██
11100011 10000001 10000010
11100011 10000001 10001011
11100011 10000010 10001010
11100011 10000010 10010010
11100011 10000001 10100100
11100011 10000001 10010001
11100011 10000010 10001101 11111111
限られたものしか入室を許されない祈りの間で、わたしはその紙片を渡された。
「これは、なんですか」
新しい聖女が神の御前に立つからと、聖女の任を受けた数人のシスターも集められ、祈りの間に膝をついている。
「祈りの言葉の写しです。これこそが、神へと届く特別な祈りなのですよ。この祈りの間で、この御言葉で語りかけた時にだけ、神はその奇跡をみせてくださいます」
修道女長も膝をついたが、わたしはまだ立ちつくしていた。
神の御言葉? 奇跡? 冗談じゃない。
──こんなの、ただの2進数じゃないの。
「……なんと、書かれているのですか」
「わかりません」
修道女長は首を横に振った。
「祈りの書にはいくつもの不可思議な祈祷文が記されています。神の深淵なるお心を推し量るべく、先人たちが試行錯誤しながら、『どの祈りで、どんな奇跡が起こるのか』を見つけてきました。……皆様」
修道女長が合図すると、シスター達がそれを唱和し始めた。
「「「……11111111」」」
最後の文字を唱和し終えた瞬間、祈りの間は眩い光に包まれた。
目の眩むような光が落ち着いてから、修道女長は立ち上がった。
「脳裏に文字を思い浮かべながら、あやまたず祈りを唱えると、神の御光が現れます。大抵はこの祈りの間に。または修道院のどこかに」
わたしは頭がクラクラした。もちろん、眩い閃光の所為などではない。
2進数で紡がれる祈り。
正しく唱えた時だけ顕れる奇跡。
それは、祈りではない。奇跡でもない。
──命令文だ。
院長室に場所を移して、私は祈りについての講義を受けた。
祈りの書には、わたしがもらった紙片以外にも、膨大な祈りや、解読不明の神の御言葉が記されていること。
歴代の聖女達が、少しずつ解読を進めてきたこと。
「 ' 輝きの祈り ' は、祈祷文も短く、事故が起こりにくい入門向けの祈りですが、過去には雨を呼ぶ祈りを捧げようとして誤り、水害を起こしたものもいると聞きます。それで聖女の資質を、高い知性を持つものと定め、算術の能力と記憶力を兼ね備えたものにだけ、奇跡の祈りを授けるようになったのです」
「──魔法では、ないのですか」
私は当然の疑問を口にした。あまり発展してはいないが、この世界には魔法がある。未知数の部分も多く、誰もが使えるものでもないが、奇跡と呼ばれるよりは、魔法だと言われたほうがまた納得できる。
しかし、修道女長は即座に否定した。
「いいえ。魔法でもなく、炎でもなく。ただ祈りあるところに光が生まれるから、奇跡なのです」
「…………この祈りを覚えたら、他の祈りも教えていただけるのですか」
わたしの声を震えさせているのは、畏敬でも歓喜でもない。
それを知らない修道女長は、嬉しそうに頷いた。
「もちろんです。あなたにはその素質があると、私は信じております」




