↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
へっぽこ魔人生  作者: 岸辺濫瀟
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/104

13.テスト後

 数分ほどボケっとしていたタルバは血まみれの自分の姿を見ながら服が血で張り付いていて不快感に包まれていた。

 ハイの状態が途切れ、十分に血が供給されたことにより冷静な頭で惨状を見渡していた。


 人間の肉片や部位が転がり原型を留めている部分が少ない。果肉たっぷりのジュースを零したみたいな転がりようだ。人間をミキサーにかけるとこうなるのかもしれない。


(これを本当に俺がやったのか?うまくいったってことでいいんだよな?)


 大した器ではないことから自分がやったことか疑いが残るタルバ。記憶では確かにやったし、そうなるように操作したが視界不良で決定的瞬間はよく見えていなかった。


 それに自分が血に溺死しないように周囲に血で埋め尽くさないようにしていたから血でよく見えていなかった。


(確証が持てないな……それに頭と胴体がくっついているやつがちらほら見える。確実性が求められるのだから、ここはやるしかないか)


 タルバは剣に血を纏わせ、頭と胴体がくっついている人間の遺体を一つ一つ丁寧に切断し始めた。スパスパと切れる人間の体。まともな抵抗も出来なくなった彼らは雑草でも毟るかのように一人残らずバラバラになった。


 10分もしないうちに全ての死体が出来上がる。どれも頭と胴体は分かたれていた。血塗れのタルバは上空で高みの見物を決め込んでいるであろう魔人たちに向かって上昇した。


 冷静な状態であってもタルバの心境としては疲労があった。このテストで多くの人間を殺害しなければならなくなった。それは創造神様からの神命があったが、テストがなければこんなことにはなっていなかった。


 タルバは魔人たちを一度見回してただ一言呟くように言った。


「も(・)う(・)い(・)い(・)か(・)?」


 その言葉には底知れない暗い感情が込められていた。タルバよりも長生きをしている魔人たちがつい視線を逸らしてしまうほど黒く重く冷たい感情。嫌悪、侮蔑、冷淡といった言葉では言い表せないプレッシャーがそこにはあった。


 心理状態で言えば、フロー状態。スポーツチックにいえばゾーン。無駄を削ぎ落したが隠しきれない感情が乗せられた言葉だった。


 タルバが言葉を発してから普段はにやにやしているヘクターやイフィンティブでさえも言葉を失った。何か話さなければならないとわかっているのに、脳が言葉を失ったように言葉の話し方を忘れていた。口からは意味の無い音しか出なかった。


 そんな中、口を開いたのはカナンだった。


「タルバ様、お疲れさまでした。後のことはこちらで処理しておきます」


 カナンがなんとか魔人を代表して発した言葉を聞き、タルバは翼を翻して自分の居城へと帰還するのだった。


 タルバの従者も遠くから魔人たちのやり取りを見ていたが、尋常ならざる主の様子を見て能力を用いて早急に対応するように動き始めた。


――――――――――――――


 タルバ殿が離れた後、魔人たちのざわつきは過去一でした。

 それもそうです。自分たちが見極めるはずの相手が逆に自分たちを罠に嵌めたのです。


 タルバ殿という魔人が他の魔人とは同列ではないことがテストをもってして理解できてしまいました。二手三手と先の手を読むことは私、知恵神の魔人サジェスも得意としております。本質はそこではないのです。


 彼は作為的に他の魔人たちに自分の権能がどのような力であるか開示しなかった。それは彼が今後対立した際の切り札を隠し持っている状態を意味します。

 問題は彼の使命がどのようなものであるかです。


 創造神様が魔人を作成しなかったのは下界に干渉する必要性がなかったからです。今の世界には創造神様が対応しなければならない事象があり、そのために彼が遣わされた。もしもそれが我々魔人の行いが足りないのであれば、創造神様が魔人や他の神を見放し始めていることになります。


