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へっぽこ魔人生  作者: 岸辺濫瀟
第4章

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6.力と城

 エルフの秘宝、《ウォラキアの指輪》。その能力は相手の本質を見抜く力だ。発動すると光の線が伸びて対象に接触し、対象の情報を入手すると赤い線になって指輪に戻ってくる。タルバは自分自身をもっと知るために、自分に向かって使った。


 自分の能力はともかく、魔人としての力はどうやってもわからない。翼や尻尾など肉体変化を出来る時点でもう完全な魔人になったといえる。だったらイフィンティブのように魔人としての何かしらの力が備わってもおかしくないと考えたためだ。


 《ウォラキアの指輪》から光のディスプレイが出現し、自分自身の情報をリストで表示する。


タルバ=ゼノ

身長173cm

体重70kg

年齢30

異名『不死』『光芒』『銭湯王』『戦闘王』


来歴

****により秘匿されております。開示するには上位権限が必要になります。


加護 世界

****の加護。弱者の心情を理解するために本来得られる強さを制限し、一定以上の強さを得られないよう制限している。魂に与えられる加護のため、輪廻転生の輪に戻るまで永続する。


能力 圧縮

存在を圧縮する能力。対象と位置が重なることで魂にアクセスし、対象の詳細なサイズを把握、その後魔法や物体問わず圧縮することが可能。相手が幽体などの物理的な存在でなくとも対象とすることが出来る。全体を均一に圧縮する以外に一方向にのみ圧縮することで対象を押し出すことが出来る。正確な位置、サイズがわかれば触れる必要はなく、遠距離でも発動可能。


権能 光

自身の肉体を光に変化させることが出来る。光の粒子が通れる場所は全て通り抜けることが可能。人間の目を焼き切るほどの光量を瞬時に発生することも可能。ただし殺傷能力は限りなく低く、触れても温かい程度。一点に集約しても外気に負けて温度が下がり、レーザーのように焼くことは出来ない。主な使用目的は松明や閃光弾、透明化。

また光を狙った対象に付与することが出来る。永続時間は込められた魔力が切れるまで。この光は狙った対象に当たるまで追尾する。

光は肉体と同量を自由に使用できるが、光を溜め込んでおくことが可能。太陽光や火の光などあらゆる光を吸収することで莫大な光を使用することが出来る。


使用可能部位

虎

鷹

牛

ハリネズミ

サイ

ゾウ

蝙蝠


(……なんか見たことがないものが多い。異名も増えてるし加護と権能ってなんだ?極めつけに来歴が一つも見ることができないんだが?もしかして……この指輪欠陥品か?)


 表示された魂の情報に納得がいかないタルバは胡散臭いものを見る目で《ウォラキアの指輪》を見つめる。だがどれだけ見つめても表示される情報は変わらない。


 気を取り直して一つずつ確認していく。異名と来歴に関しては今はどうでもいい。一番気になるのは加護と権能だ。加護なんて概念、聞いたことがないぞ。教会で祈れば神のご加護がありますように~と言われるが、その加護なのだろうか。


 とはいえ、内容は俺にとってかけらもメリットがない。加護なんて言わずに呪いと言った方が正しい効果だ。道理で魔人になっても強くならないわけだ。イリムから聞いた話が真実なら魔人は魔王と同格レベルの強さを持っているはずだ。元々そこまで強くない俺でも1等級冒険者と張り合えるくらいには強さを得られてもいいとは思っていた。

 この加護が邪魔して俺は力を得ることが出来ない。漠然と感じていた違和感の正体はこれだったのだ。


(かといって魂に付与されているのだから、どうしようもない。これを外せるのは神様だけなんだろうな……)


 違和感の正体に気づけたところで解決手段はない。神様に祈って解除してもらえるなら恐らく最初から付与なんてしない。つまりは祈っても無駄だ。もうこればっかりは諦めるより他なさそうだ。


 だが俺が求めていた情報はある。権能だ。魔人としての俺の力。イリムの話では魔人にそれぞれ与えられる固有の力。期待を膨らませて読み進めるが、期待の風船は穴が空いて萎んだ。

 なんだこの戦闘に役立たない権能は。光ってもっと強力な力じゃないのか?主な使用目的が松明か閃光弾って舐めてんの?誰だよこの権能作ったやつ。俺の期待を返せ。しいて言うなら透明化は当たりだ。


(とにもかくにも試してみれば何かわかるかもしれない。肉体変化と同じくイメージすればいけるのか?)


 タルバはさっそく右手の人差し指を光に変えるイメージをしてみる。するとイメージ通り右手の指先は光に変わる。テントに落ちていたハリネズミの針を当ててみると針を回避するようにすり抜けた。元の指をイメージすることで元の指が復元される。


(この権能を使えば攻撃が当たらないのでは?)


