17.紛糾する貴族
レイベルは王宮にある自室で『報老』から提出された報告書に目を通していた。
ヴェルフ帝国が侵略した元ベゼル王国の街ドーガ。この地から南下した場所にあるミッド大山脈との間に異常事態が発生した。
『報老』の報告では呪われた血の海と呼称され、帝国側も不用意に近づくことが出来ず、なぜこのような事態になっているかも把握できていないとのこと。帝国には『過去視』がいるはずだが把握できていないことに不信感を覚える。
不自然で不可思議な出来事だ。もしや帝国がガセの情報を流しているのかと勘ぐるが近づけないという点から事態の対応が後手に回っていることは確実そうだ。
「次から次に……もしかしてタルバが関わっているのか?」
レイベルは恩人を思い返していた。ヴェラゴが示した人外の可能性。それは否定しきれないものだった。だからこそ、『過去視』がもしも見れないのであれば人間以外の可能性を追うしかない。
「魔人がまた起こしたにしては被害者がいないのか?それに真っ黒い血?」
報告は断片的で詳細はまだこれからだろう。帝国の対応が気になるところだが、こちらも座して待つことは出来ない。我々はタルバ奪還のために水面下で動く。それは決定している。
幸い私は王族という立場があり、ウィンティにはロード公爵家がついている。加えて、ヴェラゴにレルバ、紅、そしてザクスとこの国が誇る最高戦力を動かせる。
「誰が適しているか。レルバと紅よりも帝国とぶつかっても生還するのはザクスか」
手をこまねいては機を逸する。決定までの速さが時には求められる。
私はザクスを調査に派遣することを決定した。
紅茶に口をつけながら遠くの空に心の憂いを投影した。
――――――――――――――
急な呼び出しをされたザクスはレイベルからの依頼を冒険者ギルドで受けていた。内容は極秘とされた。冒険者ギルドの【遮音】がかけられた部屋で説明を受けたザクスは野生の勘が効いたのか話を聞いた直後に王都を出発した。
ザクスは己のありあまる体力と筋力を存分に駆使した。更に【身体強化】で全体的なフィジカルを向上させる。そんな彼が全力で走れば魔法や弓矢よりも早い。遠距離攻撃が発生してから全力でダッシュしたとしても逃げ切れる。
街道を走れば道が崩壊してしまうと思い、平原を駆けるようにしたが巨大生物にでも踏まれたように抉れた大地はザクスの膂力が尋常でないことを示していた。知らない人間が見れば周囲を警戒せざるを得ないだろう。
(帝国の調査が入る前に調査しなければ……手を加えられると面倒だ)
レイベルからの依頼を聞いてタルバ関係だとはすぐにピンときた。話を聞いていくに連れて一刻を争う事態ではないかと思った。俺がちんたら話を聞いている間に帝国は調査のために人員を派遣している。
彼らが特殊な細工でもしてしまえばベゼル王国側としても俺としても何が起きたかを精確に把握する術がなくなる。
やっと見つかったタルバに繋がるかもしれない情報は金塊よりも価値がある。
自分が憧れた英雄が生きていればそれでいいとは思っていた。無理に連れ戻すことは自由を重んじる冒険者としてやってはならない。
かといって救国の英雄が世間に知られていないまま死んでしまうなどあってはならないとも思っていた。無欲なタルバだが個人的にはもっと認められていいと思っていた。
(まだタルバの名声は本来の功績と見合っていない。もっと誰もが尊敬する存在になってもらいたいところ。そのために彼の敵を討たなければならない)
実のところ俺は一緒に旅が出来る思って嬉しかった。そのために王都にある所有しているものを全て引き払った。身一つでどこへだって行けると示したかった。
タルバはきっとどこかで俺と別れるつもりだったろうな。彼は自分の力を示すことに消極的だ。ある意味隠れた英雄としての生き方を選択している。
だが逃げ回っているということはそうもいかなくなってしまったことの証明だ。それの原因もヒルドで国や仲間を救うためだったのだから面白い。
逃げて隠れていても誰かを救える力があるのなら行使する。古の勇者のような心の持ち主だ。
