めるアタナシアは堂々とそう俺に言った。ゾンビを作って襲ってきた割には意外と正々堂々戦う騎士道精神でも持ち合わせているのか?


 騎士道精神なんてものは糞ほど役に立たない貴族の名誉を高めるだけの概念だと思っているが、そんな精神のやつだったら意外と搦め手で勝てるかもしれないな。


「そんなことはわからないだろ?お前さんざんゾンビ使って襲ってきたんだから、今更罠がないとか伏兵がいないなんて信じらないだろ。というか敵からの言葉をはいそうですかと信じるやつがどこにいるんだ」


「確かにそうだな。疑り深いというか誰も信じていないような性格だな。創造神の魔人は性格が悪そうだ」


「案外神様譲りかもしれないぞ?お前創造神様と話したことないんだから性格なんてわからないだろ?」


「ふふっ。面白いな。自分に権能を与えている有難い神様を貶すとは……無礼とか失礼とか思わないのか?」


 奇妙な生き物を見るように苦笑いをしているアタナシア。創造神様は素敵な神様かもしれないけど、俺のピンチを助けてくれることってないんだよね。今までは雑用頼まれた程度だし、使命も教えてくれないし。いじわるな神様ではあるんだよな、俺視点だと。


「お前と違って良好な関係を築いているのでな。心配ご無用。世界よりも広い心を持つ創造神様が狭量なわけないだろう。こんな軽口も気にしないさ」


(気にはしていませんが、注意くらいはしますよ)


 アタナシアに向けてかっこつけていたら創造神様から脳内に直接話しかけられてしまった。創造神様、今いいところなのでお叱りは後で纏めて受け取ります。人間の世界ではミスとか失敗は後ほど報告書に纏めて偉い人に提出する決まりなんで。俺と神様も実質上司と部下なのですから、後で報告したときに怒るなら怒ってください。


 そう心の中で念じると創造神様は御返事をしなかった。どうやら人間のルールに沿って動いてくれるらしい。やはり寛大な心の持ち主だ。


「それにしてもゾンビはいらないのか?お前のゾンビたちは中々に強そうに見えたが、使わないのか?」


「創造神の魔人の前では塵芥に等しいだろう。魔人の力は異質なものだ。量よりも質が大切だ。余計なところに権能のリソースを割く必要もない」


 アタナシアは腕組みを解くと、両腕に力を込め始めた。白髪オールバックにイエローグリーンの瞳。力を込めたことにより体中の古傷が筋肉と共に隆起しはじめる。


 筋肉の表面に浮き上がる血管が男らしさと歴戦の猛者感を強調する。ぼろきれのような布の服がより流離の戦士として雰囲気を醸し出していた。


 アタナシアとの距離はもう10mもなかった。魔人の脚力であれば瞬きする間に詰められる距離。そしてアタナシアという魔人本体は意外と弱いんじゃないかなとか見掛け倒しで実際はそんなでもないとか思ってた。


 いや、そうだと願ったんだけど、どうやらそうじゃないみたい。アタナシアが積極的に詰めてきていることから近接戦闘主体のようだ。


 これはチャンスでもある。魔人としての肉体の性能差がよほど離れていない限り、近接戦闘だけで魔人を殺すことは出来ない。魔人の肉体の再生力は体を欠損しても即座に治癒できる。


 これは肉体変化の延長で、体を増殖させて補うような感覚だ。だから再生しているというよりは他の部位を伸ばしているに近い。


 これは千日手というやつじゃないか。だが警戒は継続だ。相手の権能がゾンビを作ることがメインの力じゃない可能性だってあるし、権能ではなく能力でゾンビを作成できるのかもしれない。


 不用意な接触は避けて、剣で距離を取りながら戦うことがベストか。


「タルバ、お前にはゾンビになった後でじっくり魂に聞くとしよう。死んでもゾンビにしてやるから安心しろ」


「安心できるわけないだろ?ゾンビになんてなりたくないな」


 俺の言葉が開戦の合図となった。俺がにやっとした直後、前のめりで走り込んできたアタナシア。右腕を思いっきり後ろに引いて溜めを作り、右ストレートを顔目掛けて撃ち込んでくる。


 魔人の動体視力のおかげで首だけを右に逸らすと、腰から剣を引き抜き居合斬りで横一閃に切りはらう。


 アタナシアは肉体変化で体の形を後ろに引き延ばし、液体のようになめらかに避ける。これが魔人の戦い方か。


 その間にアタナシアは俺の顔左がにある腕を伸ばして俺に巻きつけてくる。縄でぐるぐる巻きにされた俺は体を光の粒子に変えて難なく抜け出ると距離を取った。


 人間との戦闘では想定しない動きばかりだ。お互いの手札を少しずつ開示していくこの戦い方はどちらかといえば俺が不利かもしれない。


 俺はまだ魔人の肉体変化を突発的に使用できない。咄嗟に理想の体をイメージすることができないのだ。


 距離を取った俺にアタナシアは勇猛果敢に攻めてくる。今度は左手でジャブを放ちながら体をゴム状に伸ばして無理矢理体をねじる。俺は先ほどよりも早い拳を剣の腹で受け止めるが、直後に螺旋状に回転しながら放たれた右ストレートが俺のどてっぱらに直撃する。俺は息が止まり後方に吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。


