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へっぽこ魔人生  作者: 岸辺濫瀟
第6章

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2.予行練習

ちょくちょく更新予定です。

 自室のベッドで横たわり両手を開いては閉じる練習をしている。それも1時間ほどもうやっている。


 なんでやっているかなんてわかりきっていることだ。魔人の肉体制御を緻密に行い、目的を達成してゆくゆくは創造神様のお役に立つためである。

 いつぞや創造神様は言っておられた。あなたの望(・)む(・)よ(・)う(・)に(・)やりなさいと。使命を教えてくださらなかったが、俺のやりたいことが使命に直結するのであればスケベ心を全開にすればそれもまた使命の一環として認められるのではないか。


 きっと世界中の誰もから同意を得られるはずだ。もし違うというのであれば創造神様が俺に使命を具体的に示さなかったことが原因だ。だが俺は創造神様のせいだとは思わない。創造神様も厳しい世界の制約の中で動かれているのだから、干渉しすぎてもよくないのだ。だから例え俺と創造神様の間に認識の齟齬、食い違いが発生しても起こるべくして起きてしまうのだ。


 よく考えれば魔人は神様からある意味世界のために使命を与えられるのだから俺がちょろっとHなお店に足繁く通ったとしても、それが欲望を満たす下品さを露呈されたとしても世界の規模に比べればあまりに小規模で矮小な問題だ。


 俺は世界を生み出した創造神様の魔人として世界のために果たすべき役割があるが、それがわからず模索中なのだ。もしかしたらピンク色の楽園にそのヒントが隠されているかもしれない。それに俺は元冒険者。時には冒険の旅に出なければ鈍ってしまう。主に下半身だがな。それで体が思うように動かなくなり立たなくなってしまったらどうしてくれるんだ。寡聞にして知らないが、魔人という様々な種族の上位互換に薬は効くのか?


 もしも精神的な理由でたたなくなったら薬とか飲めばもう一度再起してくれるのか?股間を見てもいつも通り静かに鎮座している。チンだけにな!

 というか魔人は肉体を変化させられるんだからでかくするのも小さくするのも変幻自在では?いや待てよ?肉体変化できるならば生やすことも無くすことも出来るんではなかろうか?そうすると魔人の性別は雌雄同体みたいになるわけだ。


 カナンは今女性の姿をしているが、果たして本当に俺のイメージする女性なのか?もしかしたら下に付いている可能性ってないか?

 くそっ、確認する術がない。少なくとも前に温泉に入ったときには無かったと思う。そうであってほしいという願いでもある。


 あらかじめ宣言しておこう。俺はまだ魔人になって日が浅いから人間のころと好みは変わっていない。俺は一般的な男性だ。だから俺は女性が恋愛対象だ。

 冒険者人生は変なことばかりが起きたが、内面的には普通だ。温泉が好きで、古の勇者の話が好きだった男なのだ。


 女性関係で拗らせてはいないが、人並みには相手を求めている。それこそ恋人や婚約者でもいたらこんな問題とは無縁なのかもしれんがな。


 だからこそ、こんな練習をしているのだ。普通の人間だったころはこんな練習など不要だった。魔人の肉体って便利だと思うかもしれないが、繊細な制御というのは難しい。


 俺に才能がないだけか?にしても他の魔人たちは普通にしていたしなぁ……

 それにイグニストゥスこと、鍛冶屋の爺さんが人間の剣を手入れできている時点で細かな制御は確実に出来ることが実証されている。


 うーん。これでは相手を傷つけずに揉むことに集中して楽しめ無さそうだな。魔人たちはこの辺どうしているんだろうか。元の生物だったころには三大欲求はあったはずだし、どうにかしているはずなんだが。


 お?もしかしてアステールって星の神の魔人が改造人間を作っていたのってこのためか?そりゃあ一般的な人間は魔人の膂力に耐えきれないけど、それにしたって非人道的すぎないか?

 テストの時にいた異形たちは明らかに人間でもなければ魔物に近かったがな。もしかしてアステールって異形系が好みなのか。男でも女でもない未知の世界だな。


 アステールは見た目は男だがもしかして元は異形系統の生物なのか?人間形態に擬態しているだけで、本当の姿は違うのかもしれん。

 これは単なる知的好奇心なのだが、異形系統の生物はどのように生殖活動を行うか純粋に興味があるな。アステールは男の姿を取っているからやっぱり異形の中でも雄なのかな?