そんな考えは俺にはない。この世は弱肉強食だ。実力があるやつが生き残る。みだりに助けても助けた先が無くて死んでしまうなんてよくあることだ。これは冒険者に限った話だが、タルバはそう考えないらしい。
一度のヘマが死に直結するからこそ、その死線を数多くこなすことで抜け目のない冒険者にでも育てていたのかもな。2等級の紅やレルバもタルバのことを知っていたようだからヒルドではある種有名だったのだろう。
有名になりたくないくせに一部からは支持されているなんて矛盾を抱えるタルバは変な男だ。そんな男に憧れてしまった俺もまた変人なのかもしれない。
苦笑しながらも酔っぱらってカジノへ消えていくタルバを思い出す。普段は強くは見えないしダメ人間の代表みたいなところがある。ゲルニーツァに下痢の雨をまき散らしていたのも含めて周囲を巻き込む。
巻き込まれた側としては大層迷惑この上ないのだが、どこか憎めない。手を貸したくなる人徳というか人間性を備えている。それにタルバは情けないからこそ親しみを覚える。
タットルンを越え、ヒルドを越え、ミッド大山脈をひょいひょいと登る。月日が経ったからヒルド辺りまでは雪はもう溶けていた。ミッド大山脈に入るとき、倒壊した家が出てきたがもう誰も住んでいないゴミの山だった。
ミッド大山脈には標高の関係もあって雪が残っている場所がぼちぼちあった。それでも1等級冒険者の足は止まらない。常に前進して目的地を目指す。
異常は視覚的にも嗅覚的にも感覚的にも気づけた。
ミッド大山脈を少し下り、ドーガ方面に歩いた場所には大きな開けた場所がある。そこはタルバの巨人討伐が行われた時から木々がなくなっているのだが、そこにはどす黒い墨汁の大地が広がっていた。
サイズとしては広めの湖くらいある。自然豊かな場所に突如広がる黒い大地。異臭を放ち、肌感覚的に呪いが関与していることは明白だ。このおぞましい不快な気分にさせられるものはそう多くない。
「この黒い液体はなんだ?臭いけれど……呪われている?既視感があるのは気のせいか?」
既視感の正体はゲルニーツァでのタルバの下痢の雨だ。あれは水に異臭が含まれるという呪いだった。だがあれは元は水だ。こんな真っ黒い液体ではない。それにあの時の水よりも酷く鼻につく。
「それになぜ動いているんだ?意思を持っているかのように黒い範囲内を動いている……」
そう、この黒い液体は動いている。俺は黒い円の範囲外にいるから近寄ってこないようだが、この黒い範囲内はこの液体のテリトリーらしい。呪いの液体を触りたくはないため距離を取ってみるしかない。
「これはタルバの力に似ているが、似て非なるものだな。となると……タルバの同族が使った可能性が高い。同族なら似た力を持っていても説明がつくからな」
俺は能力ではなく別の力だと予想。タルバも似たような力を有していたのだから同族ならそういった力を所有していてもおかしくない。ましてや魔人という存在なら尚更ないとは言えない。
小石や木の枝を投げ入れても何も起きないが蠢く不気味な呪いの液体はどう対処していいか判断に困る。
そんなことで思案していると遠くから帝国軍が接近しているところが見えた。明かりを照らしてこの場所に一直線で向かってくる。
どうやらタルバの敵は帝国も手中に治めているようだ。それは政治力や影響力は単純な戦闘力とは比較にならない。複数の物差しで図る力の総合力で敵はタルバを追い詰めているみたいだ。
拳を握り、ボキリと鳴らしながらひとまずは帝国兵の殲滅を決意。レイベルの言っていた穏便にとは行かないが、1人も生き残らなければ俺がやったことを証明するのは帝国の『過去視』くらいのものだ。
憧れの英雄は今も戦っているのに平和的な解決に縋るようじゃついていけない。久し振りに派手にやると決め、俺は帝国兵に真っ向から向かっていった。
――――――――――――――
ベゼル王国では貴族たちによる議論で白熱していた。
議題に上がったのがタルバという男の名声についてというおおよその貴族家当主達は知らない男のことだった。
しかし貴族たちを集めた張本人がベゼル王国第一王子レイベル様、そしてロード公爵家長女ウィンティ=ロード様だったことや王に新年の挨拶を行うために王都へ貴族たちが集まっていたこともあいまって渋々参加を了承していた。
