矢は逆転への黒いかけはし
俺とアルケは、互いに互の隙を伺い合っている。
スナリャト=モシャーがこの隙に攻撃を仕掛けないということは、何かしらの理由、おそらくアルケをコントロールする魔法の制御で手一杯なのだろう。
俺は啓蟲瞳を発動しアルケの精神を覗き見る。
啓蟲瞳は大まかな精神の動きしかわからないが、戦闘ではじゅうぶんすぎるほどのアドバンテージを得ることができる。
アルケの精神がこちらに踏み込み力強く俺を突こうとするのが見えた。
ワンテンポ遅れてアルケが精神と同じ動きで踏み込み力強く俺を突いてきた。
「……っ。」
俺は予測どうり、しかし素早い動きに息をつまらせながら後ろにとび回避し、それと同時に重く肉厚な斧のもはや鈍器とも呼べる刃で糸のように脆く細長い刃を狙い横薙ぎに攻撃する。
しかし、アルケは俺の攻撃に素早く反応しレイピアを斧の軌道からは外れた箇所にうつし、そのあと即座に後ろにとんで間合いをとった。
その後も、同じような一進一退の攻防を何回か繰り返した。
啓蟲瞳による読心だよりの俺とは違い、アルケは反応、瞬発力、体のバランスとレイピアを扱うに重要な能力の質がどれも高く、その剣さばきは本物であった。
(このままでは、埒があかないな……。)
俺はそう思い
バトルアックスの柄の下を握っている手であり、俺の利き手でもある、左手を柄を放し腰にさげたポーチにある投げナイフに手をかける。
アルケはその隙をもちろん逃しはしない。
僅かに間をおいたのち、神速で俺の心臓めがけて銀の細い刃を走しらせる。
(よし!狙いどうり!)
俺はニヤケそうになる顔を引き締めて、細い刃のまっすぐな軌道からはずれるように体を横向きにし、回避すると同時に、すまないと思いつつ容赦なく、アルケの肩を目掛けてナイフを投げつける。
完全に、刺突するポーズになっていたアルケは、反応するものの間に合わず、肩にナイフを受けてしまう。
アルケはその美しい顔を僅かに歪めると大きく後ろに跳び、レイピアを構え直す。
俺も、体のバランスを戻し、バトルアックスを構え直す。
刺さりが浅かったのか、ナイフはアルケの肩から落ち、床当たると同時に静かな金属音が響いた。
アルケの肩は血が滲んではいるが、滴り落ちてはいない。
「ふあははは!!そうやって、ちまちまダメージを与えるつもりだったかもしれんが、これには修復機能がある!そんなくだらん戦法が通じる訳無いだろう!!!」
しゃがれた、やかましい声でモシャーは言ってくる。
アルケを『これ』呼ばわりしたことと、やかましい声にイラつきを覚えそうになるが冷静になるように俺は努める。
アルケは突然また、大きく後ろに跳ぶ。
何を考えているかは知らないが、俺はこの隙を逃さず、アルケを殺さないように斧の刃の部分を上向きにして刃じゃない部分が当たるように、そしてトドメを刺すために両手を持ち手の下の部分に握り直し、前のめりになり高速でアルケの方向に進む。
俺の啓蟲瞳が魔法の紋章を映す、そのあとすぐにアルケは
「沙瓦石」
と澄んだ声で静かに言語行使を行った。
(まずい!!)
俺がそう思うも、時すでに遅しアルケの前にはすでに完成しかかっているカブトムシの角から蛇が生えている紋章があった。
俺が転ぶように横に回避する。
その後、アルケの前にある紋章から黒い光の柱が出る。
すると、その光があった部分が石になってしまった。
転び、倒れている俺にアルケは容赦の欠片もなく、レイピアで刺突攻撃をしてきた。
俺はアルケの攻撃に転がりながら、なんとか回避すると、その勢いを利用し素早く立ち上がる。
アルケは、俺に構える隙すら作らせないほどの、雨の如き連続攻撃を浴びせる。
(……くっ、仕方が無い。)
俺は、アルケの刺突攻撃をわざと、右腕に受けた。
アルケは驚いたように、大きく赤いルビーのような瞳をさらに大きく丸くする。
その隙を、俺は逃さずもう片方の手でバトルアックスの柄をレイピアの細い刀身を叩きつけ、へし折る。
お互いに一瞬の隙ができるため、お互いに後ろに大きく跳躍する。
アルケが何かする前に俺は腰からさげたポーチから煙玉を取り出し床に叩きつける。
辺りに濃厚な煙が充満するが、アルケは気にせず
「空色錬成」
と言い出てきたレイピアを手に取り構える。
その頃には煙も晴れ視界が良くなっている。
アルケは隙だらけの俺を発見すると勢い良く突進し
銀の細い刃を俺の心臓に突きたて、貫いた、そしてそのため俺の魂は静かに消えてしまった。
「ふえひゃいあへあはははははは!!!!若造風情がワシにたてつくからこうなったんだ!!たがが人形のために死ぬとは、哀れだなぁ~え!!」
とスナリャト=モシャーは歓喜による興奮で顔を最高に汚くして大声で笑う。
「権力と支配欲の操り人形のお前のほうが、よっぽど哀れだぜ、ジジィ。」
俺がそう言うと
「なっ、なっ……。」
モシャーは驚愕のあまり声も出ず、目を見開く。
無理もないなぜなら確実に死んだはずの人間が自分の前で軽口を叩いているのだから。
俺は、近くに飾ってあった派手な装飾の弓を手に取り、構えるすると、矢がないはずなのに黒い線がまるで矢のようにできる。
「殺弓」
そう言った瞬間黒い矢を放つと吸い込まれるようにモシャーの心臓に直撃した
「ヒゲアッハーーー!!!あ、あれ、なんともない?」
たしかに黒い矢はモシャーの心臓を貫いた、しかし血も出ず、痛みもない
「ふ、ふん、虚仮威しか、そんなものがわしに効くとでも。」
と、余裕を取り繕うように言ってきたので
「ク総帥様、特別出血大サービスだ、この魔法の効果を教えてやる。」
そう言ったあとで、人差し指を立てて
「黒い矢に射られた者は十分後にその人生を終える。」