 帝国の改造人間たちは人間ベースの異形って感じだったけど、意図的にやってんのかな。アステールも魔人だから人間形態をとりながら肉体変化することが可能だろうから、股間だけ触手みたいに変幻自在なのかもしれない。アステールの股間に興味が尽きなくなってきた。果たして彼あるいは彼女はどんな生物が元になっているのだろうか。


 散々失礼なことされているんだから、これぐらいのジョークは水に流してもらうとしよう。今度会ったら直接聞いてみるとするか。


 両手をグーパーにする練習もあまり実りのない時間だ。そもそも空気を掴んだところで握力の調節が出来ているか判別しづらい。

 ここは外に出て石でも握ればいいのでは?というか、気づくの遅くないか俺?


 元の頭の悪さが出ているな。明日皆出払うことに浮かれて頭の動きが悪くなったようだ。

 だらだらとベッドの上から起き上がり、だらしない体勢で着崩れてしまった服を綺麗に伸ばす。これでも部下を抱え、来客者を住まわせる城の主だからな。


 まぁ、そんな意識が高ければ創造神様の権能で股間を伸ばす遊びなんてしないんだけど、それとこれとはまた別だな。


 一応腰に剣を差して城外へと出向いた。





――――――――――――――


 古城の裏手。何もない殺風景な岩場。ごつごつと隆起した岩と小石、砂くらいしかない場所だ。少し行けば崖が待っている。

 そんな小さな広場に腰を降ろして大きめの石を握っては離す練習をしている。人間の肌は石よりも柔らかいが、今の制御状況は芳しくない。


 平時ならば魔人として生活して月日がそこそこ経っているからこそ危険はない。だがお楽しみの最中ならば話は別だ。

 女性には残念な話でならないだろうが、男性はお楽しみの最中は知能が著しく下がる。冒険者時代に聞いた話も合算すると、言語が通じないタイプもいるらしい。


 そしてえらくご無沙汰な俺と俺の息子だ。スタンバイ中から空回りしそうな勢いの血流具合に多大な不安を抱えている。故に、俺はどんな時でも明鏡止水の心を持って戦いに挑みたいと思う。

 創造神様の魔人でもあるからな。どんな時も心の余裕を持ちたい。


 そして何より無事におっぱいを触りたい。それだけなんだ。ただそれだけ。魔人になってからダメ人間まっしぐらの俺ではあるが、生物としての生殖本能までは捨て去っていない。この城では我慢してばかりだ。一番我慢しているのが主ってどうなんだろうか。

 というよりも正直な話、家臣としては女性に懸想を抱かない或いは我慢している主って逆にどう見えるんだろうか。


 俺が知っている話だと、王族がメイドに手を出して庶子が生まれたとか色んな女性に手を出して相続争いが勃発したとか統治者のトラブルは枚挙に暇がない。国家を運営できないという話よりはマシだがな。


 ここで考えるべきは俺と他の魔人の差異かもな。俺は創造神様の魔人で魔人になって歴が浅い。逆に他の魔人たちはそこそこ歴があるわけだ。カナンなんて姿形が変化していないだけで年齢で言ったら相当いっている。本人には言えないがな。


 魔人にも肉体の衰退があるのかもしれない。性欲の減退とかな。かくいう俺も人間の頃はもう息子が朝起き上がらなくなってしまっていた。ミッド大山脈という寒冷地に住んでいたことも要因かもしれない。だが毎朝元気なくうなだれている息子を見るのは中々にこたえる。トイレに行ったときに悲しくなる。ついでに起きたばかりだと小便があらぬ方向に飛び散るのもまた空しさを増長させる。何が悲しくて朝から自分の小便撒き散らして掃除しているんだ。これから朝飯食うのになぁとね。


 男性なら誰しも経験があるのではないか。若い頃はその良さに気づけないのだ。何事も大切なものの価値は失った後に気づく。命も人生の選択も出会いも別れも。男にとって毎朝元気に天を衝く息子を見て、ズボンのふくらみをおさえて鎮まらせることから1日が始まるのだが、今ではスマートに動けてしまう。


 魔人になってからはコントロールが可能になった。なんなら肉体変化できるのだから動物のアレも再現可能だ。やらんけど。

 伸ばしても短くしてもでかくしても小さくしてもちゃんと感覚はある。魔人になって肉体の強度があがったのだから人間の頃はどうやっても強化できなかった股間という弱点が無くなったんじゃないかとも錯覚した。

 試しにぶん殴ってみたんだが俺の股間が亡くなった。魔人で強化されたのは股間だけじゃなく拳もやった。ちぎれなかっただけ御の字かもしれん。


 そんなこんなでトイレや風呂というプライベート空間でこっそり股間をいじりまわしていたわけなんだが、確信を得たことがある。

 それは無限に立つということだ。ナニが、旗揚げゲーム並みに立っては倒れてを繰り返せるのだ。


 こんな俺でも魔人ってすげぇって思ったよ、マジで。変幻自在の股間を手に入れた俺はいつまでも鞘に仕舞っておくにはもったいないと思ってしまった。男だったらわかるだろ?面白いものが手に入ったら試してみたいと思うのが性(さが)じゃないか。しかし、これに関しては相手のあることだ。入れた後に伸ばしたり縮ませたら動かなくてもいいんじゃないか?という天才的な発想も実質人体実験になってしまうため、諦めた。

 他にも伸縮を高速にしたらどこまでいけるのかも検証したかったさ。でも血涙を飲んでやめたよ。俺光になれるから高速から光速の前後運動に進化できるとも思ったけどさ。

 創造神様が権能の使い道見てたら謝っても済まない気がしてやめたよ。ほら、俺が幾つ我慢しているかわかるか?


