↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/106

35話 報奨


 リリが唐揚げにかじりついた所で、ファーストが言った。


「リリ様、城で皇帝が出発準備を始めたようです」


 リリは、丁度話せない所だったので、目だけで驚いたようにファーストを見る。

 ファーストは頷いた。


 ピーちゃんが言う。


『ゴーレム見れたし、さっきの屋台の所戻って、なんか美味しそうな物買って帰ろう』


 そそくさと帰ろうとしているピーちゃんの言葉を聞いて、空を走る光は本気で皇帝に姿すら見せたくないという意志を感じたのか笑っている。


『はい、そういたしましょう』


 サラの返事の後、来た道を引き返そうと映像が動く。


 3人の大人が同時に通れるくらいの幅の城壁の上には、ゴーレムを見ようと冒険者達がずらっと並んでいて、道がないように見えた。

 冒険者達の後ろ姿を見ながら、どうにか進んでいく。


 階段の近くまで戻った所で、リリは言う。


「買い物しながら冒険者に紛れようって作戦だったけど、人がだいぶ減ったね」


 広場にはポツポツと冒険者が残っている。

 ファーストが言う。


「買い物であれば、検問所付近を避け、広場の端の方に向かうことをお勧めします」


 リリはファーストに言われて気がつく。


「……もしかしてここ通るの?」

「門を通るのであれば、西か南の可能性が高いかと」


 リリはピーちゃんを動かして、翼で広場の端の方を指した。


『あっちの端の方を見に行こう』


 映像は広場の中を進み、屋台に近づいていった。

 リリは空を走る光に聞く。


「あの辺におすすめの屋台ある?」


 屋台を見ないようにしていた空を走る光は、ついに再戦の機会が来たかとやる気になったようだ。


 リリはそういえば命令の内容を変えていたと思い出す。


「もし美味しいお店を2つ同時に見つけちゃったりしたら、2倍言いたくなったりするのかな」


 ファーストが、ふふっと笑う。

 空を走る光は出鼻をくじかれたようにリリを見た。


「なんて怖いこと言うのよ」

「何個か同時に見つけたらどうなるのかは気になるけどな……」

「こんなに屋台が密集してる所で、2倍で済むか……?」

「見つけた数によってだと酷いことになりそうだね……」

「しかも全部言い終わるまでですよね……?」


 及び腰の空を走る光を見て、リリは聞く。


「一瞬で勝負がつきそうだし、やめておく?」


 空を走る光はできないと思われて逆に闘志に火がついたようで、やってやろうじゃないかと気合いを入れ始めた。


 ウィルが挑むようにリリに言う。


「やるよ。まだ耐えられないって決まったわけじゃないからね」


 リリは、心意気やよしと思った。


「応援してるよ。さーて、どこがおすすめかなー」


 気の抜けるようなリリの言い方に笑ってから、空を走る光は屋台を見始めた。

 ピーちゃんが言う。


『オススメの食べ物を思い出すからちょっと待ってね』


 映像からはアルバートとサラの少し笑い声の入った返事が聞こえた。


 空を走る光が頭を抑え始めた辺りで、ファーストが言う。


