老いぼれの隠し事
アルケが家の都合でいない、そんなある日に。
「なあ先生、アルケの家ってどういう感じなんだ。」
俺は、今日アトロナーヘ先生を呼び出してアルケの事を聞いてみた。
「ん、ああ、アルケは 、その……ここでは言いづらいからお前の部屋で話したいと思う。」
と小声で言う。
「ああ、いいぞ。」
アトロナーヘ先生と一緒に俺の部屋に行くことにした。
俺の部屋に入ってしばらくするしてアトロナーヘ先生は口を開いた。
「どうしても聞きたいのか?」
真剣そうな顔でそう聞いてくる。
「ああ、どうしてもだ。」
俺も先生に負けにくらいの真剣な顔でそう返した。
「仕方がないな、アルケはお前のことを信頼ているようだし、私もお前のことを信頼しているしな。」
と負けたような顔をして
「スナリャト=モシャーこれがアルケの保護者の名前だ。」
そう聞き覚えのない名前を口にした。
「どんな奴なんだ?」
そう言うと
「知らないのか?アルリイアンカンパニーの総帥だよ。」
アルリイアンカンパニー とはいろいろな分野で活躍する多角的大企業でありまた、四大豊術の研究もしている。
「ふ〜ん、そうなのか。」
俺は気にしない風に装い、最後に
「アルケってすごい人間なんだな。」
と言うと
「でも、あんまり態度変えるなよ。」
と人間と言った部分に何一つの触れずにそう言葉を返してきた。
「当たり前じゃん、アルケは、アルケだよ。」
と当たり障りのない、しかし本心の言葉で返した。
大企業の総帥様が保護者である事、アルケには魂がないこと、そして誰もその事実にきずいていないこと。
あやしい。
俺はアルリイアンカンパニー総帥であるスナリャト=モシャーに探りを入れることにした。
俺は、公共の飛車でスナリャト=モシャーの自宅の近くのまで来ると、人目のつかない場所で現幽夢隠種の魔法がかかったエンドウ豆を口にくわえる。
これで俺は、現幽夢隠種の効果のおかげで誰にも見えず、あらゆる物をすり抜けることができる。
これで、俺は何者にも気付かれずに自宅に潜入できる。
なぜ、自宅かというとアルリイアンカンパニーには『皇』の調査が入っていたのだ
その調査では不審な点は見受けられなかったがしかし、何事にも穴はある
実は『皇』は明確に犯罪の証拠がなければ、プライベートなものを調査できないのだ。
しばらく歩くと、総帥の自宅が見えてきた。
いくら、お金持ちとはいえ個人用の家にしては大きすぎる。
俺は、ますます疑惑の目をスナリャト=モシャーにむけた。
俺は、個人の自宅とは思えないぐらいの警備をすり抜けながらに探索していると、一際厳重に守られている、普通に家ならすっぽり入りそうなぐらい大きな扉を見つけた。
いかにも、何かありますという感じだな。
そう思いながら扉をすり抜けて中に入り、道を歩いていると。
また、さっきと同じぐらいの大きさの扉があった。
……一体何があるんだ。
不審に思いながら、また扉をすり抜けると
そこには、異様な光景が広がっていた
広大な倉庫のような建物の中に、二メートルぐらいの丸い物体がいくつも、いくつも、それこそ、びっしりあった。
見る限り自立自給型の魔法兵器だな。
俺は、さらに詳しく見るため啓蟲瞳を発動した。
これだけの質のものこれだけの数を揃えるなんて。
アルリイアンカンパニーそのものが用意したならわかるが、スナリャト=モシャーが個人で用意したなら、はっきり言って異常な量の戦力だ。
一体何を考えているんだ……。
そんなことを思っていると、この空間には似合わない、豪華な装飾のいかにもお偉いさんらしい嫌味な机を発見した。
すり抜けながら、中を覗いて見ると、日記帳らしきものを発見したので俺は、このままでは手に取れないので口の中にあるエンドウ豆を喉を鳴らして飲み込んで現幽夢隠種の魔法を解除した。
俺は、机の引き出しを開け日記帳を手に取り読んでみる。
すると、そこには恐ろしい内容が記されていた。
日記帳の中身を要約すると、桃色の賢石を盗んだ事、アルケはあの大量の魔法兵器の生産ラインそのものであるという事。
そして、帝室に対して反逆を企てていること。
なんてことだ……。
しかし、これで謎の一つが解けた。
まず、賢石とは魔法の手助けをしてくれるありがたい石のこと、そして賢石は、黒、白、赤の順番で効果が上がる、本来なら人の手で出来るのは白が限界だが、極まれに白と赤の間の桃色の賢石ができることがある。
桃色の賢石は人知を超えた存在、個人でこれだけの戦力を用意するのもおそらく可能だろう。
俺は、証拠にする為に日記帳と何枚かの書類をカバンに入れ、えんどう豆を口にくわえ現幽夢隠種の魔法を発動してこの場を去ろうとしたが、奥の方にもう一つ、四メートルほどの扉があったので入ってみることにした。
