44話 収穫
リリは店舗で目を覚ました。
何で店舗で寝てるんだっけと、リリは昨日の夜を思い出す。
昨日の夜、リリは夜ご飯を店舗で空を走る光と一緒に食べたあと、無事に闇のオーラが消せるようになった1〜34番を店舗に連れてきて、ここで生活するように伝えた。
1番は転移が使えるようなので、それでさっそく明日からデメシードを取りに行ってもらうことになる。
リリは1〜34番の生活必需品と制服を、カーヘル達とささっと作り上げて彼らに渡した。そのあと、寝たことがないと言う彼らに〈範囲〉〈浄化〉をかけてから寝巻きを着せて、拠点の者達と一緒に頑張って寝方を説明した。
意識を無くすとか飛ばすとか気絶する方向で拠点の全員が説明していたので、リリはレベリングの時の彼らの寝つきの良さに納得した。
安心感で寝てないんだねと。
リリはちゃんと言った、安心して横になって目を瞑ってると眠くなるよと。
拠点の誰もそんなことを考えたことがなかったようで、リリの寝方を試してみようと全員が思ったようだ。
その日は店舗で全員が寝た。
1〜34番がどの寝方を試したのかはリリには分からなかったが、無事に寝れたようなのでリリも最後に寝ることができたのだ。
昨日のことを思い出したリリは全員に〈無詠唱〉〈範囲〉〈浄化〉をかけた。
そして転移でトランプの館に移動する。ベルを鳴らす。
急いでまだ解散していない治療班の者達が、食事を持ってくる。
「しばらくはみんなトランプの館にいることになりそうだけど、平気かな?」
「もちろんですリリ様。ここにいるとリリ様の手料理が食べられて最高という話を、皆しています。寝る場所はきちんと全員分の物を地下に用意してありますので、ご安心ください」
「じゃあ安心だね。あとで社長のくーに伝えておいてくれるかな。店舗ができたから人の見た目をしている人達に商売をやってほしいんだよ。一応外からやってきましたっていう風にしたいから、店員と職人と警備で人っぽい人達を集めるように言ってね。それでグルークの町に検問所通って、その人達が入るようにしよう。設定は黒の砂と同郷で、勇者パーティを治した商人だよ。裏ならだれでもいいからね。高さは4mくらいしかないから、それだけ気をつけて」
「畏まりました。必ず伝えます」
「あと、ここから店にとりあえず42人が食べる量を持ってきて欲しいな」
「旗を使えば簡単です。お任せください」
リリは店舗に戻ってまだかなりのスペースがあるそこに、テーブルと椅子を増やした。
その音で全員が起きたようだ。
リリは全員におはようと言いながら食事を並べている。全員がおはようございますと返して、リリを手伝った。
料理を並べ終わったあたりで、全員分がやって来る。すごい量だったので、多いなと全員が思った。それを並べ終わるのを笑って見ながら、いただきますと拠点の者達は言う。
それを見て1~34番もいただきますと言ってから真似をして食べ始めた。そしてこれが美味しいという感情かと、楽しそうに食べ始める。
全員が満腹になってから1〜34番とトレニアは、リリに渡された籠を持ってデメシードを取りに向かった。
初回なのでトレニアに場所を見てきて欲しいと、一緒についていってもらうことにしたのだ。
そしてコボルトのくーと何人かがやって来る。
コボルトのくーの肩書きは、ゲームの時に外で商売をしていた者達のトップ、つまり社長だ。レア装備品評会の審査員も務め、品物の価値を見極める目もたしかである。ピーちゃんから送られてきた映像からこの世界の物価の把握もしており、新たな世界での商売にやる気十分といった様子だ。
くーはリリに聞く。
「何を売るつもりですかワン」
「くーたちにはしばらく支配を治せるアイテムを安く売ってほしいんだよね。この町の人達が支配から治るようにしたいからさ」
「なるほど、利益は度外視ということですかワン」
「まあ、他にもいろいろ売ってもらう予定はあるからしばらくはって感じかな、徐々に店舗数を増やせると楽しいよね」
「それは楽しそうですワン」
「じゃあ、今日から営業を開始したいからトランプの館にいる人達に言って商品を仕入れてくれる? ちょうどいい人材が揃ってるよ。売る人たちは検問所を通るようによろしくね」
