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3頁 スランプからの解放

  それから数日過ぎて・・・。

店の前に一見『みすぼらしい男』が立っていた。

神耶氏がシャッターを開けると、待って居たかの様に男が近づいて来る。


 神耶「何かご用ですか」

 男 「あの〜、私に合う脳を探しているんですが」

 神耶「アナタに合う脳?・・・お仕事は?」

 男 「画家です」


話しを聞くと、俯きながら・・・。


 男 「私の脳は限界マックスに達してしまった。あとは死を待つだけです」


どうやら男は、スランプにオチイっているらしい。

神耶氏はその男を店の中にマネき入れ、ソファーに座らせて詳しく話しを聞き始めた。

結論は、


 『絵のモチーフが浮かばない』


らしい。

早速、神耶氏は棚の上から数種類の『芸術家』のラベルの貼ったアルコール漬の脳の標本瓶をテーブルの上に置いた。


 神耶「芸術家や作家はスランプにオチイり安い。一年にいっぺんは脳のメンテナンスをしないといけませんな。メンテナンスには『クリーンアップ、チューンアップ、バージョンアップの三種類』あります。ちょっとアナタの脳の中を拝見させて頂けますか?」


神耶氏はそのみすぼらしい『画家の男』を別室に案内した。

別室には電話ボックスの様な小部屋があり、その小部屋の天井からは数本のコードが垂れ下がっている。

コードの先にヒューズの様な物が付いており、順番に数色の灯りが点滅している。


 神耶「椅子にお座り下さい」


男が座ると、神耶氏はヘルメットの様なモノを男の頭にカブせた。

そして、コードをヘルメットのプラグに差し込んで部屋を出て行った。


神耶氏は応接室に設置してある壁のモニターを見ながら、


 神耶「あ〜あ、ここだ。ここが混線している。脳と自我のバランスが取れてない。これじゃ本人も死にたく成るだろうなあ。・・・なるほど彼は『抽象画家』か。・・・そだッ! 一週間前に良い脳が届いた。確かアレは『カンデンスキー』と書いてあった。この脳を使ってアップしてみるか」


神耶氏はまた別室の小部屋に戻った。

男の被っているヘルメットを取りながら、


 神耶「アナタは抽象画を描いているのですか?」

 男 「え? 何故、分かったのですか?」

 神耶「脳の中を拝見させて頂きましたから」

 男 「え? 」

 神耶「だいぶ混線してますね。アナタは脳と自我のバランスが取れてない。確かにアナタの才能は限界に来てます。少しバージョンアップした方が良いなあ」

 男 「バージョンアップ? 値段が張るのでしょう?」

 神耶「 大した金額ではない。バージョンアップ出来たらアナタは絵を一枚描いて即売会にでも出しなさい。おそらく、破格の値段で売買の話しが回って来るはずです。今回、使用する脳は『カンデンスキー』と云う画家の脳です」


男は驚いて、


 男 「カッ、カンデンスキー!?」

 神耶「最近、アナタの様な芸術家にはピッタリの脳が入荷しました。ソレを試してみようと思いまして」

 男 「あの〜、その脳を使ってのバージョンアップのお値段は?」

 神耶「80万円です」

 画家「ハッ、80万! いやいや、私には到底無理です」

 神耶「代金は絵が売れてからでもよろしいですよ。おそらくアナタは今の賃貸アパートから超高級マンションに引越しが出来るはずです。ハハハハ」

                               つづく

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