「リリ様、皇帝が出発するようです」


 リリはこのタイミングでと笑って聞く。


「ここ通りそう?」

「通る位置ですが、城の方角の空を見ていただけますか」


 リリとピーちゃんが同時に言う。


「『空?』」


 ピーちゃんを操ってリリは、城の方に視点を向ける。

 広場の周囲には背の高い倉庫があり、倉庫の陰に隠れて城は見えなかった。

 映像からアルバートとサラのどうされました? という声が聞こえる。


 ファーストが言う。


「来ます」


 急に、倉庫の陰から空に大きな影がかかる。

 大小2つの影は速度を保ったまま、広場を越え、城壁を越え、降下して見えなくなった。

 リリはすぐに見えなくなった影を見送って、つい出てしまったような声で言う。


「ドラゴン! え、完全にドラゴンだったよね!? 街中にいていい大きさじゃなかったよね!」


 ファーストは落ち着いた様子で頷く。


「竜人族という種族がドラゴンに変身した姿です。あれが皇帝になります」

「……そういえば皇帝がドラゴンになれる種族だって言ってたっけ。でも、なんか2匹いたような気がしたけど?」

「赤く大きい方のドラゴンが皇帝で、白く小さい方がその娘だそうです」

「親子で来ちゃったかー」


 深く考えないことにしたリリは、映像を空から広場の方に移す。


 広場にいる人々はドラゴンを生で見れたという話題で、楽しそうに盛り上がっているように見えた。

 リリは、船よりも町にドラゴンが出たことの方が警戒した方がいいんじゃないかと思う。


「ペガサスよりもドラゴンの方が見慣れてそうだけど、野生のドラゴンと見分けついてるのかな」

「襲われるまで気がつかない可能性がありそうですね」


 ファーストの言葉に、だよねーと返事をしてから、リリは映像をサッと屋台に戻す。


 空を走る光がいる方から、うっ、という呻き声が聞こえた。


 リリは暗い部屋に響いた声に驚いて聞く。


「何!? 何かあった??」


 空を走る光は返事の代わりに、バラバラに屋台を指差して同時に話し始める。


「あの丸い絵が描いてある屋台で売ってるキナッシュが、サクサクしててうまい」

「黄色の屋台が焼き菓子のお店なんですが、ドウサが甘酸っぱくて美味しかったです」

「あの大きい看板の屋台のワータックが食べたって満足感があったな」

「フックの実は珍しいから見つけたら買った方がいいわよ」

「リシュブって名前のパン屋なんだけど、すごいふわふわの食感でオススメだよ」


 そういえばこっちは勝負の最中だったと、リリが話を聞こうとすると、スピーカーからも声が聞こえる。


『皆様、こちらのお方がセルテガス・ルツマー・ペーケル陛下、そしてご息女であられるベシチア・ルツマー殿下です』


 ニルナムがくー達に皇帝を紹介している声だと気づいたリリは、同時に始まった……! と焦った。


 どっちを聞こうと迷っているリリに、ファーストが言う。


「リリ様、くーの方はギルドでもおこなった自己紹介とゴーレムの説明から始まると思われます。そちらは私が聞いておきますので、リリ様は空を走る光から話を聞き、アルバートとサラに指示を出してはいかがですか」