「畏まりましたワン」
そう言って今来た全員がトランプの館に戻っていった。
そしてしばらくして、空を走る光がやって来る。ドアをノックする音が聞こえたので、クロが開けに行った。
全員が急いでやってくる。
ウィルが言う。
「全員綺麗になってからちゃんと来たよ。これからもそうする予定だからご飯をお願いします」
「いいでしょう。じゃあそこに座ってね」
リリは転移してベルを鳴らす。
先ほどと同じ治療班がやってくる。
「リリ様、皆、仕事ができたって喜んでました。ほとんどの人員が作る人たちですからね。他の者も生産系のスキル上げに、いそしむようです」
「それはいいね、流れる水くらいならすぐ作れるようになるからスキル上げも順調にできるよ。今回のメンバーは全員、確かスキル自体は持ってたよね」
「はい、全員が取り組んでいましたので問題ないかと」
「なら引き続きよろしくね。ゆっくりやった方がいいよ、仕事がなくなるとつまらないんでしょ」
「確かにそうですね、伝えておきます。遊びながらくらいが、ちょうどいいかもしれません」
「うんうん、じゃあ空を走る光の食事をとりあえず持ってきてね。もうだいたい量は分かったでしょ」
「畏まりました。持って参ります」
リリはそう言って店舗に転移した。
「ご飯は一気に持ってきてくれそうだよ。覚悟して食べてね」
「問題ないですよ。こいつら速すぎます」
デモクが言っている間に食事が届いた。
空を走る光はいつも通りのすごいスピードで食べる。
食べている時に言う。
「サラとアルバートはここで寝泊りすることになったから、みんなの家に行かなくて良くなったよ」
「分かったよ、というか僕たちも食費は出した方がいいよね。いくらがいい?」
「ここの維持費っていくらだっけ」
それにアルバートが答える。
「たしか金貨1枚が月に払う金額だったかと」
「じゃあそれでいいんじゃない? これで税金以外は利益だね」
「分かったわ、1人金貨1枚にしましょう」
「そうだな、それくらいは必要だな」
リリは少し驚いたように聞く。
「税金ってそんなにするの?」
「いや、リリさんの所の料理、美味しいから外で食べようと思ったらもっとするよ。それに、しばらくは売れ続けるだろうから、税金はもっと必要だよ。その後の予定はあるの?」
「きっと冒険者しか来なくなるんじゃないかってアルバートが言ってたから、きっとそうなる気がするね」
「じゃあ、あんまり変わらなそうだね」
「そうだね、こっそりすごいものをがモットーだからね」
グローが冒険者達がここに大量に訪れるようになると、やばいことになるだろうなと想像しながら言った。
「完全に俺達向けじゃないか、あまり広めない方がいい」
「今日からとりあえず水は売るからよろしくね」
「ギルドに言っておこう。どれだけの奴が支配にかかってるのか、分かる方法が見つかってるといいな」
リリが楽しそうに言う。
「第一号はきっと衛兵の大将だよ」
「それはありえそうですね」
ルティナは笑っている。
リリは今日の予定を立てるために聞く。
「そういえば、今日は町長さんにいつ会いに行けばいいのかな?」
空を走る光はいつもどうだったかなと、思い出している。
ナリダが教えてくれた。
「ほとんど午後だった気がするわ、朝は昨日のことを聞いて今日何をするか考えるのに忙しいみたい。お昼を過ぎてから誰かに会うっていう形になっているみたいよ」
「じゃあ今日はここで開店準備をして、皆がお昼を食べに来た辺りで冒険者ギルドに行こうかな」
「それがよろしいかと思います」
ファーストが同意したのを聞いて、リリは頷いている。
ご飯を食べ終わった空を走る光は出ていく。
トランプの館からここにご飯を持ってきてもらう方法が必要だと考えたリリは、ベルを2つ取り出す。
「じゃあ今からちょっと調理場にベルを置いてくるね。面倒だからさ」
そう言ってリリは一瞬で旗を触って転移した。
全員がリリを止める間もなかったので、驚いた様子で旗を見つめている。
リリは調理場にベルを置いて伝える。
「悪いけど、このベルが鳴ったら食事を店舗に持ってきてくれないかな」