レイベル様より議題に挙げられたタルバという男は貴族たちにとっては無名の冒険者という印象だった。一部を除いて。
顕著な反応を見せたのはガナーシュ辺境伯とシャベック伯爵だった。ヒルドやタットルンを治めるガナーシュ辺境伯と帝国に領地を奪われてしまったが以前はドーガなど帝国との水際を任されていたシャベック伯爵はどこの馬の骨とも知らぬ男と接点がある様子。
両当主はどちらも長く貴族家の当主を務めておられる。そのためこのような言葉一つで動揺するなど本当ならありえないのだが、この冒険者は例外のようだ。
長いひげと禿頭が特徴的ながっしりとした長身のガナーシュ辺境伯は口を固く閉ざしている。丸っとした体型できのこのような髪型の中年でお腹が出ているシャベック伯爵は脂汗がぼたぼたと垂れている。
「どうやらガナーシュ辺境伯とシャベック伯爵はご存知のようですな!」
どこからか彼らの反応を追求する声が上がる。貴族は表面上の見え方を鍛えられている。どれだけ言葉を投げかけられても動揺を見せないことが肝要だ。どのような関係をお持ちなのか、とても興味がある。
レイベル様もウィンティ様もガナーシュ辺境伯とシャベック伯爵のお言葉を待たれているようだ。
額に汗がうっすらと浮かんだガナーシュ辺境伯は眉間に皺を止せながら疑問の答えを口にした。
「事が複雑ゆえ、端的に話すことが難しい。だが私とシャベック伯爵はこの冒険者を知っている。そして結果として我々は――彼の冒険者としての功績を剥奪した」
うつむいたシャベック伯爵は顔色がすこぶる悪くなり、ガナーシュ辺境伯も悔恨の表情が見える。
「どういうことだ!」
「冒険者の功績を剥奪しただとっ!冒険者ギルドが黙っていないだろう!」
「そのようなことをすれば我が国から冒険者がいなくなるぞ!ことの重大さがわかっているのか!」
王宮内の議場は大荒れだ。それもそうだ。冒険者は依頼を受けて仕事を行う。つまり依頼者と冒険者がいる。先の言葉からしてこの冒険者は依頼を達成したにも関わらず、功績を奪われたということだ。
冒険者ギルドは冒険者を管理するためにある。それは冒険者という根無し草の職業が不当な扱いを受けないためでもある。依頼は当然冒険者ギルドを通して受注するため、今回のことは貴族と冒険者ギルドが結託して行ったということか!
「静粛に!ガナーシュ辺境伯、私が彼の説明をする前に自分で説明をするがいい。私は全てを知っているため、貴殿を責めるためにこの話をしてるわけではないということは言っておこう」
「お心遣い、痛み入ります。少し長くなるがレイベル様が議題に挙げた以上、話すときが来たということか。あれは――」
ガナーシュ辺境伯の語ったタルバという男が何者か。それは『不死身の英雄』の話によく似ていた。ベゼル王国より発行された2人の冒険者の話。他国にもコアなファンがいる王国内で知らない者はいない物語だ。
1等級冒険者『怪物』ザクス=ルードもこの本を読んで冒険者を志したことも併せて知られている。
ガナーシュ辺境伯はこの物語は架空のモノをモチーフとして作られたと昔話していたが、実際に起きた事件を題材に作成されたこと、そして『不死身の英雄』の男冒険者こそがこのタルバという男だという。
当時の状況は帝国の間者が巨人を召喚、ガナーシュ辺境伯がシャベック伯爵を襲撃したように見せかけた。ガナーシュ辺境伯は迅速に対応したが紅とタルバに依頼をしたそうだ。
当時の冒険者や軍が連携を取らなければ勝てないほどの力を持っていたという。魔法が効かず、高い再生力と鋼鉄のような皮膚を有していたという。そして大剣を振り回したようだ。
物語のように紅が主力として立ち向かっていたのだが、紅の戦闘スタイルは手数で勝負するタイプで巨人とはすこぶる相性が悪かったそうだ。
そんな時に立ちはだかったのがタルバだった。どれだけ攻撃されても一度も倒れることなく戦い続け、驚異の粘り強さを発揮して常に攻撃を受け続けたらしい。嘘臭いがレイベル様やウィンティ様も頷いていることからこれは真実のようだ。
信じがたいがな。
