2―1 時が経つのは早い
あの魔物の群れ討伐の宴から早半年……時が流れるのは早いものだと感じる今日この頃。
数日前に魔物の群れ討伐の後クラリッサに付いて行ったヴェインがクラリッサと一緒に家にやって来た。
ヴェインとクラリッサの突然の来訪に俺とアルティナは凄く驚いた。この家のある場所は街から離れており此処に家がある事を知っているのはアルティナと俺以外は皆無な筈なのだがヴェインとクラリッサはやって来たのだ。
どうやってこの家の場所を見つけたのかを訊いたら一言で説明された。
そう……執事とメイド達による人海戦術だと。
はッ?て思ったよマジで……それで何人で探したのかを訊いたらクラリッサは笑顔で言った。
「百人程の人員で探しました」
この言葉を聞いて俺は苦笑いしか出来ないし、アルティナも俺と似たような感じの反応をしている。
これが……金持ちの力か……どうせ俺は貧乏さ。
あの戦いから数ヶ月経ってるのに俺の全財産は六千二百十一ゴールド。
「それで、何の用で俺達を探してたのさ」
俺がふてくされながら言ったらクラリッサが気まずそうに言った。
「えっと……その……用はありません」
はい?…………じゃあ何で俺達を探してたのさ!
気まずそうに言ったクラリッサに困った様子でアルティナが言う。
「あの……じゃあ、何故私の家に来たんですか?」
「それは……ヴェインが行こうと言いまして……通り道の近くだから様子を見に寄っていこうと」
「ほう…ヴェイン理由を聞こう。なにが目的で来たのかな?」
クラリッサの話を聞いた俺がヴェインに問いただすとヴェインが冷や汗をかきながら言う。
「いや〜ちょっと興味本位でな……おまえ達の生活環境が気になってな……ハハハ」
「理由は今考えたな……はぁ、仕方ないかアルティナ」
「……そうですね。クラリッサさんにヴェインさん家に上がってください。お茶をだしますので」
アルティナが家の中にヴェインとクラリッサを連れて行く。
俺もアルティナ達の後に続いて家の中に入る。
アルティナはお茶の用意の為に台所に行き、ヴェインとクラリッサは椅子に座っている。
俺はちょうどヴェインとクラリッサの向かい側の椅子に座る。
そこにアルティナがお茶を持って来た。お茶をヴェインとクラリッサに渡し終えると俺の隣に座る。
「そう言えばさっき通り道の近くだからって言ってたけど二人はどこに行こうとしてたんだ?」
と俺が訊くとヴェインが答えた。
「ああ、俺達はクラリッサの爺さんに会いに行くんだ」
「そうなんですか。じゃあ、ヴェインさんはクラリッサさんの護衛なんですか?」
アルティナが訊くとクラリッサが答える。
「違うわ。ヴェインはお父様に言われてお祖父様に会いに行くのよ」
お父様に言われてお祖父様に会いに行く……………………コイツは何をやったんだ?
クラリッサの言葉を聞いて俺がヴェインに視線を向けるとヴェインがテーブルに身を乗り出し俺にしか聞こえないように小声で言った。
「俺がハーレムを目指しているのを知ってるだろう」
「それがどうかしたのか?」
と俺が聞き返す。
「クラリッサの親父さんとその事で話が弾んでな、それで実際にハーレムを作った爺さんに話を聞いたらどうかと言われてな」
そういうことか……だが、クラリッサの親父さんよ娘の旦那候補がハーレムを目指してて不安じゃないのか?あんたはそれでいいのか?
そしてまず訊かなきゃならないことがある。
「……話は変わるがクラリッサはおまえがハーレムを目指しているのを知っているのか……」
するとヴェインの表情が徐々に引き吊っていく。
そうか………知られたらヤバいのか…これは自業自得だな。
とりあえずクラリッサにはヴェインがハーレムを目指しているのを知られないようにすべきだな。俺はそう思い、ヴェインとのコソコソ話を終わらせる。
だが、ここで予想外の事が起こった。
「そう言えばクラリッサさんは知っていますか」
「何をですか?」
「ヴェインさんがハーレムを目指している事です」
アルティナのこの一言によりこの場にいるアルティナ以外の面子が固まった。
そして…………。
濁りきった眼のクラリッサが虚ろな声音で話し出す。
「ふ、ふふ……フフフフ。そうなんですか……」
アルティナが俺の後ろに隠れ、クラリッサの隣に座っているヴェインが冷や汗をダラダラと流しガタガタと震え出す。
勿論、俺も怖い……実際に現場に遭遇すると今すぐにでも逃げ出したくなるくらいだ。
クラリッサが立ち上がりガシッ!とヴェインの肩を掴む。
そして、俺とアルティナに目が笑ってない笑顔で言った。
「私達はそろそろ行きますね。ごちそうさまでした」
次にクラリッサはヴェインを立ち上がらせる。
「では、行きましょうか……お爺様の所まで結構な距離がありますしね……たっぷりお話しましょうか」
ヴェインがクラリッサに引き摺られながら去っていく。去っていくヴェインの表情は俺に助けを求めていたが俺にはどうすることも出来ない。
これが数日前のヴェイン、クラリッサとの再会そして別れであった。