全員が畏まりました、リリ様と言って、仕事に戻っていく。
クッキーをこっそりと置いた。
その後リリもさっさと転移で戻った。
「どうしたのみんな」
リリ様がやることではないですよ、と全員が言った。
もうやっちゃったから問題ないね、とリリは言って、くーを待つ体勢に入る。
その後検問所を無事に通れた商人設定の者達と、くー達がやってきて開店準備を始めた。
完全に人にしか見えない者たちだけで、店員をやることになる。
リリ達にも様子が見えるように、こっそり店舗にカメラと休憩所にモニターの設置を行う。
しばらくすると、本当に最初にやってきたのが衛兵の大将だったので全員で笑ってしまった。
大量に水を買っていく大将。どういう飲み方がいいのか聞いてくる。
なので1口ずつに分けて飲んだ方が効果的ですよ、と勇者パーティが飲んでいる様子から分かったことを伝えてあげた。
大将は礼を言ってそそくさと、詰所に帰っていく。
しばらくすると噂が広がったらしい。心配になった人や、実際にかけられていたことが分かった人などが続々とやって来る。
全員が安い水を続々と買っていく。
すごいスピードで水が捌けていくので、くーが一度トランプの館に何人かを連れて戻っていった。
無事にくーが戻ってからも、同じくらいの人はやってきた。何度も楽しそうに、くーがトランプの館と店舗を往復する。
しばらく往復が続いたところで、空を走る光がやってきた。
勇者パーティだ、とその場にいた人たちが道を開ける。
彼らは大量の人が店に買いに来ているのを見てから、裏に行って上に上がってきた。
3階に来てテレビを見ているリリ達に、ウィルが声をかける。
「すごいね。こうやって売り場の様子が分かるなんて、便利だね」
「そうだね。こうやった方が誰にもバレずに混み具合とかも分かるから便利でしょ」
「本当にね。今日は大盛況みたいで安心したよ」
「しばらくはこんな感じだろうけど、少ししたら落ち着くんじゃない?」
「どうして?」
「皆2Lを大量に買ってるから、そんなにすぐにはなくならないよ」
「2L?」
「これくらい」
リリは2Lペットボトルを出して見せてあげた。
それを見た空を走る光は確かに大量に買えば、かなりの量があるということが実感できる。同時に、下で売っている時にはこれは使ってなかったなと思った。
ウィルが言う。
「確かにこの量なら、しばらくはなくならないね」
「でしょ。それに町の人達の不安がなくなったら、売れなくなるだろうね」
「かなり長く続きそうだよ、それ」
「それはそれでいいんじゃない? 一応水は売り続けるってことで。大繁盛でくーも喜んでたし」
リリの言葉を聞いてルティナが気になったようだ。
「くーさんは誰ですか?」
「呼びましたワン? リリ様」
急に現れたコボルトに、空を走る光は驚いている。
リリは紹介した。
「この人がくーだよ。くー、彼らが空を走る光だよ。彼らがここに来たことがバレたから、さらに売れるようになるよ。気をつけてね」
「それはそれは、喜ばしいことですワン。裏を増やすことにいたしましょう。作る者たちはかなりの余裕が感じられましたから、あとは持ってくる者たちの努力次第ですワン」
くーは急いで裏の人員と水の在庫の準備を始めた。
それを見たウィルはリリに聞く。
「コボルトもリリさん達の所にはいるんだね」
「みんなが知ってる種族よりも、すごい数のいろいろな種族がいる自信があるよ」
「すごいことになってそうだね」
リリは楽しそうに返す。
「みんな楽しそうにしてるから大丈夫。ドラゴンとスライムが友達だよ」
「すごい光景だね。東の国もそこまではなってなかったかな」
「東の国にはいろんな種族がいるんだ?」
「そうだね、初めて行ったときは僕たちも驚いたよ。人以外にも、こんなにいろんな種族がいるんだってね」
それを聞いてファーストが疑問に思ったようだ。
「皆さんの魔物と普通に大丈夫な種族の違いが、分かりませんね」
「ファーストさん、では何か言ってみてよ」
「コボルトは」
「魔物だよ」
「ゴブリンは」
「魔物だよ」
「聖族や魔族は?」
「それっているのかな本当に、いたとしたら大丈夫な方だと僕は思うよ」
