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猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める  作者: 遥風 かずら
アフターストーリー 3

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メルバ漁村の魔導機船を探そう!

「ん~? なんだ、メルバに帰るのか~?」

「そうなんだよ。メルバから別のところに行けるかもなんだけど、クウはどうする?」

「トージが行くならおいらも行くぞ。面白いところなんだろ~?」


 もう一泊する――ということで、コムギさんと一晩ぐっすり眠り、用意されたパンを食べ終えて部屋から出ようとするタイミングでクウが戻ってきた。


 彼はあまり行動を共にすることがないが、きちんと戻ってくる猫さんだ。


「クウは別に無理して一緒に行動しなくてもいいニャ」

「いいや、おいらは行くぞ。トージだけだと心配だからな~」

「あ、それなら魔導装置を使えば……って、もう行っちゃった」


 コムギさんは半ば諦めた感じだな。ついてきてくれるのはいつものことだけど、クウは途中でいなくなるから好きに行動させるといった感じだ。


「……自分勝手に動くオスだから、トージは気にしなくていいニャ」

「はは……それじゃあ、行こうか」

「ウニャ」


 ルルさんに手土産の干物を貰ったので、それを口にしながら俺とコムギさんは宿屋に魔導装置を置き、それを使ってメルバの家に戻った。


 装置の効果は流石と言うべきか、一度設置すれば一瞬にして行きたいところにいける。そう考えると、ハーゼが楽をしたいというのも納得がいく。


「クウはまだ来てないみたいだね」

「それはそうニャ」

「だよね。ところで、コムギさん」

「ニャ?」


 猫じいのクエスト報酬で手に入れたのは、メルバ魔導機船の乗船チケットだった。つまり、これから移動する場所は海ということになるのだが、猫であるコムギさんやクウは海に対する心配があるかどうかが気になるところ。


「船に乗って移動することになりそうなんだけど、コムギさんは水は平気なのかな?」

「ニャフフ。トージ、今さら何を言うのニャ? 海が苦手なら、そもそも漁村で暮らすのも出来ないからニャ~」

「た、確かに」

「泳ぐわけじゃないし、大丈夫ニャ! 猫用の日焼け止めは欲しいけどニャ」

「そっか」


 メルバ漁村に本当に魔導機船があるかどうかも分からないが、流石に釣り船のようなものじゃないはずだし、そこまで気を回さなくてもいいかも。


「あれ~? トージとコムギが何で先にいるんだ~?」


 コムギさんに確認していたら、クウが小屋に繋がるドアを開けて入ってきた。


「魔導装置で戻ってきたからに決まってるニャ!」

「何だ~そうか~。てっきりおいらの移動の方が早いと思っていたのに、失敗したぞ~」


 俺の家とレイモンの小屋は繋がっているわけだが、クウはその手段で移動を決めていたみたいだ。


「まぁいいや。トージ、行くんだろ~?」


 相変わらずクウは淡々としてるな。


「そうだね。まずは魔導機船がどこにあるのかを訊かないとだけど」


 漁村に来て長いものの、今の今まで釣り船以外に大きい船なんて見たことがない。漁村自体そこまで広くないというのもあるが、ここに魔導機船なんてものが本当にあるかどうか。


「なんだ、そうなのか~。それなら外に出るぞ」

「クウは余計なことはしなくていいニャ」

「コムギもだろ~」

「うるさいニャ!」


 などと、いつもの口喧嘩が始まりそうなので、すぐに外に出ることにする。


 家から外に出ると、外は強烈な日差しが降り注ぐ昼になっていた。ミネット村で一泊してそこまで時間が経っていないと思っていたのに、すでに昼になっているとは驚きだ。 


「猫の村は時間の流れがちょっと違うニャ。だから少しだけ違和感を覚えるのも無理はないかもしれないニャ」

「そうなんだ」

「ウニャ」


 気にしたことはなかったが、そうだったのか。


「なあなあ、魔導機船ってどこにあるんだ~?」


 気を取り直して村の人に話を訊こうとしたら、すでに人化したクウが近くの人に訊いていた。


 あまり迂闊に訊いてほしくないんだが、クウに言っても仕方ないか。

 

「ん? 魔導機船? 知らんなぁ……」

「そんなはずないぞ~?」

「わしは今、忙しいんだ。どいたどいた」


 むぅ?


