この世界に来て初めて
武闘会が終わり、たすくは出口へと向かっていた。
「お疲れ様。」
ギソクがたすくに声をかけた。
「お疲れ〜、見てたよ!」
アリスもたすくへ労いの言葉を掛ける。
「…、ありがとう。」
これだけ力の差があれば負けるわけ無いと思っていたが、優勝を祝われるのは嬉しかった。
「これで有名に一歩近づいたな。」
「優勝しちゃったもんね。」
三人で和気あいあいとしているとふと声がかかった。
「よぉ。」
「あ、この前の…し、シンクさん?」
アリスは記憶を頼りに名前を呼ぶ。
「たすく、お前に会いたいって方が居るから付いてこい。」
アリスの少し失礼な発言を気にも止めず、シンクは真面目な顔つきで言った。
「お前ら二人は残っててくれ。」
「一応パーティーメンバーなんだが。」
ギソクは雑な対応をされて少し機嫌が悪くなった。
「優勝者のみの面会だ、悪いな。」
「そう言われたらしょうがないか〜。」
アリスは諦めたようだ。
「誰ですか?」
たすくは気になって聞いてみた。
「オーナーだ。」
「(…、つまり優勝賞品も…。)」
たすくはもしかしたらプレイヤーに会えるのかも知れないと思い、気を引き締めた。
「こっちだ。」
「ごめん、行ってくる。」
シンクの案内にたすくは従った。
とあるドアの前に案内された。
「じゃあ後はよろしくな。」
「(…プレイヤー…かもだよな。)」
たすくは念の為、防御に極振りしたプレセットに装備を変え、部屋に入った。
「…。」
「貴方が優勝者の。」
部屋に入ると、観客席出口付近に居た男だった。
たすくは少し男に身に覚えがあったが、思い出せなかった。
「たすくですけど…貴方は?」
「あぁ、敬語はいりませんよ。ウェポンマスターたすくさん。」
「─。」
たすくはあまりの出来事に声が出なかった。
ウェポンマスターというのは、たすくがゲームのプレイヤーだっと時、周りのプレイヤーから付けられた二つ名だった。
それを知っているという事は、この男もまたプレイヤーなのだ。
「そのクソダサい二つ名を知ってるって事は君もプレイヤーって事でいいのかな?」
「私のプレイヤーネームはシンドロームです。」
「シンドローム…?」
たすくの記憶にはそんなプレイヤーは居なかった。
自分の知らないプレイヤーなのかとたすくは考えた。
「深さの深度に、ろくハイフンろくで深度6-6です。」
「…あぁ、何年か前にランキング抜かしかけた人か!」
「けど二年前くらいからログインして無かったような…」
「え、まさか?」
たすくはシンドロームの顔を見た。
「…はい、引退を決意して、ログアウトしたのが二年前です。」
「私は二年間、この世界に居ます。」
「…、二年間も…、」
あまりの出来事に言葉が出なくなった。
二年もの間、元の世界に帰れない人間が居るという事実にたすくは少し恐怖を覚えた。
「たすくさんの話は最近よく耳にするんですよ。」
「来たばかりなんですよね?」
「そうだよ。」
「大会の準備が忙しくて会いに行けなかったんですよ。」
「あ、私のことはアークと呼んでください。」
「こっちではそう名乗ってますので。」
「わかった、アーク。」
「具体的な話を聞かせて貰ってもいいですか?」
にこやかにしていたアークは、少し真面目な雰囲気をだした。




