11話 不当な契約
翌日、いつも通り私と行き違いで朝食をとりに来たギルに言われた言葉に私とアロンは驚いた。
「アロンを私からあなたの執事にするってどういう事!?」
「マーリン、理由は君がよく知っているはずだ。
そしてお前には拒否権はない」
ギルは私には静かな笑みを、アロンには厳しい顔をして私達に命令した。
「最近、君たちは仲が良すぎる。
メイド達が噂していたよ。
主人が執事と関係を持つなんてダグラス家の恥だよ」
そうギルが言うとメイド達がざわついた。
自分達のせいだと思ったのだろう。
彼女らは額に汗をかいている。
(アロンじゃなくても、誰だって文句を言うくせに!)
この男はそういう奴だ!
言い返すつもりで一歩踏み出すと、アロンがそれを制止した。
「かしこまりました」
とだけギルに彼はお辞儀をする。
(どういうつもりなの!?)
彼の心中が分からない。
ギルはアロンを無視し、部屋に戻っていく。
アロンも私に一礼しギルの後ろに着いていく。
(私、何か間違えたかしら?)
背中が冷たくなるのを感じて目眩がするとメイド達が奥様!と駆け寄る。
「申し訳ありません!
旦那様の前では話してなかったのに。
本当に申し訳ありません」
中には泣き出し始める子達もいる。
「大丈夫。
みんなは悪くないわ。
きっとあの人は聞き耳でも立てていたのよ」
「ですが」
彼女達はまだ何か思う事があるらしい。
「大丈夫。
それより私、部屋で休みたいの。
誰か後でお茶を持ってきてくれないかしら?」
「かしこまりました!」
私が体調が悪いと訴えると彼女達は私の部屋まで付き添ってくれた。
♦︎
日が明けて月末になってしまった。
という事は帳簿付けの締め切りにもあたる。
ギルに朝イチで帳簿に印鑑をもらわなきゃいけない。
朝食時にテーブルが一緒になったついでに彼にお願いする。
「どうした?
いつもは私の印鑑を勝手に使っていいと言っているだろう?」
「今月は一筆書いてもらわなきゃいけない書類もあるのよ」
「そういう事は前もって言え」
彼はサッと私が渡したペンでサインを済ませる。
「助かったわ」
「妙に素直なんだね」
「そうかしら?」
これで私の今月の仕事は終わり。
「♪」
「奥様、体調が戻って何よりです。
それにしても荷造りを準備して今日はどこかお出かけですか?」
「ええ。
違う領地に知り合いができたの。
その方にお招きされたから月の最初なら会えるって言われていたから訪問するのよ」
「まあ、ですが旦那様はご一緒じゃなくて平気なのですか?
それに確か月初めは確か舞踏会の案内状が奥様と旦那様にも来ていたはずです。
こちらはどうしましょう?」
確かに。
普通領地を訪れる際は、納める夫のギルを呼ぶはずだ。
しかし、今回それは私だけだしギルは私とは舞踏会には行かないはずだ。
「いいのよ。
ギルはどうせ両方とも付いてこないわ」
「ですがー」
「さあ、あなたも荷造りを手伝って」
「はい」
メイドは渋々私の言葉に従った。