そしてその中にはひと目で高そうな服を着た年老いた男と、銀の髪、赤い瞳、白い肌のゴスロリ調の服を着た美しい少女がいた。
スナリャト=モシャーとアルケだ。
しかし、アルケの様子がおかしかった。
無表情なにはいつものことだが、しかし今は生きている感じすらしないほど意志を感じ取れない。
おそらく、なにかしらの魔法で精神を制御させられているんだろう。
俺は、ゴキブリを見た時以上の嫌悪感と今すぐスナリャト=モシャーをこの世から消し去りたいほどの怒りを感じたが、ここはぐっと抑えた。
「ふうん……、しかし学園に置いとくとなると、このことが露見してしまう可能性があるな。」
とっくの昔にバレてるんだよクソじじぃ、お前は檻の中で思う存分たっぷりと余生を過ごすことだな。
心の中で俺は悪態をつく
「仕方が無い、事故に見せかけてこいつを処分した後あたらしいのを作るか。」
とアルケになにかしようとした瞬間
「ク総帥様、率直に申し上げます、死ね!!」
口の中のえんどう豆を吐き捨てながら、怒りの臨界点を突破した俺はそう言う。
スナリャト=モシャーは一瞬だけぎょ!っとしたがすぐに冷静な顔立ちになり
「なんなのかね、君は?」
と高圧的に言い放つ
「そこにいる、アルケのご友人様ですよ。」
モシャーを灰色の瞳で睨みつけながら、俺は言う
「まあいい、君が誰であろうと排除するだけだ。」
と言いながら指を鳴らす。
「では、実戦実験といこうじゃないか。」
そう言うと、三つほどの二メートルぐらいの丸い玉が俺の背後に迫る。
さっきの魔法兵器だ。
「ふははは!いくら特別学園生でも、それを相手にするのは厳しかろう。」
たしかに、啓蟲瞳で見ればわかるが高速で発動する正確な狙いの高威力な魔法、それに加えて堅牢な障壁、並みの魔法使いなら相手にもならないほどの強さを持つ特別学園生でも苦戦は免れないだろう。
しかし、俺は特別の中の特別『始祖』だ、この程度の存在はガラクタも同然だ。
俺は、用心のために持ってきた長大な斧、戦斧を取り出し
「匪玄翁!」
そう叫びながら、球体目掛けて一気に勢い良く叩きつける。
鈍い、金属同士がつがぶつかり合う音が部屋を充満させる。
球体には浅い傷を付ける程度だった。
「ふひゃやあははははははははは!!その程度か!!実験にすらならんな!!!」
モシャーは興奮しきった様子でシワまみれの顔を更にシワまみれにして下品に笑う、しかしそれが長く続くことはなかった。
「なにぃ!」
とモシャーは驚愕のあまり目を剥く。
それもその筈である、自慢の兵器が力なく落ち、床にぶつかる大きな金属音を聞いてしまったのだから。
「たしかに、ポンコツすぎて実験にすらならなかったな。」
俺は、挑発するように言ったあと。
二回、金属同士がつがぶつかり合う音がし、そしてその後、二回床にぶつかるような大きな金属音がした。
「何をした。」
汚い顔で睨みつけながら質問する。
この、『匪玄翁』という魔法は斧にたいする媒体行使で、傷つけた相手の魔力を剥奪し、魔法を断切する、発動したら最後俺が手放すまで永遠にこの効果は続く、斧なんて玄人向けの武器を使いたくなる程度には、凶悪な魔法だ、しかしそんなことを教えてやる義理はどこにもないので
「さあな?」
ニヤケながら答え
「さて、どうする?俺はこのまま鉄屑をふやす作業には付き合いたくないんだが?」
俺は、嘲笑うようにそう言うと。
「はあ、仕方が無い、アルケ行け」
ため息混じりにアルケを顎で道具のように使うモシャーの姿に嫌悪感と怒りを覚えつつ、アルケとモシャーの両方を注意深く観察する。
「空色錬成」
澄んだ静かな声でそう言うと、クワガタが卵をうむ紋章が現れるとその中からさらに、シンプルで上品な銀色に輝く細身の剣、細突剣が出てきた。
「ずいぶん、高度な鉱石属性の魔法を使うんだな。」
アルケは特別学園に入学できるのだから当然か……。なんと思っていると。
アルケは持ち手を人差し指と中指の間で掴むというレイピア独特の持ち方をし、モシャーを庇うように立ち、意思のない赤い瞳と細長い鋒を向けてきた。
「ふはは、お友達を傷つけるなんてできないだろ。」
ニヤケながらモシャーが言ってくる。
俺は、そんな事を言う奴を無理やり庇わされているアルケを早く救いたいと思う心と、僅かにだがあるレイピアを構える、まるで戦乙女を思わせる美しい姿をずっと見ていたい心が同居している。
今度はもっとすばらしい形で剣を構える姿を見せて欲しくなったな。
「さて、また助けるが理由一つ出来たな。」
そう言いながら俺もバトルアックスを構えた。