 リリは迷っている場合ではないと頷く。


「そうだね、そうしよう。後で簡単に教えてね」


 ファーストがお任せくださいと言うと、スピーカーの音が小さくなった。

 リリは気を取り直して、空を走る光に言う。


「同時に言われても分からないから、もう1回バラバラに言ってくれる?」


 空を走る光は目を合わせて、バラバラに言おうとして我慢できなかったようで、また同時に言った。

 これじゃあ伝わらないと、空を走る光はもどかしそうにしている。


 リリは別々に聞くのは無理そうだと思った。

 慌てた様子で紙とペンを取り出して言う。


「分かった。1人ずつ聞こえたのを書いてくから、聞き終わるまで繰り返してね」


 リリは聞き直して、サクサクしてるキナッシュ、甘酸っぱい焼き菓子ドウサ、満足度が高いワータック、珍しいフックの実、ふわふわのリシュブパンとメモした。


「紹介ありがとう。とりあえずこれで平気かな」


 空を走る光は脱力して、天井を見上げた。


「今回はやばかったな」

「ドラゴンが通った時一瞬治ったのがよくない」

「屋台がまた見えた瞬間がきつかったよね」

「一瞬治ったのでちょうどホッとしてました」

「1回ダメになるともうダメね」


 はぁーと息を吐いている空を走る光を見ながら、リリはファーストに聞く。


「今どんな感じ?」

「自己紹介が終わり、皇帝が援軍に来てくれたことへ感謝の言葉を述べ、現在、ゴーレムの説明に入った所です」


 スピーカーから、くーがタイプによって能力が違うという説明をしている声が聞こえている。


「まだ平気そうだね」


 リリは買い物を先に終わらせることにした。どれを買おうかと考えて気がつく。


「120個……いや、もっといるし、全員分は買えないよね」

「……持って帰れないだろうね」


 空を走る光は、さらに人が増えるとこうなるんだったと思い出した様子だ。

 リリは買ってきてと言えば無理をしてでも買ってきそうな気がしたので、考えを改めることにする。


「皇帝が帰ったら直接行こうと思ってたし、今はアルバートとサラがおかしくない程度に買い物して帰ってきてもらうことにしよう」


 リリはピーちゃんを動かして言う。


『思い出すのに時間がかかったけど、あそこの屋台のフックの実っていうのが珍しくてオススメみたいだよ』

『フックの実ですね。どのような味なのでしょうか』


 楽しそうに話すサラの声が聞こえ、果物や木の実だと思われる物が沢山置いてある屋台に近づいていく。

 リリはそういえば聞いてないと思ってナリダを見た。


「どんな味なの?」

「甘辛いから焼いて食べると美味しいわよ」


 リリはフックの実という単語のイメージからその味は連想できなかった。


「ちょっと想像できないんだけど、木の実なの?」

「フックプラントって名前の魔物から取れる実よ」

「なるほど」


 リリはそういうパターンもあるんだと思った。

 ナリダが映像を指差して言う。


「あの黄色いのがフックの実よ」


 リリは大きめの梨みたいだと思った。

 リリが全員に何個食べたいか確認してから、ピーちゃんが言う。


『あの黄色いのだね。お土産は7個で、あとはふたりが食べたい量を足す感じで任せたよ』


 リリは買い物はこれでよしとしてファーストに言う。


「ファースト、終わったけどそっちはどう?」

「こちらは皇帝がゴーレムを実際に動かす体験をしている所です」

「よかったー。説明中に買い物が終わったね」


 リリが安心していると、スピーカーから低い声が聞こえる。


『とても簡単にできているのだな。行動やタイミングを覚える必要はあるが、訓練さえすればすぐ使えそうだ』


 声が聞こえてすぐ、リリはファーストにこれが皇帝の声か確認した。

 ファーストはそうですと頷く。


 くーと皇帝の声がスピーカーから響く。


『このゴーレムは、誰にでも使えるをモットーにしておりますワン』

『なるほど、このようなゴーレムがあるから、キャラリックメルでは戦闘員が少なくとも、十分氾濫に対応できているのだな』


 リリはいい声で何言ってるんだろうと思った。


 くーは感心したような雰囲気で言う。


『そこまで考えが及ばれるとは、おみそれしましたワン』


 こっちはこっちで否定してないし、とリリは引いた様子で聞いている。


 皇帝がふっと笑う。


『くー殿、失礼な頼みであることは重々承知しているが1つ頼みたいことがある』


 真摯に頼むような声で皇帝が言う。


『壊してしまうかもしれないが、ゴーレムと戦わせてはもらえないだろうか』


 この世界の人って皇帝まで戦闘狂なの?? リリはいぶかしんだ。


 くーが言いよどむようにそれは……と言うと、女性の声が入ってくる。


『試したいというなら、存分にやらせてやれ』

『乙姫様! よろしいのですワン?』


 くーとリリの疑問に答えるように、乙姫は言った。


『どの程度で壊れるのかを知っておかねば、兵達に注意を促すこともできまい。それにこの辺りの魔物に十分通用すると分かれば、作戦を変える必要もあるであろう。大勢の者の命を預かる者として、責任を持って自分の目で確かめたいというのであれば、応えてやるのが道義というものよ』