 今度は左手に火魔法【火球】を限りなく小さく出して光の指に近づける。近づけながら熱さを感じ、接触させると火傷した。魔法は効いてしまうようだ。


(あれ?物理攻撃しか回避できず、いちいちイメージしなきゃ光に出来ないなんてめんどうじゃね?それに攻撃能力がないって致命的な気がする)


 一応《ウォラキアの指輪》に書かれていた光を飛ばしてみたり、追尾するかを確認したが説明通りの性能だった。この権能は本来はとても強力な力だが、加護のせいで強さを制限されたと信じたい。そうじゃなきゃ元の種族を捨ててわざわざ魔人になってこんなゴミ権能を押し付けられる俺の立つ瀬がない。もう涙が出そうだ。


(前向きに捉えるならどんなところにも潜入できる力を得たと思えばいいのかもしれない。でもこれじゃ戦争は止められない……)


 当初の目的だった戦争を止めることがこの力では難しいとわかった。タルバのイメージとして強力で圧倒的な権能を獲得し、第4勢力として戦争に武力介入をすることで共通の敵となり、戦争を強制的に終了させるつもりだった。それが一番被害の少ない方法だとうっすら思っていた。


(どうする俺。大して賢くない頭をふり絞って考えるんだ……!もう時間はすぐそこまで迫っている。明日に開戦されてもおかしくないんだぞ!)


 悶々と頭を悩ませて全てを解決できる完璧な作戦を考える。けれどタルバはそこまで賢くない。ヒルドでの一件も王都でもゲルニーツァでも自分に都合よく事が進んだだけで、最初から計画通りに行った試しがなかった。


 考えても時間は過ぎ去る。タルバは一旦考えるのを辞めた。


(考えてもしょうがない。人間の街に潜入して人間側からみた事情を把握しなければならない。そこで初めてこの戦争の原因を突き止めることができるはずだ)


 タルバはテントから這い出て周囲に人がいないことを注意深く確認し、蝙蝠の翼を生やして飛び立った。


――――――――――――――


 空を飛行するタルバは山の頂上にはそぐわない城のような建造物を見つける。人間の街に行くにはまだ寝静まっていないと判断して、寄り道することにした。


 山の頂上に降り立つと立派な廃城がそびえ立っていた。三階建てで空中から見る限り尖塔が四隅に配置され、中心に三角屋根の大きな建物が建っている。


 入り口は巨人も通れるであろうサイズの巨大な石造りの門と同じ素材で出来た門扉だった。城門の門扉に近寄って見るが、開け方が皆目見当もつかない。大理石に似た石で出来た城門は人間社会で作成できるような代物でないことをまざまざと見せつける。この門と城のある位置から人間、エルフ、獣人といった普通の存在では作成できないと感じた。


 何気なく門に触れた瞬間、門扉が輝きだす。真っ白く発光したかと思えば、門扉の中央に太陽と月が隣り合ったシンボルが映し出される。そして城側に向かって観音開きされ、門扉が開いた。


(??????)


 タルバは疑問符で頭がいっぱいだ。ただでさえ慣れない頭脳労働で疲労していたことに加えて目の前の廃城の門扉が開いたのだ。もう人知の及ばない場所に足を踏み入れている気がした。


(まぁ、いっか。開いたんだしなるようになるだろう)


 タルバは城内に入城した。門扉を潜った直後、地面を擦りながら門扉は閉じてしまった。最悪空を飛べば大丈夫だという安心感と生物が住むことが出来ない環境だという思い込みで中央の建物に入っていった。


 城の中は質素だった。特別な装飾はなく、真っ白で1階は部屋がキッチンや図書室、武器庫に浴場といった生活に必要なものであったり、物の保管庫という感じだ。ただし各部屋には大した物が置かれおらず、図書室といっても本が10冊あるだけだったし、武器庫も錆びついた剣や槍しかなかった。浴場は広く銭湯のように体を洗う場所と浴槽が配置され、外に抜ける通路を歩いてくと露天風呂があった。これだけでもタルバの心は湧きたった。


(どこの誰が作った城かはわからんが、露天風呂を作るなんてわかっているな!城主とは仲良くなれそうだ)



 不法侵入している癖にどこか上から目線なタルバだった。1階の探索を終え、2階に上がる。城内の階段は全て螺旋階段になっており、場所を効率よく使っているみたいだ。1階とは異なり、2階はボロボロだった。窓に取り付けられたカーテンや各部屋の扉、廊下に敷かれた絨毯などどれをとっても荒らされたという言葉が良く似合う。

 斜めに切断されたカーテンなど明らかに人為的な攻撃で切り裂かれたとしか思えない。1階とは真逆の廃城らしい姿がそこにはあった。


 試しに一つ部屋に入ってみるが、壁紙は剥がれ、クローゼットは扉が破壊されている。ベッドには木の板が放置され、埃が溜まっていることから長らく誰も訪れていないことがわかる。


