3―2 異変
リディル遺跡に向かうため街の大通りを進む。
時間帯は大体昼を迎える頃。辺りの飲食店の店員が客引きをしている。
途中、饅頭を売っていた露店で饅頭を数個買いそれを食べながらリディル遺跡に向かって進む。
饅頭を全て食べ終わって少しすると遺跡が見えてきた。
遺跡の前に着いたので遺跡の全体像を把握するため遺跡を眺める。
見た目はピラミッド型で外壁はボロボロとしている。そのためかなりの年月が経っていることが伺える。
入り口には係員などの人影はなく完全に自由に出入り出来るようだ。
個人的にありがたいが防犯面では心配だ。
そう思いながらも俺は遺跡の中に向かって歩を進める。そして、
「…………嘘……だろ」
遺跡の中に入ると俺は絶句した。
何故ならあり得ない光景が目に映ったからだ。
何故なら遺跡の内部の照明が資料に書かれていた通り魔法を使った物ではなかった。だがそれはまだいい、俺が絶句した理由はその照明が電気を使うタイプ……そう、この世界には無い物だからである。
遺跡内に誰も居ないのを確かめると俺は資料に書いてあった地下のカプセルがある場所を目指して駆け出す。
地下のカプセルが置いてある部屋に着く。そこには巨大なモニターがあった。
在るはずがないものを見て思わず呟いてしまう。
「どういう…ことだ?」
遺跡というだけあって内部もあちらこちらボロボロだが形として残っている機械に驚きを隠せない。
素人目に見ても此処にある機械は動かせないのわ分かる。
「ハハ……ハハハハハ」
こういうのに詳しくないのに調べようとした自分が可笑しく声を出して笑ってしまった。
ああ……本当に可笑しい。今更…あっちのことが気になるなんて…。
ここ最近は全く考えてなかったのに……何をやってんだかね。
これ以上、ここにいたって何にもならない。
俺は思考を切り替えて城に戻ろうとする。
そして、地下から一階に戻ってくると黒い人型の煙のような姿が見えたので物影に息を潜めて隠れる。
それは暫く、その場を漂っていると、スーッと消えていった。
「何だったんだ?」
あまりにも不可思議な現象に思わず呟きが漏れてしまった。
此処にいても、もうどうしようもないのでさっさと、城に戻る。
城に戻って、俺が使わせてもらっている部屋で遺跡資料に目を通して確認したどころ、リディル遺跡と同じ様な遺跡はリベルドニアには一つもないそうだ。
それに、黒い人型の煙のような存在については、何も判らなかった。
それから、リベルドニアの各地を見聞するためにフォルテに許可を貰い、案内人を2人付けてもらった。
その案内人2人は商人であり、お互いに結婚してから数十年のつき合いの夫婦である。種族は狼獣人だ。
この夫婦はお抱えの商人でリベルドニアの各地を回って商売しているので連れて行ってもらえるようにフォルテが依頼してくれた。
そして、今は酒場にいる。
商人であるガラーンド夫妻が相手方と商談している場所が今いる酒場の二階なのだ。
カウンターに座り、適当に料理を頼み、隣に座っている冒険者らしき人物の話に耳を傾ける。
「おい、知ってるか?また、出たらしいぞ」
「ああ、知ってる。俺は此処に来る前に聞いた。黒い人型の煙のことだろ」
黒い人型の煙だって!あそこだけじゃなかったのか。
「そうだ、数日前に俺の知り合いの奴がソレと遭遇してな」
「何かあったのか?」
「それがな……話すらしいんだ……言葉を」
言葉を話す……どういうことだ?
俺はより注意深く話に耳を傾ける。
「おいおい、何を言うかと思えば話すだぁ……そいつは煙なんだろう?話すなんてできるわけねえよ」
笑いながら男が否定するが、俺の隣に座っている男が言う。
「ああ、そうだろう……俺も最初は信じられなかったんだがな…彼奴が必死の形相で話すもんだからな」
その言葉と真剣な語り口に笑っていた男は表情を改める。
「何て…言ってた」
「それがな…聞き取れなかったらしい」
「はぁ?」
「正確に言うと耳でなく頭に直接聞こえるらしい」
テレパシーか何かか?と疑問に思っていると、
ガチャン!
何かが割れる音がした。
何だ?と思い、音がした方を向くと1人の中年男が顔色を青白くして倒れている。
ビクビクと痙攣を起こし、近くにいた客の1人が「しっかりしろ」と中年男に声を掛けてる。そして突然異変が起こった。
それは、この時をもって、リベルドニアだけでなく、すべての大陸で起こる異変の始まりであった。
後にこの日は数年間続く、大厄災、それと同時に新しい時代の幕開けでもあると記される始まりの日でもあった。