「俺は一応魔族なんだが」
「デモクさんって、コウモリの獣人じゃなかったんだね」
「なるほど、見た目すら伝わっていないと」
ファーストが言った言葉に、リリが言う。
「分かった、見た目が人に近いか近くないかで判断してるね。大きくても小さくても人っぽい人しかそこにはいないんでしょ。そして話せるか話せないかも、きっと判断基準だよ」
「確かにゴブリンやコボルトは普通話せねえな」
ダグの言葉にリリが聞く。
「なら、東の国に行くときはどうしたらいいんだろうね。うちのみんな、全員話せるからある意味全員、人っぽいよ」
「スライムも話すのか、いよいよ意味が分からなくなってきたな」
グローの言葉に、プニプニが反応した。
「ははは、私もスライムのうちから話せたからね、問題なく話せますな。そうですよね、リリ様」
「そうだね、プニプニ。まあ、行くことになったときに考えようかな。じゃあ、とりあえず昼食だね」
リリはそう言ってベルを鳴らす。
全員に〈無詠唱〉〈範囲〉〈浄化〉をかけた。
食事が続々とやって来る。
楽しそうに全員が食事をし始めた。
4回ほどベルを鳴らして食事が終わる。
そして、空を走る光と黒の砂が冒険者ギルドに向かうことになった。
ファーストとデモク、プニプニ、クロは水を運ぶのに協力するらしい。
ピーちゃんを操るリリ1人を残して休憩室から、全員がいなくなった。
8人で冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに行くと、町長のもとに案内するという人がいるので、その人について行く。
冒険者ギルドに近いところに、町役場のような場所がある。そこで町のだいたいの指示を行っているようだ。
そこに入って少し進んだところにある扉に入る。
繊細そうな見た目の町長がそこにはいた。
声をかけてくる。
「お久しぶりですね。空を走る光の皆さん。そしてはじめましてですね、黒の砂の皆さん。私はこの町の町長をやっているリーブルという者です」
それを聞いて、ピーちゃんは元気にアルバートとサラは品よくはじめましてと言った。
アルバートとサラが少し頭を下げると、それに合わせて周りに光が少し舞っているようにリーブルは感じた。
空を走る光はお久しぶりですと言っている。
リーブルは初めて見たアルバートとサラのことを、報告にあった通り、雰囲気が確かにどこかの貴族のようにみえると思った。
それもかなりの高位貴族なのではないかと、疑っている。
それを聞いたりしないのは、2人が自分達から言う、もしくは必要にならない限りは聞かないのが、冒険者になった貴族への対応としては一般的だからだ。
聞かれたくないことを聞いて即戦力を逃すのは惜しいとも、もちろん思っている。
「皆さんお手柄ですね。皆さんのおかげで町の平和は守られました。この町の代表として、私からお礼を言わせていただきます」
そう言ってリーブルが頭を下げた。
それにどういたしましてと全員で言った。話し方は本当に気にならないようだ。
そのあと今回の事件で、支配にかけられた人がたくさんいることが犯人の自供で分かっているので、黒の砂の知り合いの商人が店を開いてくれて助かるという話や、犯人の自供で色々と表沙汰になったことがあるので、これから忙しくなるといった話などをした。
リーブルは黒の砂の話を少し聴きたかったので、ピーちゃんのことを、見たことも聞いたこともない種類の使役獣だと思い聞いてみる。
「あまり詳しくないのでお聞きしたいのですが、アルバートさんとサラさんは、ピーちゃんとはどうやって知り合ったのですか? ああ、もちろん話せない内容でしたら、そう言っていただければと思います」
それを聞いて、黒の砂はそういえば誰にもはっきりとは聞かれてなかったなと思い出した。
空を走る光はどういう設定で、町に来ているのか楽しみと不安が半々だ。
「大丈夫です、お話ししますよ。ピーちゃん とは子供の頃に出逢いました。あの時は――――」
ピーちゃんは思う。
考えてたのってピー様って呼ばれる原因になる出会いの設定だから、そのままでいいのかな? 重くない?