 調度品はどれをとっても装飾が細やかで宝石や貴金属で彩られていることから高価な品であることが見て取れる。割られた窓ガラスから風が吹込み、外気に身が震える。部屋を後にして見て回るも、どこも同じような惨状だった。


 タルバはまた階段を上がり、3階に到着する。3階は1階、2階とは異質な様相だった。城の部屋や廊下は真っ黒だった。部屋の扉に全て魔法陣が刻まれ、黒魔術の儀式でも行われているかと錯覚する程不気味な雰囲気だ。


 明かりもないフロアのため、指先に光を灯して周囲を照らす。床は白い大理石の上に黒い絨毯が敷かれており、ボロボロになっていた2階とは真逆に荒らされた形跡は見当たらない。階段を出た廊下に一つも足跡も埃もなく、綺麗なままだ。

 何も飾られていないことは全ての階共通のようで何もないからこそ規則正しく並ぶ部屋と魔法陣が恐ろしく見えた。


(なんだここは……作ったやつはどんな趣味してるんだよ……真っ黒ってなくないか?)


 タルバは不気味さを感じながらも廊下を歩く。中央に大きな部屋があり、それを囲むように四角く廊下が伸びている。部屋数は12部屋で、どの扉を触っても門扉のようには開かなかった。

 だが最後に触れた中央の部屋への扉は別だった。門扉と同じように太陽と月の紋章が扉に浮かぶと、門扉と同じように自動的に開かれた。


「えぇー……こんな暗い部屋入りたくないなぁ……」


 掠れた声で心情がつい口から出てしまう。怪しさ満点の部屋に入ってもし出られなくなったらと考えて、足が止まる。門扉は空に飛んで逃げるという逃走手段が残されていたが、この部屋に閉じ込められたら逃げる手段は無さそうだ。それに全ての部屋の魔法陣を見てもみたことがなく、異様に複雑なマジックワードが刻まれていた。少なからず現代のマジックワードではないことが確かである。


 以上の点を鑑みて部屋に入らないのもいいと思い始めた。だがタルバは思い出した。自分の体は光に変えられるということを。つまり、入ってしまっても光になって抜け出せば問題ないというわけだ。物理的な肉体の制約から解放されたことを失念して人間の頃と同じように警戒してしまった。


 深く心配する必要がなくなったタルバは部屋に入る。部屋に入ると扉が自動的に閉じた。ここまでは予想通り。入った直後に天上の明かりが灯る。予想に反していたのは部屋の中身だった。タルバから見て左側の部屋半分にはベッドやテーブル、イス、ティーポット、花瓶に活けられた花といった調度品が置かれ、タルバから見て右側には鎧、ブレスレット、義眼、剣、指輪、そして金属製の銀色の心臓が台座の上に置かれていた。


(なんだこれは……やっぱ異世界転生者が言っていたとされる黒魔術の儀式かなんかじゃないのか?)


 タルバは台座に近寄って一番安全そうな剣を持ってみた。正確には持とうとした。タルバが持ち上げようとしたとき、透過するようにタルバの手は剣をすり抜けてしまった。現在タルバは光になってないため、すり抜ける理由はこの剣にあるようだ。


 他の台座の物はどうなるか気になって、一つ一つ手に取ろうとした。鎧、ブレスレット、義眼、指輪は剣と同じようにすり抜けてしまい、持つことも敵わなかった。どうせすり抜けると思いながら、金属製の銀色の心臓に触れた。手が触れた瞬間に魔力が吸収される感覚がした。

 直後、銀色の心臓は俺に向かって飛び込んできた。俺は慌てて回避しようとしたが、俺の胸元目掛けて飛び込み、俺の体内に入っていった。


(どうゆうことだ?なぜ銀色の心臓だけ触ることが出来たんだ?)


 不気味な場所で触ってしまった道具が体内に混入した。きっとそうゆう効果だったんだと思う。今のところ、体に不調はなく先ほどと特に変わった様子はない。


(銀色の心臓はなんだったんだろうな)


 タルバはそう思いながら、台座を見てみる。台座には何か書かれていたようだが、掠れて読むことはできない。タルバはこの台座の道具類を調べることは諦めて、退室したのだった。

――――――――――――――


 城内を散策したことで3時間くらい経過した頃だろうか。飛行時間も加味するとエヴェイユに到着するのは午後22時過ぎになるか。その時間にはもう人々は寝静まる時間で潜入もしやすいってもんだ。


 タルバは意気揚々と廃城から飛び立ち、エヴェイユへと真っすぐにむかった。城に残されたのはタルバが勢いよく翼をはためかせたときの風圧で舞い上がった土煙だけだった。


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よければよろしくお願いいたします。

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