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外道転生 〜元裏社会の帝王、千のカルマを賭けた贖罪の成り上がり〜  作者: 中原九尾
第4章:アーヴィング家編「剣もまた牙を隠す」

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第80話 決行

 数日後、ヴィンスから報告が届いた。


「拠点は間違いなさそうだ」


 ヴィンスはそう言って、地図を机の上に広げた。


「旧兵舎跡に出入りしてる連中を確認した。前に見た顔もその中にいた」


 その報告に俺は内心、確信を深めた。


「よし。今夜、決行する」


     *


 夜、俺たちはそれぞれの持ち場に散った。旧兵舎跡は街の外れ、月明かりだけが頼りの静かな場所だった。かつてはこの国の軍事拠点の一つだったのだろう。今は朽ちかけた、外壁だけが往時の名残を留めていた。


 カインと波影の男たちが、まず拠点の周囲を静かに取り囲んでいく。グラナイトの人間も外周に配置についていた。


「準備はいいか」


 俺は手で合図を送る。


 ガロ、カイン、ルーシャ、サガンから、準備完了の合図が返ってきた。


「それじゃあ、始めるか」


 俺はそう合図した。


 まず動いたのはカインだった。彼のスキル"逸らし矢"が、拠点の入り口付近にいた複数の見張りの意識を瞬時に逸らした。


「今だ」


 波影の男たちが一斉に、雪崩れ込む。


 見張りたちは何が起きたか理解する間もなく、次々と無力化されていった。数人がかりで一人をあっという間に組み伏せていく。


「思ったよりあっさりだな」


 波影の一人がそう呟いた。


 だが、それも束の間だった。拠点の奥から複数の足音が響いてきた。


「見張りがやられた! 何かあったぞ!」


 誰かの叫び声と共に、次々と黒鴉の構成員と思われる連中が姿を現した。


     *


 俺は少し離れた、高い場所から見ていた。黒鴉の全体の様子を観察して、全体をコントロールするためだ。


「来たぞ。全員、打ち合わせ通りに動け」


 俺は敢えてわざとらしく指揮官のように振る舞う。標的の目を俺に向けさせることで、敵の目立つ動きが分かるはずだと考えた。


 ――するとやはり、いくつかの動きが見えた。


 奥の建物から、弓を握った女が一人だけ不自然に離れていくのが見えた。


 おそらくあの女が狙撃手で間違いないだろう。


「ルーシャ!」


 俺は合図を送ると、ルーシャは目にも留まらぬ速さで女を追っていった。


     *


 同じ建物から、短い剣を両手に持った大柄な男が飛び出してきて、俺に向かってこようとしている。直感的に、奴に違いないと判断する。


「ガロ!」


 同じくガロへ合図を送り、ガロに向かわせる。


     *


 他の黒鴉の連中の動きが見えてきた。


 向こうの指揮官らしき奴が、声を上げて指示をしている。


「相手の人数が多い! まとまって叩け! 散らばると一人ずつ叩かれる!」


 なるほど。統率が取れた組織のようだ。


 ――しかし。


「カイン! あの集団だ!」


 合図と同時に、カインの逸らし矢が放たれ、十人ほどの集団の意識がカインの矢の方へ逸れる。


「今だ!」


 カインが波影の連中へ合図を送り、その集団へなだれ込ませる。


 集団戦が始まったが、カインがいれば問題ないだろう。


     *


 その様子を見ていると、少し離れたところで地面に手を付き、何かをしようとしている男が見えた。おそらく土魔法使いに違いない。


「サガン!」


 俺が合図を送るまでもなく、サガンも素早くその男へ向かっていた。


     *


 俺は今の場所から様子を見ていた。


 カインと波影のところは乱戦になっている。相手は十五人程か。


 波影はサガンが訓練している精鋭と聞いていたが、相手もやはり精鋭のようだ。しかし、カインのスキルで意識を逸らされ、隙が生まれたところを一人ずつ倒している。


 ルーシャは弓使いの女を追っている。厄介な狙撃手は機能しないだろう。


 ガロは奥の方で、剣使いと対峙している。おそらく数合、切り結んだのだろう。睨み合いのようになっている。


 サガンも別の方向で、土魔法使いと対峙している。何かを会話しているように見える。


 今のところ、俺の作戦通りの展開になっている。


 後は俺だが、指揮官のような奴がおそらく――


 「……お前達は何者だ」


 ――気付けば、俺の後ろにその男が立っていた。全く認識できなかった。この男がやはり気配を消せる暗殺者に違いない。


 長身で痩せぎすの男だ。いかにも暗殺者という雰囲気を漂わせている。


「優しいな。後ろから刺せばよかったんじゃないのか」


「お前は危険な臭いがする。俺達と同類の臭いだ」


 俺から何かを感じ取ったのか、それとも屈服させて話を聞き取りたいのか、すぐには手を出してこないようだ。慎重にしても度が過ぎると思うが――


「お前の姿勢や立ち居振る舞いを見ると、攻撃を誘っているようにしか見えない。正体が分からない者を部下に相手はさせられない」


 この世界で何かを極めた者は、そういうことも読み取れるようになるのか。スキルがあるこの世界ならではの駆け引きや技術なのかもしれない。


「お前達は、俺達が何者かを知って攻めてきたのか」


「さあな。貴族の犬というは分かってるが」


「……お前達は生かして返せない。ここで死んでもらう」


     *


 軍神の家、その裏に潜む闇の部隊。その本拠地に踏み込んだ。今のところ作戦通りには進んでいる。しかしここからどう転ぶかはまだ分からない。


 それぞれの戦いの行方がこの夜決することになる。

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