 城の主のくせに満足に欲求を満たせず、惨めに城の裏手で岩を相手に胸を揉む練習している魔人の王がいると思うか?情けなさすぎて涙が出そうだ。

 不甲斐ない自分にもそうだが、こうでもしないと満足に揉めない体にされてしまったことにもだ。メリットもあればデメリットもあるってことだ。股間の伸びしろが増えてもおあずけをくらい続けるのは厳しいってことさ。


 俺の部屋は誰かしらが掃除するからエロ本も隠しておけない。魔法鞄に隠しておくという選択肢もあるが、エロ本を仕舞うために他の道具を捨てるって頭悪すぎだと躊躇した。まぁ結局そこに隠して保存食とか貪り食ったんだけどさ。


 エロ本を隠した後に気づいたことであり、俺の状態の心理なんだが、どうやってトイレや風呂場に魔法鞄を持ち込める?外ならともかく自宅内で魔法鞄を持ち歩くのおかしい。

 誤魔化す言い訳なんてあるわけがない。結局1人で寂しくするときは男として生きてきたこの人生で培った想像力に頼ることになった。


 追い詰められたときに頼れるのは才能とポテンシャルだ。どうやら記憶力の微妙な俺でも目に焼き付いた女体を思い返すことは出来たらしい。むしろイメージでは細部を補完する必要があるからな。理想的な相手を出現させることもお手の物だ。想像を現実にする魔道具でもあれば誰よりも使いこなす自身すらあるぞ。


 鼻の下を伸ばして練習していたらつい力んで岩を砕いてしまった。


(いかんいかん。これではいつまでも揉めない。明鏡止水の心だ。波紋のない水面のような心で挑まなければ。常在戦場の心構えだ)


 タルバは心して胸を揉む練習を繰り返した。彼は非常に集中していたため、周囲で自分を見つめる存在にいつまでも気づかなかった。


――――――――――――――


 タルバ様が食事を終えてから自室に戻ったかと思えば城から外出した。私カエデは主であるカナン様に代わってタルバ様の行動を監視していました。些細なことでもカナン様は知りたがるのです。

 仕方なく今日も不本意ながらタルバ様を監視することに。自室は流石に掃除程度で監視はしないですが、この城においてタルバ様の行動は一大ニュースなのです。一つでも誰も知らないタルバ様の情報を握れればあの三人やカナン様にすらイニシアティブを持つことが出来る。


 私の場合カナン様に幸せになってほしいだけですが。


 さてさて、タルバ様が城の裏手に行きましたね。何をなさるおつもりでしょう。普段よりも真剣な表情で落ちている岩を見繕っております。何やら手になじむ岩を探しているようで、岩を手にとっては放り投げてらっしゃいます。


 私は将来の魔人王がどのような鍛錬をされるのか気になってしょうがなくなっていました。遊びでしたらタルバ様は魔法で幾らでも遊べるはずです。わざわざ物質に拘るということは鍛錬ではないかと推察するのはおかしな話ではありません。


(??????????)


 タルバ様は両手に丁度良い大きさの岩を持つと地面に置きました。そして四つん這いになる両手を岩の上に乗せて握っては開くことを繰り返しております。地面に向き合う表情は真剣そのもので、魔力は使用していないようです。猶更意味が解りませんね。


 何度も握っては開くことを繰り返している間、思案している様子でした。これはもしかすると使命に関りがあるのやもしれません。かと思えば鼻の下をだらしなく……それは失礼な物言いでした。訂正します。地面に付きそうなほど鼻の下が長くなったかと思えば岩が砕け散りました。


 私は一瞬の出来事だったせいで、タルバ様の伸びる鼻の下にしか目が行きませんでした。岩がなぜ砕けたのか、そして砕けた岩を見ながら独り言をブツブツ呟いているタルバ様はまた岩を拾って同じ鍛錬を繰り返しました。


 タルバ様……どうか、どうかカナン様の前でそのような奇行はおやめください……カナン様でなくても引きます……。出来れば我々の理解が追いつく範囲内で行動していただけると……。


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