3―5 そして……
城門を飛び越えて侵入した俺は地面に落ちる、ギリギリのところで浮遊魔法フライを使用し、地面に降り立った。
「ふぅ……どうしよ………」
無事に城内に入れたことに安堵するが、兵士に囲まれ、非常に困った状況だ。
囲んでいる兵士たちはよく見ると大小様々な怪我を負っていた。
巻いてある包帯からは血がにじみ出しており、見るからに安静にすべき状態だ。
「何事だ?」
この声は?聞き覚えのある声がした方に視線を向ける。
「ハッ!実は場内に侵入者が入り込みまして、現在、我々が包囲しております」
「そうか……して、その侵入者は?」
「此方です」
俺を囲んでいた兵士たちの一角が開き、そこから一人の兵士と見覚えのある男性が現れた。
「……お主も無事であったか、レイオット」
「はい、マルファスさんもご無事で」
「マルファス様、お知り合いで?」
「ああ、フォルテ様の客人だ。確かお抱え商人であるガラーンド夫妻と一緒に行動していたはずだが夫妻はどうなった?」
兵士の質問に答えつつ、マルファスに夫妻のことを問われた。
「夫妻は他の生存者二名と一緒に此処を見渡せる丘にいますよ」
「そうか……此処以外の状況も聞きたいから付いてきてくれ」
俺の返事にマルファスは少しばかり、天を仰ぐと、そう言って城の中に入って行った。
その後に続いて城内を進んで行くと、暗い表情で廊下に座り込んでいる人々を見かける。
そのほとんどが子供だ。中には幼児の世話をする少年少女の姿も見える。さらに、大人の姿が怪我人以外見当たらない。
そんな中を進むこと数分。
赤色の扉の前で止まった。どうやら目的の場所に着いたようだ。
「少しここで待っていてくれ」
マルファスはそう言うと扉を開け部屋に入っていった。
それから、数分ほどたった。部屋からは時折怒鳴り声が聞こえてくる。
それ以外の声は聞こえてこないので、怒鳴り声が凄まじく大きいのだろう。
ドガン!と扉を乱暴に開けて部屋から、憤怒の表情を浮かべた、恰幅のよい男性が出てきた。
その男性は俺の前をドタドタと足を踏み鳴らしながら移動し、やがて、別の部屋に入っていった。
「待たせたな。さあ、入ってくれ」
部屋から出てきたマルファスに促され、部屋に入る。
「失礼します」
部屋には甲冑に身を包んだ兵士が壁際に待機していた。
「早速ではあるが……他の場所について聞きたい。そこも、同じ状況か?」
部屋に入るとすぐ、片手に書類を持ったフォルテに
問われた。
「大型のは此処でしか見てないのでそれ以外は……概ね同じ状況です。異変が起こってからすぐに、町の外ににげたので」
「そうか……」
そう言うと、深く息を吐き書類をテーブルに置いた。
「分かった……これから……ッ!」
ッ!フォルテが何か言おうとしたタイミングで底知れぬ寒気を感じた。
周りにいた兵士達も感じたらしく慌てている。
「落ち着けえぇっ!」
マルファスが大声をあげ、何とか兵士達を平常心に戻すと、近くにいた兵士の一人に命令し、その兵士が部屋から出て行った。
して、すすぐさま慌てた様子で兵士が部屋に戻ってきた。
「も、申し上げます。城に向かって四足歩行の巨大な何かが接近してきています!八本の蛇のような首に狼みたいな頭、亀のような胴体の生物です!大きさで言えば城門の前にいるのよりも大型です」
何だと!?…………城門の前にいる、キメラとは違うタイプ……キメラでさえ大型なのにそれを超えるだと!
俺はすぐさま外を見るため、窓に向かう。そしてーーーー。
その姿を見て直感した。奴はヤバイと。
そして、その直感はすぐに現実となった。狼みたいな頭がの一つから、カッ!と閃光が迸り、その数瞬後に凄まじい揺れが城を襲い、何かが壊れ崩れる音が響き渡った。
凄まじい揺れにより立ってられず、窓の縁に捕まりながら片膝をつく。
揺れが鎮まり、立ち上がって窓から覗くと……城門が破壊され、瓦礫になり、キメラの肉片と共に散らばっていた。
ヤバイ……城門が破壊された今……奴等が入ってくる。
「すぐに民を連れて逃げるぞ。レイオットは兵士達と協力して奴等のから民を逃がすのを手伝ってくれ。マルファスは民の誘導を、私は裏門の鍵を開けに行く!」
フォルテは鬼気迫る表情でそう言うと、自身も行動を開始した。
俺は窓から飛び降り、浮遊魔法 でゆっくりと着地する。
すでに、兵士達が侵入してきた奴等と戦っており、一部の兵士達が民の誘導と護衛に当たっている。
俺も頼まれた通りに民を逃がすために戦っている兵士達の援護を始める。
「ブレイブハート、レイジングスピリッツ、そして、フォースシールド」
補助魔法を戦っている兵士達に付与する。ブレイブハートは攻撃力の上昇、レイジングスピリッツは状態異常恐怖に対しての耐性を上昇、フォースシールドは防御力の上昇と状態異常耐性を全体的に微々たるものだが上昇させる効果がある。
突然の事に兵士達が少し戸惑ったが、これが補助魔法であると分かると、すぐさま戸惑いがなくなり、動きが良くなった。
民の中でも腕に覚えのある者達が兵士達の援護をしている。
俺も兵士達の援護をすべく、破られた城門から侵入して来る人型の奴等ーー仮として今後、アルプトラオムと呼ぶーー に攻撃を開始する。
アルプトラオムの数が多い為に兵士一人に対して複数のアルプトラオムを相手にしているので範囲攻撃で数を減らしたい所なのだが、兵士達も巻き込んでしまうのでそれは出来ない。
なので、攻撃は誘導性の高い魔法を使い、援護用に範囲回復魔法を使う事にした。
俺が戦い始めてからも、アルプトラオムは続々と城内に侵入してくる。俺が参戦した時点で兵士達はそれなりに体力を消耗しており、今はまだ大丈夫だが……限界が近い。
唯一の救いがアルプトラオムだけでキメラがいないことだ。キメラがいた場合は確実に兵士達と民に被害が出たことだろう。
すでに、戦場は城門から裏門へ続く道の中間に移っている。
兵士達の数も負傷者が多数出たため減り、人数は二十人にも満たない。それでも全員が軽度の怪我をしている。なので俺は攻撃魔法よりも回復魔法を重点的に使用して兵士達の生存を優先した。




