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10話 夫の画策

ギルバートは最近、ごくたまに不機嫌になる。


最近、妻が上機嫌なのだ。


とはいえ妻といっても結婚したての頃はそれなりに彼女に気を使っていたが2年も経てば美人は飽きる。


家柄も周りから美人と評された彼女は弁が立つがギルバートにとってはそれが鬱陶しいだけだ。


家の仕事に真面目なのは評価するが面白みにだって欠ける。

その点が可愛がっているシェリーとは違うのだ。


そして明らかに妻が変わったのはあの執事が屋敷に

来てからだと感じていた。


最近、妻は執事との外出が増えた。



今日は金曜。


珍しく朝食をマーリンが朝食を食べ終わる頃に自身もおはようと挨拶を交わしテーブルにつく。


ナプキンで口を拭く彼女に

「最近、君はあの執事と出掛けすぎじゃないか?」

と聞くが彼女は

「昼に買い物に出かけてるだけだし、ただの荷物持ちよ」

と言うだけだ。


「メイドの噂では「あれ」と出掛ける着替えの時はやけに楽しそうにそうと聞いたよ」


そう言うと

「私ばかりにとやかく言うけどあなたもシェリーと夜な夜な相引きしてるじゃかいですか」


「夜な夜な」を強調するのが皮肉だ。


これにはどう言い返すかと考えている内にうるさい愚妻は席を立ち部屋を出て行ってしまった。


(どうも怪しい)


ギルバートはメイドを呼びつけマーリンの今日の予定を聞き出した。



♦︎


街に西陽が差し込み、カフェのウエイトレスは私達が窓際に座っていたのでブラインドを下げましょうかと聞いてきた。


日差しが暑かったからか冷たいレモネードがよく減る。


「そう一気に飲むと腹を壊す」

帰ったら夕飯だろうとアロンの姿でデミトリアス私に忠告する。


「いいの。暑いんだから」


憂さ晴らしにアロンの姿のデミトリアスと出掛けてみるものの朝のギルの小言に怒りが晴れない。


(本当はむしゃくしゃして朝から出掛けたかったけどあの人、金曜は夕方に家を空ける事が多いから)


今の時間に2人で出掛けたという訳だ。


ほぼほぼ毎日、屋敷にギルがいる時間はあまりない。


(いっそシェリーの家に住んだ方がいいんじゃない。)


彼女の家柄とかは分からないけど、わざわざ自分の屋敷に帰ってくるのはやっぱり私と上手くいってないと思われると都合が悪いからだ。


モテるけど家庭もある。

愛人がいる事は妻は気づいていない。

もしくは公認だから問題ないだろうというのが言い分だ。


(情け無い。


まあ、私も同じだけど)


店を出るとアロンは

「街まで来たんだ。

他に寄るところはないか?」

と聞く。



「うーん、前にエミリーとドレスを買ったかしら今のところ満足してるわ」


本当言うと季節は秋に変わるからアクセサリーが気になったけど、ウインドウショッピングで目ぼしい物はない。


「じゃあこれを」


そう言うと彼は私の手にゴールドに紫の石が付いたイヤリングを渡した。



「アメジストで作ったアクセサリーだ」


「まさかの押し売り?

性根逞しいわね」


「プレゼントだよ」

「どういう風の吹き回し?金貨は渡さないわよ」


「僕はそこまで小さくはないぞ」


じゃあ頂くわと彼の前で耳に付けると、もう片方を彼が付ける。


耳を掻き上げられ驚いていると


「どうだ、気に入ったか?」

とアロンの姿でデミトリアスはいつものイタズラな笑みに頬が少し赤くなって照れているようにも見える。


「あなたはどう思う?」

鏡が無いから分からない。


「よく似合っているよ」


そんな彼の真面目な返事に、私はしばらく上機嫌だった。


でも、それは軽率だった。


影からずっと「彼」が私達を見ている事に気づかなかったのだから。

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