そしてガナーシュ辺境伯に組織された討伐隊が到着し、タルバが巨人の攻撃を全て捌きながら紅と討伐隊は魔法で倒しきったという。そこで私はこれがどれだけひどい仕打ちかに気づいた。ガナーシュ辺境伯たちは巨人を足止めし、最前線で命を懸けて戦い続けた男から名声を剥奪したということだ。
これだけの化け物を相手取れば冒険者としての格が一つも二つも上がる。等級に直接的な影響はなくとも、貴族からの覚えはよくなり安定した生活の道が開ける。場合によっては貴族に召し抱えられることもありえた。いや、これだけの男を雇おうと考えない者は貴族ですらない。
1人で異常な強さを誇る巨人を真正面から相手出来る冒険者は1等級くらいのものだ。
「最大の功労者ではないか!なぜだ、なぜそのようなことを――」
「いいたいこともあるだろうが、辺境伯の話を最後まで聞いてほしい」
護民派の貴族から怒り心頭の声がつい出てしまったようだが、レイベル様はそれを制した。話は最後まで聞かねば判断できないこともある。
ガナーシュ辺境伯は功績を剥奪した時のことを話した。表沙汰になれば巨人のことで辺境伯と伯爵の良好な関係性に波風が立つ。帝国が今回のことを仕掛けてきたこともあってここで当主同士はともかく領民たちの関係が悪化することは避ける必要があった。
だからといってタルバに報酬を与えないことや彼の功績を奪うなどは以ての外だった。帝国に対して対策を講じるのは貴族の役目だからだ。
ガナーシュ辺境伯の言葉に私は耳を疑った。タルバ本人から褒章の類を一切受け取らないことを進言したという。それはできないと辺境伯たちも申し出たが本人がこれを固辞。頑なに貴族から与えられるものは受け取らなかった。
彼が貴族を嫌っているようには見えなかったという。報酬の代わりに彼から頼まれていたことがあった。それは今回の件に自分が関わったことを内密にするというものだった。
ガナーシュ辺境伯としては彼からの頼みで功績を奪うような形になってしまったということらしい。シャベック伯爵やレイベル様、ウィンティ様も否定しないことからこれもまた事実のようだ。
「さて、ここまでは話の前提に過ぎない。ガナーシュ辺境伯らの決定は本人の意向であったと冒険者ギルドでも記録があった。これを咎めるために開示したわけではないことを承知してもらおう」
「今回の議題はタルバ殿の名誉回復をすることです」
レイベル様の言葉に続いて、ウィンティ様が今回集めた理由を話す。
「タルバ殿は冒険者証を不正利用されており、行方不明になっております。恐らくは死亡していることでしょう。そのため彼の名誉のために我々は早期に手を打たねば彼の過去を知るものが口を開いてしまえば王国から冒険者が失われることになります」
ウィンティ様の話したことはベゼル王国が立たされている現状がまずいことを示した。それもそうだ。世界で有名な物語の主人公が実はいて、死亡するまで与えられるはずの栄光を奪われていたと内情を知らぬ者は解釈する。それにそっちの話の方が感情を刺激するし、受け入れられるだろう。
人は真実よりも自分が信じたいことを信じる生物ではあるからな。
議場を包む沈黙が問題の複雑さを表している。レイベル様とウィンティ様はタルバという男の名誉を今からでも回復させなければ王国は苦境に立たされることを示した。だが待ってほしい。タルバが報酬を固辞したのは冒険者ギルドが知っているはずだ。名誉など回復しなくてもいいのではないか?誤った情報ならば冒険者ギルドも正すはずだ。
私は純粋に聞いてみることにした。
「発言よろしいでしょうか?」
「なんだ」
レイベル様の視線が向くとついびくついてしまう。王族は何度会っても怖い。
「冒険者ギルドが固辞したことを把握しているのであれば誤った情報が出れば正すのではないでしょうか?そうであれば今まで通りでもよろしいのではないでしょうか?」
「残念だが、彼の功績はこれだけではない」
レイベル様から追加の爆弾が投下される。巨人討伐だけではないだって?確かに巨人と張り合える冒険者がこれだけの功績なわけがないか。
冒険者をやっていれば普通の平民よりも戦闘を行う機会もある。それは当然活躍のチャンスも多いわけだ。それなら巨人以上の功績があってもおかしくな……待てよ?じゃあなんで私は彼のことを知らないのだ?