アルバートとサラはピーちゃんが、どれだけ大事かを分かってもらいたかったので、そのままでいくようだ。
アルバートとサラは子供の頃、馬車に乗って移動しているところを、多くの魔物に襲われた。
魔物に抵抗もできず護衛や御者、他の乗客が見るも無惨に食い殺されていくところを2人は見てしまった。
次は自分の番だと思っていると、ピーちゃんが現れその魔物達を痺れさせ動けなくしてしまった。
そして、ピーちゃんが2人に速く逃げるよと声をかけてくる。
必死になってピーちゃんに付いていき、なんとか2人は魔物達から逃げることに成功する。
落ち着いたピーちゃんとアルバートとサラは、お互いに名を名乗った。
これからどうしようと途方に暮れる2人を、2人が行く予定だった町まで連れて行くと、ピーちゃんは約束する。
幸運なことに道なりに進めば、目的地に辿り着くことは2人も知っていた。
そしてピーちゃんのおかげで魔物の位置を把握できた2人は、魔物を避け、時に見つからないように隠れながら道やその近くの森の中を進んでいく。
水は魔法で、食べ物はピーちゃんが果物を取ってきてくれたのでどうにか食い繋ぐことができる。
最終的に3日かけて、どうにか3人は目的の町に辿り着くことができた。
3人は3日の間にかなり仲良くなっている。
だからその町にいる親にアルバートとサラは頼み込み、命の恩人のピーちゃんと一緒に暮らすことになったのだ。
ピーちゃんは結構重い話で反応がし辛いと思ったが、この世界に生きる人達はちょっと違う感想を持ったらしい。
ウィルとルティナが言った。
「完全に子ども2人が見つからないように行動するなんて、ピーちゃんさらっとすごいことをしてるね」
「果物もピーちゃんなら空を飛んで、簡単に取ってこられそうですし。おふたりともピーちゃんに助けてもらえて、良かったですね」
「ええ、本当に良かったです。ピーちゃんに助けられてななければ、今ここにはいませんからね」
町長リーブルはピーちゃんに聞く。
「こういうことを聞ける機会はあまりないので、できれば教えて欲しいのですが。ピーちゃんは、どうしてアルバートさんとサラさんを助けようと思ったんですか? 護衛の者達がやられる程の魔物が出てきたということは、こう言ってはなんですが、ピーちゃんにとってもだいぶ危険な行為ですよね」
ピーちゃんはこの世界の人達にとって、馬車に乗っていたら魔物に襲われるのは普通のことで、護衛の人達がやられるのは運が悪かった程度なのかもしれないと思った。
ピーちゃんは助ける必要はなかったのではと言いたげな、リーブルの質問にこう答えた。
「森に話し相手がいなくて、暇だった時にアルバートとサラが襲われそうなのを見つけたんだ。だから助けたら話してくれるかなと、思って助けたんだよ。人間の大人だったら武器を持ってるから、ピーちゃんのこと襲ってくるけど、人間の子供なら大丈夫かなって考えたんだ。あとあの魔物は空飛べなさそうだったから、ピーちゃんは安全だよ」
「なるほど、貴重なお話ありがとうございます」
リーブルはピーちゃんぐらい頭のいい使役獣になってくると、危ない人間と大丈夫そうな人間の区別がつくんだなと思った。
そして、子供だけで乗合馬車に乗せることはあまりないので、やはり個人で馬車や護衛を用意できる地位に、2人の親がついているのではないかと思った。
空を走る光はもしかして、リリが自分達を助けた理由も似たようなものなのかもしれないと思った。
リリは外のことが知りたいから、話を聞きたいと言っていたし。
強さという意味では自分達だって、リリからみれば子供と脅威度はたいして変わらないだろう。
そしてちょっと話したあと、リーブルは最後に言ってくる。
「それで、今回の事件解決のお礼に、何かして欲しいことなどがあればぜひ言ってください、できる範囲で何とかしますよ」
それを聞いて空を走る光は町の人達が安心して暮らせるように、今回のような事件がまた起こらないよう、検査する体制を見直して欲しいと言った。
ピーちゃんもコフシーの店主が気づかずに犯人に協力していたことがばれないように、調味料を回収してほしいことを伝える。
