5話 昨夜の魔法使いは銀髪執事になって現れました
「マーリン、昨日は君にしては中々帰ってくるのが遅かったじゃないか」
たまに朝食がギルと被れば小言なんて。
(あなただって昨日はシェリーとオペラ鑑賞だったかしら?よく言うわ)
ギルが喋るのを聞く度、冷めるのだ。
結婚して何も疑ってなかった時、会計仕事のちょっとしたミスでもやるのは私なのにしっかりしてくれだのエミリーと遊びに行く時のドレスも派手すぎるんじゃないかの一言も「私が気を使わせなきゃ」と思った事は幾度とあったけど黒と判明した途端、こんな小さな男の言う事は無視に尽きる。
ギルは知ってか知らずか朝食を食べ終え自室に戻る
らしい。
「ああマーリン、言うのを忘れていたけれど君に就ける執事を今日から増やす事にするよ」
「は?」
(ギルや屋敷に就けるならともかく、いきなり何のつもり?)
私の世話ならメイド達で間に合っている。
「どんな人なの?」
「銀髪の端正な顔立ちの男だよ。
たしか君が昨日エミリー嬢と遊んでた時に偶然彼を助けたそうじゃないか。
今朝がてらいきなりうちの屋敷で働かせてくれとやってきたから破格でいいと言われたから仕方なく雇う事にしたんだ」
(銀髪?)
そんな人助けた覚えがない。
エミリーとは会ったけど、その後別れてデミトリアスと飲んだのは覚えているけど。
その後は馬車で帰ったしと考えていると横から
「マーリン様」
と聞き慣れない声が聞こえてきた方を見ると銀髪の美麗な青年がモルクルを掛けた青年が執事服に身を包みお辞儀をした。
「私、本日からマーリン様に就く事になりましたアロンと申します」
あまりの美麗さに息を飲んだ。
後に思い出した!
(成る程!これがデミトリアスが言っていた銀髪の知り合いのお方ね!)
こんな素敵な知り合いがいるなら紹介してよ~!と思っていると彼は私に近づき手を取り跪く彼に
(うわ、駄目よ!ギルの手前、ときめいちゃうじゃない!)
なんて思いそうになる。
「これからよろしく」
側で彼が挨拶をする声は途端、恐ろしいほど低くなる。
そう。
まるでそれは昨日出会った黒が似合う彼のようなー
とデミトリアスの顔が浮かぶと私はアロンの手を払うとズザザっと壁際に後退した。
「マーリン?」
「奥様?」
ギルとメイドのララとリリーは何事かと私を見る。
「あっ、いえ部屋の入り口に虫がいた気がして」
と誤魔化す。
「申し訳ございません!」
ララとリリーは謝り即座にホウキとちりとりを持って来ようとしたが勘違いよと言って止めた。
肝心の私の執事の男は私の顔を見ようとしないどころかクスクス笑いながら惚けたように遠くを見ている。
(嘘でしょう?だって身長や骨格も違うじゃない!?)
私だってまだ信じられないのだ。
よろしくと言った声がデミトリアスそのものという事実に。
彼は私と目が合うと自分の口に人差し指を当てるジェスチャーをした。
誰にも言うなよと言う事らしい。
ええ、誰が言うもんですか。
(あんたは魔法使いよ!だなんて)
夫の不倫の次は魔法使いに執事なんて聞いてない。
(しかもデミトリアス、ギルに執事が愛人だと吹けばいいなんて無理に決まってるじゃない)
一体どういうつもりなのかしらと彼を睨む。
(ああ、もう!誰か聞いてちょうだい!)
私の日常は彼の登場により変わっていった。