 リリはただ戦いたいからじゃなかった……と納得した。


 乙姫は笑って、ああ、もちろん、と続ける。


『ちょうど104体持ってきている。すべての種類を試してもらっても構わない』

『……気遣い感謝する。ニルナム準備を頼む』


 かしこまりました、と声がした後、ニルナムが部下の兵士に向かって指示を出す声が聞こえた。


 同時にキャラリックメルの面々の感嘆のため息が聞こえる。


『かのお方はこうなることも全てお見通しだったということですワン?』

『何かあって壊れた時の予備だと仰られていたからな。妾達が考えるまでもなく、こうなることを事前に想定されて送り込んでおられるということよ』


 ルエールとカーヘルの声が聞こえる。


『なんてお優しいのでしょう』

『準備を怠らないあの方らしい周到さですね』


 キャラリックメルの者達からの感心したような声が続いている。


 リリは、呆れたような顔をして言う。


「ファースト、音量思いっきり下げてくれる?」

「かしこまりました」


 ファーストの返事と共に、スピーカーの音はほとんど聞こえないくらいになった。

 これでよし、と頷いているリリを見て、空を走る光はそんなに聴きたくないのかと笑っている。


 ウィルが言う。


「でもリリさん、僕たちも本当に準備がいいと思うよ」


 嫌そうな顔をしたリリに笑って、ダグとルティナが言う。


「あの大きさのゴーレムだと、鉄が簡単には集まらないよな」

「すぐに作れたということは、それだけの鉄を貯めていたということですよね」


 空を走る光はしみじみと鉄を集める大変さを想像しているようだった。


 リリは素材ガチャのハズレ枠だから大量にあるんだよとは言えなかった。

 ポジティブに考えることにして、言う。


「まあ、たまたま沢山ある金属で良かったよね」


 空を走る光はたまたまで集まる量じゃないんだよ……と、持ち上げられることを回避しようとしているようにも見えるリリを見た。


 ファーストは何も言わずに頷いて、聞く。


「リリ様、皇帝とゴーレムの戦いの様子はご覧になりますか?」


 リリは空を走る光の方を向いて言う。


「みんなが見たいなら?」


 空を走る光は、顔を見合わせてボソボソと話し合いを始めた。


「普通見たくないか?」

「そうね。でもリリさんからしたら弱すぎて、見る所がないのかもしれないわ」

「ザーツマールで最強って言われてる人なんだけどな」

「リリさんの雷魔法が当たって終わりな気がします」


 空を走る光は何か思い出したくないことを思い出してしまったかのように、首を振って忘れようとしている。

 ウィルが聞く。

 

「リリさん、本当に興味ないの?」


 リリはザーツマール最強という肩書きには興味があったが、隠密を解いてまで見たいとは思えなかった。


(アイアンゴーレム相手に本気で魔法を使ったりしないよね。そうなると、私に分かるのってゴーレムより強いってことだけだろうし、それなら分かる人が見て教えてもらった方がよさそうだよ。それに何より……)


「アイアンゴーレムで戦う相手じゃないからね。4回負けるところ見ても、全く面白くないよ。ゴーレムバトルの参考にすらならないし」

「やめさせますか?」


 リリは、反応が速いとファーストを見る。


「いや、いいよ、このままで。そもそも外の人たちでも倒せるようにで作ったアイアンゴーレムなんだから、この勝負で負けるって逆にやっておいた方がいいんじゃないの? 知らないけど」


 一瞬納得しかけた全員が、勢い余って転んだような気分だった。

 ファーストがすぐに持ち直して言う。


「そうですね。既に皇帝の思惑からは外れていますので、ゴーレムのことを倒すことができる存在だと知らしめるには丁度よい機会かと」

「皇帝の思惑って?」

「皇帝はゴーレムと戦ってもいいのかを確認した際に、乙姫が入ってこなければ、直す際の材料などを自ら提供すると申し出るつもりだったと思われます」

「鉄をくれようとしてたってこと?」


 ファーストはリリが考えた内容から続くように話す。


「そうですね。今回の場合はそうなるので、皇帝はこのゴーレムを直す際に必要な物が、通常のアイアンゴーレムと同じである、という情報も手に入れることになります」

「急に産業スパイ物みたいになったね。え、つまり出会って即、ゴーレムの秘密を探ろうって会話をしてたの? 怖すぎない?」


 リリの警戒心が上がった。

 一緒に話を聞いている空を走る光は違う感想のようで、ウィルが言う。


「リリさん、その可能性がないとは言えないけど、直すための材料については戦わせるってなったら普通聞くものだと思うよ。一旦下げて直してまた突撃させるっていう作戦もできるだろうし」