 創造神様は何度でも世界を作り上げられるでしょう。いらなくなれば作り直せばいいのです。

 今回のタルバ殿の対応でタルバ殿という創造神様の魔人が他の魔人に対して警戒していることが現れていた。


 そして観戦していた魔人たちに対して一言だけで格の違いを見せつけられました。誰もタルバ殿に声をかけられず、カナンだけが辛うじて声を発しました。

 魔人たちは侮っていたのです。創造神様がわざわざ手ずから生み出すことにした魔人が従来の魔人と同レベルなわけがありません。


 タルバという男性がアステールのテストを受ける要求を飲んでいたことやイフィンティブやヘクター、イグニストゥスが知っていたことからどこか新参者として舐めて扱っていました。それは私も同じです。


 相手は創造神様の願いの結晶。世界の理を作る創造神様であればこの世界にいながら世界の理外の存在を生み出せる。彼は恐ろしく狡知な男性です。同時に世界を騙す希代の詐欺師かもしれません。


 ありえないほど誘導されたように軽視していました。

 創造神様の魔人であることは承知していたにもかかわらず、一度も誕生しなかった創造神様の魔人であるにもかかわらず、神の中でも明確に最上位の存在が生み出した魔人であるにもかかわらず、です。


 雰囲気?言動?態度?どれをとっても自然体でまるで猛獣の檻に閉じ込められた羊のように消極的な装いをしていた。彼の功績について知らなかったにせよ、彼が本来どのように扱われるべきかは心得ていました。


 アステールはまだ忌々しく戦場跡を見ていますが、ここで自分の身の振り方を考えねばなりませんね。魔人の中にもタルバ殿をよく思わなかった魔人もいました。それは新しく魔人になった魔人たちでした。

 アステールやアックア、グラヴィタ、そしてアタナシアだ。この四名は人間だったころ、貴族や上位の聖職者、街の権力者だったものだ。グラヴィタは毛色が違いますが彼らは等しくタルバ殿が魔人の王になることを拒んでいます。


 グラヴィタ以外は自身が王になりたいという欲求があるようです。グラヴィタは全員に等しくチャンスが与えられることが公平な決定だとして拒んでいるようですが。


 マルスやテッラ、ロークは中立の立場を取るかと思います。彼らは王には興味がありませんから。マルスは権力欲よりも戦闘欲のほうが強いですしテッラは楽しい生活至上主義です。戦闘は必要に応じてと過去に言っていました。

 ロークは運命がどのように動くかに興味があるため、当事者になってしまうと自身の行動が運命に影響を与えてしまうため何にも肩入れしない傾向があります。


 タルバ殿の勢力としてはカナン、イグニストゥス、ヘクター、イフィンティブの四名。人数としては同数ですが、実力としてはタルバ殿が優勢でしょう。彼らは全員魔人大戦以前から魔人として君臨していたのです。


 実力差は歴然。だが我々は愚かなことに戦力差があるからと言って戦わない理由にはならない。自分の主張を通すためには勝ち取るほかない。アステールが実験を通して魔人の力を人間に発現させたことからこれ以上の研究でタルバ殿陣営を打ち負かす計画は着々と進むでしょう。


 ただ、タルバ殿がみすみす見逃すとは思えないです。魔人大戦が再発してしまえば今度は以前の比じゃないでしょう。


 対タルバ、対カナンへの対策を本格的に進めていればタルバ殿の陣営が一方的に優勢とは思えない。だからといってアステール達に勝ちの目は少ない。どちらも完全勝利はないとなると消耗戦か。


 勝機を分かつ要素は作戦と今後の準備。私としては中立でいたいものですが、流れによっては力を貸しましょう。私にも使命があるので……


いいね、高評価、ブックマーク登録をしていただけると励みになります。


少しでも面白いと感じていただけましたら☆☆☆☆☆を★★★★★に変えていただけると大変うれしいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。