訓練21日目(動く的)
魔法武器の実験も無事成功し(まだ改良の余地はあるが)今度は本格的に魔物相手に弓や投げナイフで戦うことになった。
私の弓や投げナイフの命中率はどちらも既に80%以上なのいつも通りにやれば余裕で倒せるだろう。
先ずは弓矢を用意する。
弓を引いた状態で構えて魔物が出てくるのを待つ。
エリックが魔法でグラスウルフを出す。
エリックの合図で攻撃を開始する。
こちらを向いて警戒しているグラスウルフ。
私は落ち着いてど真ん中を狙い弓を射る。
矢はきれいにグラスウルフに突き刺さる。
しかし一発だけでは倒せない。
グラスウルフは唸り声を上げて一直線にこちらに向かってくる。
思わず逃げ腰になりなんとか距離を取ろうと走る。
勢いよくグラスウルフが噛み付いてくる。
無理やり顎を蹴飛ばして距離を取る。
そしてそのまま上手く弓矢の距離にできずに走り回っていただけで終了した。
「……まあ、そうなるよね。
今みたいな場合なら弓から剣に持ち替えないとダメだよ」
エリックがアドバイスをしてくれる。
弓に集中するあまり剣の存在を忘れていた。
ジャミルは腹を抱えて笑っているだけでアドバイスすらしてくれない。
「……それじゃ次行くよ」
そう言ってエリックはコツバメ(鳥型の魔物)を出す。
先程と同じ様に既に弓を構えていたので真っ直ぐにコツバメに向かって弓を射る。
せっかく狙ったのにコツバメは飛んで行ってしまい矢は外れてしまう。
更に連続で弓を射る。
攻撃の回数が多ければいずれ倒せるだろう。
なぜかジャミルがこっちを見て大爆笑している。
集中できない。邪魔だ!!
今度はコツバメを引き付けてみる。
真っ直ぐこちらに突っ込んでくる。
タイミングが上手く取れずにコツバメの体当たりを腹に受ける。
衝撃で弓を落としてしまう。
アイツ絶対に許さん!
魔物に対して怒りが込み上げるが、今度はなかなか降りてこない。
まるで私を嘲笑うかのごとく優雅に旋回している。
「いいか、ああいう場合は相手の動きを予測するんだ。
ああして動いている間は的が上手く定まらない。
けれども、やつが生き物である限りはいずれ動きを止めるタイミングっていうのが絶対にあるんだ」
ジャミルはそう言ってコツバメの僅かな隙を見て弓を射った。
矢はコツバメの中央にきれいに突き刺さり、コツバメは魔石に変わる。
「いいか?ゼロ!
今のお前はまだまだ武器を使いこなせていない。
命中率がいくら上がろうとも武器に振り回されているようじゃいけねえ!!
武器は所詮道具に過ぎない。
どう使うかが重要なんだ!
今みたいに魔物が来るのを待ってお前が準備万端で構えていても、実戦じゃお前が武器を手にする間も無く容赦なくアイツらは襲って来るぞ!
冒険者として生き残っていきたいのなら常に相手を見て更に見えていない時だって危険を予測し警戒するんだ。
いついかなる時も油断はしちゃいけねーんだよ!」
ジャミルが熱く語る。
それをニヤニヤとして見ているだけのエリック。
……。
……。
「……まっ、気楽にやれや!!」
ジャミルはそう言い放ちどこかへ行ってしまう。
「照れてるね?」
エリックはジャミルの後ろ姿にそう言った。
その後同じ様に今度は投げナイフを使って戦ってみた。
グラスウルフには一撃でナイフが命中しそのまま剣を取り上手く止めを刺すことができた。
しかし残念ながらコツバメには一度も攻撃を当てる事ができなかった。
飛ぶ魔物は苦手だ。