巨人討伐に関しては緘口令が敷かれただろうことは理解した。でも他の功績は知らないぞ?他の貴族の反応からしてまた彼は奪われたということだろうか。
「レイベル様、こういっては悪いとは思いますが、彼を祭り上げるのであれば生きている他の者を祭り上げるべきではありませんか?その策であれば生きた英雄としての宣伝効果も高く、国内外の影響力も持つことが出来ます」
あれは貴族派の者たちだな?やつら平民をゴミとしか思っていない連中だ。
ついでに頭も悪いやつらだ。他人の功績だと王国が言ったところでギルドが把握しているんだから嘘でしかないだろう。やはり馬鹿か。レイベル様もウィンティ様も凄まじい形相で睨んでいるぞ。
あいつら死んだわ。絶対。関わらないようにしなくては。
「前提として冒険者ギルドが把握しているため、他人を擁立することは不可能だ。それに彼の新たな功績がベゼル王国に与えた恩恵が大きく、いずれ彼の過去も開示されてしまうだろうと考えてのこの議会だ」
「おおっ、それは失念しておりました。それで彼の新たな功績とは?我々は最近領地から王都に来たものおりますので残念ながら彼の功績を知らないのです」
「知らぬのも無理はあるまい。私の独自調査で最近まで私も知らなかったのだからな」
「では対した功績ではなかったのでは?」
「その逆だ。あまりに大きなことだったからこそ私たちは気づけなかったのだ。そしてそれは水面下で行われていたことから知る者はほとんどいない」
レイベル様は貴族派たちに話を遮られないよう続けて話した。タルバという男は数か月前に起きたヒルドでの帝国が引き起こした事件を解決に導いたという。ただそれだけではなかったらしい。
ドーガが既に攻め落とされていたため帝国軍はヒルドに向けてミッド大山脈を越えようとしていたそうだ。タルバはヒルドでの帝国兵たちを殲滅するとともにミッド大山脈の山頂を攻撃。雪崩を引き起こして帝国軍約2万人を死傷させたとのことだ。
それに彼がミッド大山脈に攻撃を放つ映像が冒険者ギルドで複製され各地に届けられているようで、帝国側はこのことを当然把握している。
帝国には『過去視』と呼ばれる過去を見ることが出来る能力者がいるためベゼル王国が結果的にタルバに行った功績の剥奪も知られることだろうとレイベル様は予想していた。そうなると国際関係上でのベゼル王国の立場が揺らぐ。
だから彼の功績を取り戻すべきだという結論に至ったようだ。
「我々には選択肢がもはやない。やらなければこの国は帝国以外の他国にすら攻め入る理由を与えてしまう。それは避けねばならない。よってこれは相談でも議論でもなく決定とする」
レイベル様は最初から名誉回復を行うことを決めていたようだ。王族の言葉は神の言葉として扱わねばならない。レイベル様が決定したのであれば異は唱えられない。貴族派もこれにはだんまりだ。
後方で議論の行く末を見守っていた王様はレイベル様の強硬な手段に驚いて目を見開いている。もしかしてレイベル様、お父上様にお伝えしていなかったのですか?レイベル様が御父君をよく思っていないという噂は本当なのかもしれない。
私はただの貴族の1人として中立でいよう。
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