村長
「そっちはどうなった?」
アークとギソクが合流した。
「協会はもう大丈夫。」
「こっちもあらかた終わったぞ。」
ギソクが空になったポーションの箱を見せた。
「けど…な。」
ギソクの視線の先には泣きじゃくっている子供がいた。
「うぅ、ひっぐ、…うっ、…。」
「大丈夫か。」
ギソクがしゃがみ、頭を撫で優しく声をかけた。
「親をなくした子供とか、遺体の扱いに困ってるみたいだね。」
「…どちらも協会に預けよう。」
「怪我人が居なくなった今なら受け付けてくれると思う。」
「頼んでくる。」
そういい、たすくは協会の中に入った。
「大丈夫だって、治療の終わった村人も処理を手伝ってくれるみたい。」
たすくが教会から出てきて、結果を報告してきた。
「…いや、遺体は俺たちが運ぼう。」
シスターに子供を預け、ギソクが提案した。
「それは構わないけど、どうして?」
「村って小さいし、全員顔見知りな訳だろ。」
「知ってる人の遺体を運ぶのって、相当辛くないか?」
「なるほどね…大丈夫ですか?」
たすくはそばに居たシスターに声をかけた。
「私としてはそうして頂きたいのですが…。」
「村人は自分たちの手で運びたいと聞かなくて。」
「…なるほどな。」
「わかった、遺体はそっちに任せよう。」
ギソクは村人の意見を尊重し、協会を後にした。
四人は崩れた建物のある方へ向かい、瓦礫を動かしている一人の男に声をかけた。
「あの、すみません。」
「はい…、どちら様でしょうか。」
「この村の村長はどちらに居ますか?」
たすくが聞くと、男は体をピクリと動かし顔を伏せた。
「村長は父ですが、魔物に襲われて亡くなりました。」
「今は私が村長代理です。」
「…そうですか、すみません。」
たすくは頭を下げた。
「いえ、謝らないでください。」
「それで、皆さんは…?」
「ヨドさん!その人達ですよ!」
「俺たちにポーションくれたの!」
「、そうだったんですか…貴重な物なのにありがとうございます。」
村長代理であるヨドは頭を下げた。
「それで、要件はなんでしょうか。」
「自分たちは冒険者組合のマスターから依頼を受け、バジリスクを討伐しに来ました。」
「…、依頼を出してから一日も経ってないですよ!」
あまりにも早い対応に、ヨドは驚いた。
「急いで来ましたから。」
「それで、どこら辺に生息しているかわかりますか?」
たすくは地図を広げ、ヨドに見せる。
「えっと…バジリスク?かどうかは分かりませんが、この村を襲った魔物はこの辺りにある崖に居るらしいです。」
ヨドは魔物に詳しくなく、バジリスクかどうかはわからないようだった。
「…本当に討伐に向かわれるのですか?」
ヨドは顔を伏せた。
ヨドの体は少し震えていた。
「行きますよ、依頼ですから。」
「そう、ですよね。」
「…数時間前、その魔物を真近で見ました。」
「私は…恐ろしくてただ隠れる事しかできませんでした。」
ヨドは涙を浮かべていた。
「父は昔冒険者をしていまして。」
「父は村人を逃がすために、魔物の視界から村人が映らなくなるまで…、一人で…っ。」
堪えきれなくなり、ヨドは涙を流した。
「…素晴らしい方ですね。」
たすくはヨドの肩に手を乗せた。
「…、はい。」
「…皆さんにお願いいたします。」
ヨドは涙を拭き、四人を見つめた。
「どうか、そのバジリスクなる魔物を…!」
「私の父の仇を討って頂けませんか!」
「任せてください。」
たすくは力強く返事をし、歩き始めた。
アークはヨドの肩を、ギソクは背中を、アリスは後頭部を順番に叩いた。
ヨドは三人が叩いた場所にジンジンとした痛みを覚えたが、今はその痛みが勇気を与えた。
「魔物は任せて、私たちは作業を続けましょう!」
「おう!」
ヨドの鼓舞は、村人のやる気を漲らせるのに充分だった。




