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2頁 迷いから購入へ

 「少しチクっとしますよ」


神耶氏は男のDNAを採取するために小指に針を刺した。

出血した血液をシャーレに塗り、特殊な顕微鏡を使ってそのDNAのナンバー(染色体・塩基・形)をメモ用紙に書きとる。

そして奥の標本室に行き、基本台帳を広げ合致する脳を探し出した。

暫くして標本室から標本瓶を持ってモニタールーム(応接室)に出て来る。

染色体の合致した『科学者の脳』をテーブルの上に置く。

そして標本瓶の底(中心)にある脳幹ソケットに、シナップスコードの先端のヒューズを取り替え(男から取り出したシナップスに)、ツナいだ。

しばらくすると壁のモニターに客の男が映し出される。

今回、使用するシナップスコードは太めで、コードの先端は5個のシナップスヒューズが黒いトランス・ボックスに差し込まれている。

そのせいか、壁のモニターには男の動きが手に取る様にリアルに映し出された。

ただ、映し出された映像は容姿は客の男だが、行動は全くの別人である。


 神耶「今、使用している脳は『科学者の脳』で、映像に映る男性はアナタですが、アナタでは有りません。少し現実離れしていますが、あまり気にしないで観ていて下さい」

 男 「えッ!?・・・はい」


男は暫く映像を観ている。

すると、映像上にやたら『鳥』が大空を飛んでいるシーンが出てくる。

男は神耶氏に聞いてみた。


 男 「何故、あの私は鳥をて居るのでしょう」

 神耶「たぶん、男は自我(心)に目覚めたのでしょう。ソレはあの鳥を観る事によって。」

 男 「たぶん?」

 神耶「そう、『たぶん』。コレはあの男性(科学者の脳)が幼児期から脱皮した段階の映像です。鳥を見てあの男性(幼児期の科学者)は『アレ』はなぜ飛ぶのだろうと疑問に感じた時の映像です。生まれて最初に自我が形成(身の回りの事に興味を持つ)された時です。この事が発端で、将来この科学者は脳の海馬にインプットされていたのでしよう」

 男 「ああ、それで科学者の道に進んで行ったのですね」

 神耶「この脳はアメリカのバイヤーが持って来た物です。過去帳には『ウィルバー・ライト』と書いてありました。たぶんライト兄弟の兄だった『かも』知れませんよ?」

 男 「この脳はライト兄弟の兄?」

 神耶「『カモ』です」

 男 「・・・なるほど。彼は生まれて自我が形成される段階で飛んでる物に目が行ったのですね。と言う事は・・・この男が鳥を見なかったら人は飛ぶ事が出来なかった」

 神耶「ソレは分かりません。自我と云うものは沢山の経験により年輪として海馬にインプットされて行くものです。脳は自我(心)の作用を印象付けするだけの道具ですから。だから、脳は整理中に過去を消去してしまう事もあるのです。コレを『忘れる』と言います。しかし、自我(心)は過去の事を心臓が止まるまで残しているのです。シナップスの逆刺激で海馬に過去の想像を再現(想起)させる事が出来るのです。簡単に言えば人間と謂うモノは自我(心)の赴くままに動かされている『本性の化身ロボット』ですね。あッ、そうだアナタは自我(心)に興味を持つと言ってましたね。この脳なんかいかがでしょうか」

 男 「え?・・・う、まあ・・・。でも高いのでしょう?」

 神耶「コレで・・・300万です。世界中に自分の名前が売れるとしたら安いモノでしょう。ちょうど今、キャンペー中ですから三十パーセント引きでシナップスを五つサービスしておきます」

 男 「でも、脳だけ換えても・・・」

 神耶「あ〜、セットでお求めになれば500万です。その場合はシナップスをワンカートン付けますが」


男は暫く迷ったが、脳をリニューアルチェンジする事に決めた。

                               つづく

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