「確かに」


 そう思ったリリは、ファーストを見つめた。

 ファーストは話し出す。


「鉄を渡せば、直すための技術者が誰であるか知ることができるでしょう。ザーツマールの技術者が直すとなれば、ゴーレムに自分の国の技術者を近づけて調べさせる口実になります。もしコアが壊れてしまったとなれば、新しく作り直すための材料を教えてくれと頼むつもりだったかもしれません」


 リリは空を走る光に視線を向ける。

 嫌な想像ばかり浮かんでいるような顔をしていた。


 空を走る光も何も言ってこなくなったので、リリは引いた様子で言う。


「まだ氾濫で使ってすらいないのに、もうコピーしようとするとか早すぎるよ」


 少し考えるような間の後、ファーストが言う。


「……確かにそうですね。自分達で同じ物を作るための準備と考えるのは早すぎたかもしれません」


 リリは自分の適当な発言で考えを変えられても困る気がした。


「そこで納得するの……?」

「我々はリリ様が製作に関わっていると知っているので、間違い無く素晴らしい物だと断言できます。ですが、皇帝は模倣した方がよいと考えるほど、ゴーレムについては知らないでしょう」

「そこは空を走る光の紹介だからにはならないんだね」

「空を走る光の紹介で保証されるのは、今回の氾濫でキャラリックメルの者が起死回生の働きをするという点になります。そのせいで模倣するより先に解決しなければならない、切羽詰まった問題が発生したのでしょう」

「それは?」


 ファーストはリリを真っ直ぐ見て言う。


「褒賞金をいくらにするかです」


 急に褒美をあげる側の苦労話みたいになったとリリは思った。


「もう少し詳しく教えてもらえる?」


 ファーストは頷く。


「皇帝はゴーレムを実際に動かしてみるという体験をした際に、今後キャラリックメルのゴーレムは商品として扱われるだろうことを察せたはずです。そうなりますと、褒賞金はゴーレムを100体借りた場合にかかる費用を基準として、それを超えた金額に必ずなるようにしたいと考えていたと思われます」


「……察しがよすぎる気もするけど、皇帝だしまあいいとしよう。つまり、皇帝はゴーレムを100体借りた時の値段が分からなくて困ってたってこと?」


「そうです。ですから、目利きを絶対に失敗したくないと考えた皇帝は、できる限りの情報を集めたかったのではないでしょうか」


 リリは大きなドラゴンが、目利きに失敗したくないと悩んでいたらを想像した。


「ここの皇帝って見た目のイメージを保たないといけなさそうで、大変だね」


 ファーストは同意するように頷いた。

 空を走る光は話の着地点に気が抜けたようだ。


「王族とか、貴族が褒賞金で悩んでるなんて、そうそう考えないわよね」

「見抜かれたくなさそうな内容だしな」


 買い物が終わった様子の映像から聞かれる。


『ピーちゃん 、歓声が遠くから聞こえていますがどうされますか?』


 リリはファーストに聞く。


「戦い始めたの?」

「開始は少し前になります。今の歓声は、皇帝がドラゴンに変身してゴーレムに一撃当てたところで、盛り上がったようですね」


 リリは、ふーん、と言って聞いた。


「もう帰ってもいいよね?」


 そんなに見たくないの、と笑って空を走る光は頷いた。

 ファーストも頷いている。


 ピーちゃんが言う。


『歓声は放っておいていいよ。それよりも、帰ってフックの実を炭火で焼いて食べよう』


 アルバートとサラはバーベキューコンロで焼く所を想像したようだ。


 一瞬の間ののち、アルバートが聞く。


『焼くのですか?』

『甘辛くて焼くと美味しいみたいだよ』


 ピーちゃんの言葉を聞いて切り替えた様子のサラの声が聞こえる。


『楽しみです』


 ピーちゃんからの映像は、城壁へ向かった時とは逆方向に進み始めた。


 リリは映像を消して言う。


「ということで、午前中の鑑賞会はこれで終わりだよ。あとはこの部屋を片付けて下に行こう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。