それを聞いて町長は欲がない人たちですねと笑っていた。
「必ずそうなるようにします。任せてください。コフシーの店主に非がないことは、犯人の自供で分かっていますから問題ありません」
それを聞いて、全員が安心したところで、解散になった。
部屋を出て、空を走る光に聞く。
「今日はこれからどうするの?」
ウィルが答える。
「なんとピーちゃんのおかげで、ナリダが魔法を外さなくなったんだ。昨日はあんまり実感がなかったからやめておいたけど、今日は大丈夫そうだったから別行動も入れてみたよ。そしたら午前中で60頭を超えたんだ。だから今日はお昼の後はゆっくりできそうかな」
「いいね、じゃあみんなには収穫を手伝ってもらおうかな」
ナリダが言う。
「楽しそうね、それ」
「じゃあ、みんな店に行こう」
店につく。
かなりの客がまだ入ったり、出たりを繰り返している。
勇者パーティが来店したので道ができた。人混みを気にせずに店の中に入っていく。
3階につくとリリがピーちゃんを置いたまま、戻ってきていたファースト達を含めて全員を豊穣エリアに転移させる。
転移させられた全員が目にしたのは目の前に広がる広大な畑だ。建物よりも、畑や田んぼ、様々な物がなる木の方が大量にあることが分かる。
空を走る光の全員がその光景に驚いていた。
そして納得する。確かにあの葉っぱはここで作られてそうだなと。
リリは太陽の葉が収穫できる木に全員を案内する。
「これが太陽の葉が収穫できる太陽の木だよ、今日はこれの収穫を手伝ってほしい。見たところこの木が一番収穫に向いてるからね。枝は傷つけないように葉だけ取るように気をつけてね」
リリはそう言って足場を出した。
上に向かっていけば無事に収穫できそうな高さだ。
その後リリはお手本でハサミを持って上に上がる。
葉の根元から切った。
そして降りる。
「こうやって収穫してね、ハサミはこういう風に使ってね」
リリは近くでハサミの動かし方を見せた。
「やり方は分かったよ」
空を走る光が頷いているので、全員分のハサミと足場を用意する。
「端から全部じゃなくて、1個とったら次は1個飛ばすくらいの間隔で切っていってね」
リリがゲームでやったときはそれが一番効率が良かった。なのでそう伝える。
全員が分かったと返事をして、収穫を始めた。
見事に全員が収穫に成功したようだ。籠いっぱいの太陽の葉が出来上がる。
隙間ができて残っている葉にも、光が当たりやすくなったようだ。
リリは言う。
「じゃあ、明日からはこれも売りに出そうかな」
「いいですね、飲み物だけではなく食べ物でもどうにかなるのは、すぐに治りそうです」
「コフシーの店主に頼んでこれを入れたやつを作ってもらうのはどうだ、そしたら食べやすそうだ」
ルティナとグローが言っているのを聞いてリリは言う。
「それならコフシーで売ってもらった方がいいね、うちでそれも売るとなると人が来すぎだよ」
「水だけでもだいぶ人がすごいですからね。それはいいかもしれません」
リリは先に帰ってもらってくーに伝えて欲しいと思ったので、言った。
「じゃあ、クロとデモクどっちが行く?」
「そう聞かれると、2人で行った方が問題ない気がしますね」
「デモク様の言う通り2人で行ってまいります。くーさんにこれを持っていってさっきの話を言えばいいんですね」
「そうだね、値段の交渉とかそういうのはくーの判断に任せるよ。別にうちで売れそうだと思ったら、そのままうちでもいいからね」
「「ではそう伝えてまいります」」
「よろしくね」
2人は籠を持ってくーのもとへ、その場で転移して向かって行った。
「じゃあ収穫も終わったし、また店に戻ろうか。そろそろ売り上げも分かりそうじゃない?」
リリはその辺の畑に植えられている物が何の料理に使われているのか解説を入れながら、最初に転移した場所に戻った。
そして店に転移する。
店に着くとくーがリリに言ってきた。
「リリ様、私考えましたワン。この町では売っていないような調味料として、普通にここで売るのがよろしいと思われますワン。そうすれば、水が売れなくなってもそれなりには人が来るようになると思われますワン」