 子供だからと相手にされなかったのか、それともメルバの全ての人が知ってるわけじゃないのか。


「……トージ、どうするんだ~?」

「う~ん」


 思い当たるといえば、俺に岩場の部屋を貸してくれた宿の主人くらい。


「トージ。漁村で猫を一番崇めてるのは宿の主人ニャ。だから、そこに行けば何か分かるかもしれないニャ」


 流石はコムギさんだ。


「俺もそう思っていたところだよ。そこに行こうか」

「はいニャ」


 日中だけあって、辺りをうろつく漁村の人たちはほとんどいない。だが、宿の主人であれば漁に出ることがないのですぐに話が聞けるはずだ。


「おぅ、トージ。それとコムギさんじゃないか! 久しぶりだな! ん? いつぞやの坊主も一緒なのか。どうしたんだ、こんな時間に」


 クウと一緒に宿へ行くと、主人が笑顔を俺たちを迎えてくれた。彼の言うように随分と久しぶりに話をするような気がする。


 宿の主人は俺とコムギさんを受け入れてくれた人でもあるので、俺はすぐに本題に入った。


「何だって、魔導機船? そりゃまた、懐かしいことを訊くもんだな」

「知ってるんですか?」

「知ってるも何も、メルバが猫を崇拝するようになったきっかけは魔導機船だったからな。あんな鉄の塊に乗ってこの漁村を訪れてくる猫様なんて、そうは見ないものだった」


 まさか、猫じいのことなのか?


「それって、年を召した猫さんの話ですか?」

「いいや。逞しい青年だったな。旅を続けてるとか言ってたが、ここが気に入ってしばらく暮らしていた青年だった。その後、魔導機船をメルバに置いてどこかに行ってしまったがな」

「そ、そうですか」


 コムギさんがフンフンと鼻を鳴らしながら頷いているところを見ると、猫じいの話で間違いないみたいだ。


「置いて行った魔導機船は今どこにあるんです?」

「何だ、使いたいのか?」

「は、はい」

「コムギさんに坊主が一緒か。なるほど……それならこっちだ」


 主人は俺の他にコムギさんとクウを眺めた後、小刻みに頷いてそのまま俺たちをどこかに案内してくれるようだった。


 主人に黙ってついて行くと、そこは――


「――あれれ、トージのお家ニャ?」

「え?」


 主人が連れてきた場所は、岩場の家の前だった。


「トージ。お前は魔導の力が使えるんだな?」

「えっと、はい」

「……そうか。それならば納得だ。トージ。魔導機船はここにあるぞ」


 そう言って主人が目の前の砂浜を指差すが、特に何も見えない。


「へ? ど、どこにありますか?」

「魔導機船は目の前の砂浜にある。魔導の力を使わなければ、その姿を見ることは叶わない。今のオレではその姿を拝むことさえ出来ない。だが、トージが魔導の力を使えるのであれば、魔導機船は再び姿を現すはずだ」


 ……そうきたか。


 これにはコムギさんもクウも驚いていたようで、目を大きく見開いている。


「そ、それでは、魔導の力を……」

「待て。使うなら夜にしてくれ」

「どうしてです?」

「出来れば、村の皆に見せてやりたい。夜に出現させれば、早朝に見ることが出来るからな。再び魔導機船が現れたと分かれば、トージに頼みをする者たちがいるかもしれん」


 メルバ漁村では正規のお使いクエストは発生したことがなかった。しかし、魔導機船の出現によって発生するとしたら、今じゃなく漁村の人たちが多くいる時に見せた方がいいのかもしれない。


「分かりました。それでは、深夜に」

「おう。オレも間近で見たいから、宿に呼びに来てくれ。じゃあ、頼んだぞトージ」


 まさか家の間近にあったとは驚きだ。


 岩場の家を留守にしがちだったせいもあるとはいえ、意外すぎる。


「夜に動くのニャ?」

「そうだね」

「何だ~今じゃないのか~。じゃあ、おいらダンジョンに行ってくる」


 深夜になってから出現させるというのは何とも言えないが、漁村の人たちに隠し事が出来ない決まりがあることを考えれば、夜を待つしかなさそう。


「……ところで、トージは魔導の力をどうやって使うつもりニャ?」

「えっ……」


 思いつくのは亜空間スキルとか、魔導ボックスを使うとかそんな感じだけど、コムギさん的に実はそうじゃなかったりするんだろうか。


「まぁ、何とかなるニャ。部屋に戻って眠って待つニャ」

「そ、そうだね」

「いざとなれば、使うしかないニャ……」

「うん?」


 コムギさんが何やら呟いていたもののよく聞こえなかったので、部屋に戻ってゆっくり休むことにした。

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