 パラパラと石壁が崩れて粉になり、少しだけ砂埃が舞う。避けれると思ったが、アタナシアの腕が伸びていることを視認すると、肉体変化込みで避けないとダメなのか。


 くそっ、距離感が狂うな。徒手格闘に見えているからどうしても人間の腕のリーチだけで考えてしまう。


「どうしたどうしたっ!!防戦一方じゃないかっ!そんなんじゃつまらんだろうがぁっ!」


 こいつ……脳筋だ!ゾンビを使ってあくどいことやっている割に戦闘狂なのかよ。賢い戦闘狂とか誰も嬉しくない。


「小手調べって知っているか?最初っから全力を出してもしょうがないだろ?せっかくの魔人との戦いなんだからじっくりやらせろ」


 壁際に追い込まれた俺だが、そんなことお構いなしにアタナシアは突っ込んでくる。タックルの直前に体を粒子化してアタナシアの背後に回り、首に剣を突き刺す。


 紙一重でアタナシアは横に飛び回避したものの、薄皮一枚切ることには成功した。アタナシアの首元から一筋の血が垂れる。それも即座に修復される。


 魔人の肉体感覚は見えていない箇所も充分補える。広い範囲を感知するのではなく自分の周りだけであれば鋭敏な五感で把握できてしまう。


「気持ち悪い体の使い方だな。人間らしく戦えよ」


「そっちこそ、体を光の粒に出来るとは……。創造神の権能は光というのは自分自身が光になるということか。なるほど」


 何度か粒子化したことで権能の手の内が見切られていく。ジリ貧だな。一気に片を付けたいが、そんな簡単にいける相手ではない。


 防戦しててもらちが明かないな。ここは攻めに転じてみるか。


 俺は咄嗟に横に飛んで両ひざをついたアタナシアとの距離を詰める。あえて隙の大きい上段からの縦一閃。当然アタナシアはその隙をつこうとして前に出てくる。


 俺は粒子化してまた背後に回ると背中を思いっきり切り裂いた。シンプルな作戦だ。


 相手が戦闘経験豊富な戦士だが、慢心しているであろうアタナシアならついつい隙を付きたくなるんじゃないかと思ったが、思った通りだった。


「ぐっ。驕っていたな。つい誘いに乗ってしまった」


 アタナシアは少し苦し気に言ってくる。少し深めに入った傷のため瞬時には回復しなかった。


 俺はこれを好機と捉えて、苛烈に攻めていく。距離を取ろうとしたところを詰めて、左腰から抜剣するが如く、右足を前に一歩踏み出して薙ぎ払う。


 アタナシアは上半身を真後ろに目一杯引いて、剣の真下に体を滑らせる。リンボーダンスみたいだな。


 上半身を起こしてきたアタナシアはその勢いのままばねのように飛び起きて俺にとびかかって来る。


 今度は右フックが迫りくるも顔を真下に向けて、前に出ている右足を後ろに引いて五体投地のごとく地面に対して体を平行にする。


 俺が回避することを予測していたアタナシアは右フックを途中でやめ、左足を軸に回転し右足で俺の頭を蹴っ飛ばした。


 意識が飛んではすぐに戻ってくる。人間だったら頭がもげていただろうな。ごろごろ転がった勢いをそのままに立ち上がり、アタナシアを正面に捉える。


 アタナシアは楽しげに笑っていた。こんなもんを楽しめるなんていかれてやがる。蹴っ飛ばされた拍子に口の中を切ったようで、血の味がする。やっぱ血の味は気分が悪い。


 幸い意識が飛んでも剣は手放していなかった俺は中段に構えて相手の出方を伺う。じりじりとアタナシアが俺に向かって歩いてくる。当然身構えた状態でだ。


 アタナシアは徒手格闘と肉体変化を混ぜ合わせた戦闘スタイルは奇異で慣れない。しかし俺は焦っていた。


 俺はまだアタナシアの能力も権能も把握できていない。アタナシアが死神の魔人であること、ゾンビを作成することから命に纏わる権能はあるはずだ。


 それに死んだ後に呼び戻していること、ゾンビのカスタマイズも出来ることから能力か権能の延長に他者の肉体改造が出来るのは確定だ。


 肉体改造が死体のような命を宿していないことが条件だと思うがな。


 一方俺は権能が光であることがもう把握されており、その一端として体を粒子化できることがばれている。


 体の粒子化がかなり板についてきたが、自分の戦闘スタイルと組み合わせることが難しい。


 相手との位置関係を変えるように使っているが、それも何度も使っていれば見切られてしまう。俺も相手の手札を出させるようなことをさせるか。


