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3―4 異変は終わらない……変わりゆく世界

夜が明けたので、俺は寝ている。みんなを起こす。


「交代ですか?」


起きたばかりで寝ぼけているケビンに言う。


「いや、夜が明けたから起こしたのだが……」


「へ……!?あ、ああ、すみません。もしかして……ずっと…見張りを?」


「ええ、まあ」


そう答えると途端に申し訳なさそうな表情になる。


「う、ん……あ〜〜。夜が明けたのか……ほれ、レティ、起きろ」


「う、何だい?……ああ、夜が明けたのね」


グレンが起きて、レティを起こした。


「……ヴィンセント、起きなさい」


ケビンがヴィンセントを起こすために声をかけた。


「う〜〜〜。……おはようございます」


寝ぼけ眼で言う、ヴィンセントにおはようとケビンは言うと、ヴィンセントを抱っこしてこっちに来る。


それを見ながら俺はこの後、どうするかを考える。


そして、あることに気がついた。


いつも、頭上にあるはずのHP、MPバーが見えなくなっていた……。


何故……急に見えなくなった……どうして…。


「嘘だろ……ステータスウィンドウが開かない……」


驚愕を露わにして、グレンが声を震わせる。


「私も……」


レティも同じ様子だ……。


この世界でステータスウィンドウは自分を証明するのに最も簡単な方法なのだ。


試しに俺も開こうとしたが、開かない。魔法は……出せるのか?


心配になった俺は空に右手を向ける。


「フレイムダーツ」


右手から五本の小さな炎の矢が飛び出した。


どうやら、魔法は使えるようだ。


魔法が使えた事に俺は安心した。これで魔法まで使えなくなっていたら俺は自分の身すら満足に守れないだろう。


「……今は、城に行く事にしませんか?あそこは兵士が沢山いますし、少なくともこの場よりも安全だと思うのですが」


ケビンの言うとおり、此処よりは安全だと思うが、嫌な予感がする。でも戻らないことには始まらない。


今の内にその後はどうするかも考えておかないと、すぐには動けない。


「確かに……城ならば兵士が沢山いますし、もしかしたら既に、軍を率いてるかもしれないわね」


それはどうだろうか?俺たち以外に脱出出来た人は少なからずいるかもしれないが、派兵はまずないと思う。


「まあ、城に向かおうぜ。もしかしたら、ステータスウィンドウが開けないことについて何か分かるかもしれないぜ」


グレンが陽気に言うが、俺はそこまで楽観的に考える事が出来なかった。


城に向かい歩いていく俺たちは昨日の夜以降、全く飲食をしていない。


水は魔法で何とかなるが食べ物は途中で木の実を採取して食べるしかないだろう。


それから森の中を歩いて、数時間が経過した。土地勘の無い俺では後どれくらいで城に着くのか分からない。


休憩は短くこまめにしながらのため、あまり疲れはとれないが昨日のアレから距離を離していくと思えば、徹夜でつらい体も苦にはならなかった。

日が暮れ始めると、落ちている木の枝を拾い、途中で木の実を取りながら移動を続け、日が沈んだら拾った木の枝を燃やし、今日は此処で野宿となり、俺は木の実を少し食べると徹夜の疲れもありすぐに眠りに着く。





翌日。


夜明けと共に目覚めて、簡単な朝食を済ますと城に向かって再び歩み出す。


そして、少し姿の変わった、イノシシ型の魔物を見つけた。


本来であれば無視して迂回しても良かったのだが、今はそんな余裕がないので、そのまま前進する。


向かってくるなら倒す、逃げるのであれば追いわしない。


だが、イノシシ型の魔物はこっちに気がつくと奇声を上げて突進してきた。


「アースジャベリン」


突進してくるイノシシ型の魔物を石の槍で迎撃する。


石の槍は突進してくる勢いもあり、深々と突き刺さり、イノシシ型の魔物は息を途絶えた。


息の途絶えたイノシシ型の魔物に近づく、それは多少姿が変わっているが、ラピッドボアという魔物にそっくりなのだ。


亜種かと思ったが、姿が多少変わっている、ラピッドボアにしか見えない。


また、分からないことが増えた。とりあえずラピッドボアらしき魔物の死体は放置し、城を目指す。


そして、ようやく城が見え、街を見渡せる丘に上がる。


そこには……火災があったのだろう焼け焦げた家々が見える。それと、大型の魔物が数匹、閉ざされている城の門の前にいる。


その光景に俺以外のメンバーが膝をつき愕然としてしまった。


異変は此処でも発生していたのか……HP、MPバーにステータスウィンドウが開けなくなった時からうっすらと予感があった。


そして、目を背けていた事実に向き合わなくてはいけない。この世界が変わってしまったのだと…。


ヴェインやアルティナは無事だろうか…。俺が誰よりも心配するのはこの二人だけだ。


他の人はそこまでではない。フォルテやドルムント、フォルシグ、マルファスは少しばかり親交があったが、ヴェインやアルティナほどではない。


「それでどうします?城の中には確実に生きている人はいると思いますが……行きますか?」


俺がそう言うと、皆は暗い表情ながらもどうするか考え出す。


「俺は行かねえ」


「私もよ」


グレンとレティは行かないと……。


ケビンやヴィンセントはどうするのだろうか?


「一つ質問が、レイオット、キミはどうするんだい?」


「行くよ。一人だけなら特に問題はない」


ケビンの質問に俺は自信をもって答える。


「そうか……」


「……父さん」


ヴィンセントは俯き、暗い表情を浮かべるケビンの袖を掴む。


誰も動こうとしないので俺は行動する。


「クイックアクション」


身体強化の魔法を使い、一気に駆け出す。


街に近づくと、此処にも奴らがいた。個体差があるようで変質している部分がまちまちだ。


それらを無視しながら、城門にいる大型の魔物めがけて駆け抜ける。


大型の魔物は獅子の頭に蠍のような体をもつ、初めて見る魔物だ。


徐々に距離が縮まる。


大型の魔物――正式な名称が不明なためキメラとしておく――の一匹がこっち向かってきた。


どうやら、気づかれたらしい。


まだ、気づかれたくなかったのだが……仕方ない。


唸り声を上げる、キメラの下を走り抜け、城門に更に近づく。


後ろから巨大なハサミを振るって攻撃してくるのを避けながら、城門前にいるキメラに近づくために、よりいっそう走る速度を上げる。


城門の前にいるキメラの内の一体が俺に向けて尾を突き出した。


俺はそれをギリギリで避け、その尾を掴み、尾が地面から引き抜かれる時の反動を利用して城内に飛び込んだ。

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