24 ロメリア市長邸
「コゼット? ……おーい。」
「……。」
「コゼット!!」
「うぇっ!? あ、はい!? なんですか?」
声を張って呼ぶんでようやく飛び上がるように反応したコゼットに思わずこちらも驚いたのだった。
夜になって合流してからどこか心ここにあらずという感じだ。
「すいません。少しぼーっとしていて。」
「まぁ、それは別にいいけどさ。」
本人は誤魔化しているつもりなのだろうが、正直呆けているという感じには見えなかった。
どっちかというと考え込んでいるような見える。
最初は久しぶりの想い人に会ったことで恋煩いでも発症したのかと思ったが、やはり別の理由であろう。
「何かあったら力になるからね?」
「……ありがとうございます。でも、本当に大したことではないんですよ。」
コゼットは私の気遣いを笑って受け止めた。
「それで、なんでしたっけ?」
「あ、うん。クルトを置いてきちゃったけど、大丈夫かな?って。」
ユリウスの紹介でロメリアの内情に詳しい人のもとを訪れている。
夜も更けているし、どちらかといえば政治よりの話になりそうだったので屋敷に残してきたのだが。
「えぇ、アリステリア公爵が面倒を見てくださるそうです。」
「それが不安なんだよなぁ……。」
勝気な子ではあるが、人見知りでもある。
距離感が近くてやりたい放題なエレオノーラとはどうにも相性が良くない様に感じる。
やはり、キアラにでもお願いすべきだったかもしれないと考えたがコゼットの意見は違った。
「大丈夫だと思いますよ。剣の稽古をつけているようでしたから。」
「師匠が?」
「はい。公爵は騎士としても名手ですので。あまりないんですよ? あの方が自ら教えるなんてこと。」
身内に甘い人ではあるが、気ままな人であるし、なにより凡人にはそもそも興味を示さない。
才能に対する評価はシビアであるというのがコゼットの評価であった。
「その薫陶を受けたならば、将来は約束されたも同然と言われるほどです。クルトにとっても良い経験になると思いますよ。」
「ほぇぇ。」
聖剣への挑戦まで、さほど長い時間があるというわけではない。
であれば、多少の荒療治があってもそういう機会は歓迎すべきであろう。
「それで、ユリウス殿下が紹介してくださったというのが……。」
「うん、コゼットは会ったことがあるって聞いたから呼んだんだけど。」
「本当に何度かお話をしたことがあるくらいですよ。それに、正直あまり得意なタイプの方でもないのですが……。」
「そう言わないでよ。一応、ユリウスも同席してくれるみたいだしさ。」
「……はぁ。まぁ、いいです。分かりました。でも、あんまり期待しないでくださいね?」
会話をしていると道なりにユリウスの姿を見つける。
屋敷の前に立っていて、そこに仕えているのだろう従者と会話をしているようであった。
「遅かったね、リディア。」
「これでも、早い方なんだぞ? 待ち合わせしたコゼットなんて走ってきたんだから。」
ユリウスの軽口に応えると、従者はお辞儀して私たちを迎えたのだ。
「お久しぶりです、リディア様。ようこそ、ロメリア市長・アルフレード・カリーニの屋敷へおいでくださいました。」