「流石敏腕社長だね。じゃあしばらくはそうしていこう。配合は決まってるの?」
「もちろんですワン。すでに拠点にあるものに加えればいいだけですワン。この町にあるものがうちに無いように、うちにあるものはここにはないですからワン」
「そうだね、じゃあそうしようか。でも、調味料専門店みたくなるのはやめておこう。最終目標とずれちゃうからね」
「畏まりましたワン」
「よろしくね。それで今日の売り上げはどれくらいになりそうなの?」
「なんと金貨50枚くらいにはなりそうですワン」
「確か、銅貨50枚で2L売ってたよね。1万個くらい売れてない? 驚きだよ」
「本当ですワン。ここまで売れるとは思っていなかったですワン。明日はさらに人員を増やして対応しようと考えておりますワン」
「そうだね、思いっきり増やしていいよ。待ち時間ゼロを目指そう、そうじゃないと捌ききれないでしょ」
「本当にそう思いましたワン。結構ギリギリの状態でしたワン」
テレビを見て客が減っていることを確認する。
リリは伝えた。
「じゃあ今日は夕食を食べて解散だね」
全員が楽しそうに椅子に座った。
リリがベルを鳴らす。
大量の食事がやって来る。
くーも入れた全員が楽しそうに食事をした。
食事も終わって空を走る光が帰っていく。
店も閉店だ。
そのあたりで、トレニアと1〜34番が帰って来る。
リリにデメシードが入った籠を渡す。
リリが聞く。
「トレニアと1〜34番のみんなはお疲れ様。デメシードってそんなに大量にそこにはあるの?」
「はい、あそこにはかなりの数のデメシードが埋まっています。次の日に同じ場所を掘るとまた出てくるくらいには、大量です」
「面白かったですよ、リリ様。見たことない魔物もいました! 写真撮ってきたので後で見てください」
「それはすごい量だね、それに魔物かー、写真は後で見せてもらうよ。じゃあご褒美に食事をあげよう。全員手を洗ってきてね」
1~34番は食事と聞いて嬉しそうだ。
トレニアも楽しそうに食事の準備をする。
リリはベルを鳴らす。
大量の夕食が運ばれてくる。
きちんといただきますを言って、1〜34番はゆっくりと美味しそうに味わって食べていた。
空を走る光のように美味しすぎて食べる手が止まらないという食べ方も最近ちょっと面白く感じてきているが、ゆっくり美味しそうに食べてもらえるのもまた良いとリリは思う。
そのままでいて欲しいと思って、言う。
「みんなさすがだよ。そうやってこれからもゆっくり味わって食べるんだよ」
それを聞いた、トレニアと1~34番を除く全員がリリのやりたいことを察した。
ファースト、デモク、くーが言う。
「リリ様の言う通りです。ゆっくり食べるのも正解の食事方法です」
「俺もそう思います。味わって食べるんだぞ」
「そうですワン、ゆっくり食べるワン」
その後プニプニ、アルバートが言う。
「いいですぞ、その調子でゆっくり食べるべるようにしてくだされ」
「美味しそうに食べてくれるのが、作ったものにすれば最高の食べ方です」
サラ、クロが言う。
「とても美味しそうに食べられるのですね、素敵です」
「俺もそれくらいの方が好きです、ゆっくり食べましょう」
トレニアは空を走る光が食べている光景を見たことがないので、ちょっと不思議そうにしている。
1〜34番は褒められることが初めてのようで、どう反応したらいいのか分からないようだ。
デモクが伝える。
「そういう時は喜べばいいんだよ。ほら笑ってみな」
全員が楽しそうな表情になった。
楽しそうに食事を再開する。
全員が満腹になったようでリリが言う。
「じゃあ今日もここでみんなで寝よう、他のみんなはいいのかな?」
「もう帰りましたワン」
「じゃあこのまま寝よう〈範囲〉〈浄化〉」
全員がリリにお礼を言って、ベッドに寝る態勢に入る。
見事に全員がすぐに寝れたようだ。
リリもすぐに寝てしまう。
リリは明日もいい日になるといいなと思いながら、寝ることが出来た。
次の日も、もちろんリリが最初に起きた。
第1章はこれで終わりです。
読んでいただきありがとうございました。




