第71話 解放
ロレンツォとの決着がついた後、俺はセラフィナと共に三つの施設を順に回ることにした。
まずは花翳から始めることにした。
「媼、約束通りだ」
俺はそう告げた。
「本当に成し遂げたのですね」
媼はそう言って、深く頭を下げた。
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セラフィナが真如を使い、一人ずつ奴隷契約を解除していった。エルフの女性たちはその瞬間、それぞれ複雑な表情を見せた。長年の拘束から解放された安堵。そして、これからどう生きていけばいいのか、という不安。
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「これからの方針を確認したい」
俺は媼にそう告げた。
「ここ花翳は、グラナイトが運営する闇風俗と統合する形で残すつもりだ。売られてきた者の中で、未成年の子供は帰るところがある者は帰すが、そうじゃない者はグラナイトに引き取ってもらい、世話をしてもらう」
「ええ、子供がこんな商売に身を落とすことはありません。ぜひそうしてください」
「エルフも同じだが、あんたはどうする」
「若い者たちには、それぞれの故郷に帰る道を用意しています。でも私自身は、この街に留まるつもりです」
「ここで引き続きまとめ役を」
「はい。それが私にできる恩返しだと思っています。あと……」
「何かあるのか」
「望まずに売られてきたとはいえ、こんな商売をさせられてしまい、故郷に顔向けできない、という者も何人かいます。自分の意思でここに残る選択をした者に、せめて支えになれればと」
「そうか。そう思うなら帰郷を無理強いはできない。あんたに任せる」
俺は前世でもこういった闇風俗を管理していたが、こんな場所に留まる女にはそれぞれ簡単ではない事情があることが多い。それをケアする者がいるのは頼もしいことは間違いなかった。
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次に、俺はセラフィナと共に石棺を訪れた。ゴドウィンが既に待っていた。
「解放の手続きを始める」
「分かった。ただ正直、全員が故郷に帰れるわけじゃない。行き場のない連中もいる」
「そういう連中は、継続してここで働いてもらって構わない。今までのような強制労働ではなく、あくまで普通の仕事としてな」
「普通の仕事とは」
「規模は縮小するとしても、採掘は必要だろう。あとは、他国向けの武器や偽物作りは廃止するが、他にも生産できるものはいくらでもあるだろう。その辺はグラナイトの連中とは話をしてある」
「そうか。給金が出るまっとうな仕事なら、誰も文句は言わねえだろうさ。」
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鎖を外されたドワーフたちはそれぞれ戸惑いながらも、少しずつ表情に生気を取り戻していった。ドルグというあの若いドワーフもその中にいた。
「本当に自由になったのか」
ドルグがそう俺に尋ねてきた。
「ああ。家族の消息も探す手伝いをする」
その言葉にドルグはしばらく言葉を失っていた。それから静かに涙を流した。
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最後に俺たちは、揺籠を訪れた。マグダは既に処分済みだった。グラナイトの人間が暫定の所長として、施設を管理していた。
檻の中のフェアリーたちを一体ずつ解放していく。ミィというあの小さな声のフェアリーもその中にいた。
「もう大丈夫だ」
俺はそう声をかけた。ミィは小さな翅を震わせながら、ゆっくりと宙に浮かんだ。
「あんたたちは自力で帰れるのか」
「大丈夫、自分たちで帰れる。ありがとう」
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「この施設は今後どうするのですか」
セラフィナからの質問だ。前にここに来たときにあんなことがあって、セラフィナへは説明できていなかった。
「ここは今後も残す。石棺で魔道具を生産させるつもりだが、それと連携する。これを俺達の資金源の一つにする」
「誰をここに入れるのですか」
「二つを考えている。まずは、俺達の闇金融で金を返せない奴だ。借金のかたとしてやらせる」
「もう一つは」
「仕事をせずに楽をして金が欲しい連中はいくらでもいるだろう。そういう連中に金を払ってやってもらう」
前世でも、例えば治験バイトと呼ばれるものがあった。昔は借金を返せない奴を、高額でリスクの高い薬の治験に入れることもあったが、一方で働きたくない若者が短期間で大金を稼ぐ手段として自主的にやりたがる奴が多かったことも事実だ。それと同じことをやるつもりだ。
「なるほど。あなたらしい施設の活用方法ですね。理解しました」
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「これで三つの施設、全ての解放が完了しました」
セラフィナからそう告げた。
「そうだな。思ったより時間がかかったな」
「それだけの人数がいた、ということです。それだけ救われた人がいた、ということにも」
セラフィナがそう呟いた。
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この一連の救済作業を通じて、俺はこれまでとは違う種類の実感を得ていた。人間だけでなく、エルフ、ドワーフ、フェアリー。様々な種族から感謝の言葉を受け取った。それは、恐怖による支配とは全く異なる種類の繋がりだった。
この街の多種族の間で、俺の名前が少しずつ違う意味を持ち始めていた。恐怖の対象としてだけでなく救済者としても。
この街の裏稼業を完全に俺の手の中に収めた。次はこの変化が、街全体にどう広がっていくのか。それを見届ける段階に入っていた。




