報酬
「…よし!」
たすくは勢いよく椅子から立ち上がり、気合を入れた。
運営の案内に従い、広場へと入った。
数多くの観客席が今日を楽しみにしているのだろう。
かなりの広さがあるにも関わらず、観客席からの声が雑音として聞こえる。
「ブロックを優勝した選手たちが揃いました!」
「これより最後のトーナメントを行います!」
審判の男が宣言した。
「うおおおおお!!!!」
その宣言を聞き、観客たちは咆哮を上げた。
「対戦カードはAブロック対Bブロック。」
「Cブロック対Dブロックで行います!」
「そこを勝ち抜いた二人で決勝戦を行います。」
審判の男の後ろから女性が手押しの台車で何かを運んできた。
そこまでの大きさでは無いが、賞金か何かだろうか。
「そして、優勝した方にはこちら!」
台車に被さっていた布が取られた。
そこには指輪があった。
「(指輪…でもどこかで見た事あるな…。)」
たすくは指輪をまじまじと見た。
「アーティファクト、真実の指輪です!」
審判が指輪の名前を告げた。
「(真実の指輪…っ。)」
「(数年前、イベントのランキング上位者に配られたランキング報酬だ。)」
「(…必ずプレイヤーが居る。)」
「この指輪を付けると、相手が嘘をついているかどうかが分かるという代物です!」
「(NPCが嘘をついたかどうかが分かる装備品。この世界にプレイヤーは少ない。)」
「(このアイテムの需要は計り知れない。)」
「(…が、自分は二つ持ってるんだよな。)」
「(まぁ、あとひとつあれば二人に配れるか。)」
「それでは皆さん、各会場へ戻ってください!」
たすくが考え事をしている間に審判の説明が終わってしまったようだ。
たすくは自分の割り振られた場所へ向かった。
今日も試合は並行して行われるようだ。
たすくは別会場で、対戦相手と共に広場へ出た。
「(プレイヤーしか使えない力を使えば相手はコンタクトを取ってくるかもしれない。)」
「(…いや、あの報酬自体がコンタクト、なのか?)」
審判は考え事をしていたたすくへ視線を向ける。
たすくはそれに気づき、剣を取り出した。
「(利剣、倶利伽羅剣。)」
「(使うか、超級難度。)」
両者の準備完了を見て審判は手を振りかざした。
「はじめ!」
「ウオオオオオオオオ!!!!」
対戦相手は咆哮を上げた。
ステータス上昇能力のあるスキルなのだろうか、相手の力が増すのがわかった。
「バーサーカーか。」
たすくは相手のジョブを判断すると、足元へ向かってスキルを撃った。
「ポイズンスワンプ」
バーサーカーの足元が紫色の毒沼に変わった。
足が取られ、バーサーカーは自由に動けなくなった。
「(バーサーカーに毒は効かないけど…、沼は力がこもればこもるほど足が沈む。)」
「ッ!、…ウオオオオ!!!!」
バーサーカーは気合いを出し、毒沼から足を抜こうとするが、抜ける気配がなかった。
「この結界がどこまで持つかは分からないけど…。」
そう呟くと、たすくは超級難度のスキルを使うため、魔力を込め始めた。
たすくの周りに常人には考えられない程の魔力が満ちる。
「不動明王 炎龍斬」
倶利伽羅剣に絡みついていた炎の龍が動き出し、巨大な炎となってたすくを飲み込んだ。
たすくが纏った炎は不動明王を形作り、圧倒的存在感を示している。
「…。」
バーサーカーはその光景を見て、立ち尽くすしか無かった。
たすくが腕を振ると、不動明王は連動し、剣を持った腕をバーサーカー目掛けて振った。
「……、」
バーサーカーはその場に倒れた。
「(剣豪ジョブ超級難度スキル…プレイヤーが見ればわかるはず。)」
「勝者、Cブロックたすく!」
審判が宣言する。
「うおおおあお!!!!」
「凄いな、今の技。」
「たすくの後ろにデカイ何か出てきた!」
アリスは興奮しながら言った。
「どれだけ研鑽を積んだらあのレベルに到れるんだろうな。」
「…少なくとも、逃げ出した私たちじゃなれないだろうね〜。」
アリスは少し悲しげな顔をした。
「…そうだな。」
ギソクはアリスの顔を見て、少し申し訳なさを感じた。