「『水刃』起動」


 俺は剣に水を纏わせる。剣に呪いの魔石が合体しているせいで魔法の制御下にある水が呪われているというあれだ。


 俺の剣が禍々しい黒いオーラを纏い、高速回転する水が手に負荷をかける。相変わらず反動がすごいな。魔人の力で押さえつけることでやっと制御できる。


「その剣……。明らかに呪われているな。創造神の魔人は光の権能だと思っていたが、もしや闇か呪いも含まれた複合的な権能だったのか?」


 驚いているアタナシアを他所に俺は剣先を後方に向けてジェット噴射を行い、高速で距離を詰めると横に薙いだ。アタナシアは咄嗟に上へ飛ぶも足を切り飛ばす。


 切り飛ばしたアタナシアの脚は呪いが伝染しており、黒い物体と化した。一方、アタナシアは即座に両膝を手刀で切断。呪われた断面を消し飛ばして肉体変化で再生させる。


 両足を失い空中に漂う無防備なアタナシア。そんな状態を見逃すわけがなく、今度は体を切断して呪いを防がれないように胸に剣を突き出した。


 肉体変化をしても突きから横薙ぎに繋げることで確実に追い詰められる。そう思っていた。


 アタナシアに直撃する寸前、地面からゾンビが生えてきた。俺の剣はゾンビに突き刺さり、アタナシアはゾンビを両手で突きとばして回避する。


 ゾンビから剣を引き抜いて追撃をかけようとしたが、大広間にはそこらじゅうにゾンビが地面から生えていた。


 大量のゾンビに足を止められる。全力で横に払い、呪われた水をウォーターカッターのごとく飛ばす。斬撃を飛ばせるのはやはり便利だ。


 それでも数十体を上下に切り飛ばしただけで、アタナシアの元までは届かない。


「それがお前の切り札かっ!創造神の魔人は格上だと薄々察していたが、この力は異常だな。能力というにはあまりにも強力すぎる。能力だったらどこか制限があるはずだ。そう見えないということは権能なんだろう。光と呪い、或いは闇。やはり魔人王になるべくして生まれた魔人というのはいかれた性能をしているなぁっ!」


 悪態をついているがそれでもどこか楽しそうなアタナシアの声。ゾンビをかき分けて再度現れたアタナシアは完全に回復していた。


「ここからはお互い権能を全力で用いた戦いになりそうだなぁっ!!これが魔人と戦うということかぁっ!!」


 一斉にゾンビが俺にしがみつこうとして近寄ってくる。俺は回転して周囲に群がるゾンビに水の刃を飛ばしまくる。


 それと同時に発光することでゾンビを浄化していく。ただでさえゾンビを浄化できるが、呪いが付与されたことで余計に浄化しやすくなった。


 創造神様の浄化の力は呪いが強ければ強いほど強くなるらしい。その辺は普通の聖職者達の浄化とは異なるみたいだ。普通は強力な呪いを解くには強力な浄化魔法をかけなければならないのだが。


 どうやら俺は呪いの強さによって自動的に強力になるらしい。凄いな、今更だけどさ!


「戦う前に言っただろ?ゾンビなんて量を出したところで俺に届くことはない」


「馬鹿とハサミは使いようというだろ?お前を倒すには満たなくとも、肉壁としては役に立つ。肉弾戦タイプの敵に遮蔽物としているだけで有効だ。実際お前の攻撃が俺に届かなかっただろ?」


 相手のゾンビが尽きるのが先か、それとも俺の光の貯蓄量がなくなるのが先か。


 雲がかかっているせいで、太陽から光を補充できない。それに屋内だからどうしようもないな。ただ大広間を照らす光はあるから多少の光は吸収できそうだ。


「ここからは第二ラウンドってことか。まったく嫌になるな、強い奴ってのは」


 俺は愚痴を零しながらも剣を握りなおしていた。勝機はまだありそうだ。戦わざるを得ない状況になったら戦わない選択などあっさり捨てれるんだな。


 魔人になったから逃げやすくもなったのだが、厄介な相手に目をつけられるようになって戦わないということは余計無理なことなのかもしれない。


 人間の時以上に悲しい未来を悲観しながらも不思議と負ける気がしないのはなぜなんだろうな。取り留めのない思考が渦巻いては消えていく。アタナシアとの戦いはまだまだ長そうだ。



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