22 取引
「……ユリウス、お金持ってるよね?」
一応自分でも財布は持ってきていたが、立ち寄ったレストランのメニューを見て目をむいたのだ。
物価が高い。王都やパラケルス領がる国の西側の栄えた地域よりも更に上なのだ。
流石は大陸の中心に位置する要所ということだろうか。
「あぁ、その辺のことは気にしなくていいから好きに頼むと良いよ。」
便利な奴だ。
ふぅ、と安心して息をついた。
「すいません! これと、これと、あと。これとこっちもください!」
「え? あ、はい! かしこまりました!」
食べたいものを片っ端から頼み、店員はその量にドン引きして注文を受けた。
ユリウスはそれを見て苦笑いをしている。
「相変わらず良く食べるね。」
「クルトはどんな私でも良いって言ってくれるもんね。」
嫌味を無視して、出されたものを口にする。
今更こいつにどう思われようが知ったことではないのだ。
「いや、僕もそういうところは素敵だと思うよ。」
「……。」
この野郎。
不意打ちを食らいフォークを咥えたままユリウスを睨んだのだ。
肝心の本人はどこ吹く風と自分の分を取り分けている。
「それで? 君から僕に声をかけるってことは何か取引でもあるのかな?」
じゃれ付き合いはほどほどにして、ユリウスは本題に入ろうと促した。
相変わらず勘所が良いのは話が早くて助かる。流石は『ビジネスパートナー』だ。
「あんたに『借りを作って』やるぜ、ユリウス。」
「?」
私の言葉の意味が分からず、ユリウスは大量に運ばれたメニューに目を向けた。
……そっちじゃねぇよ。いや、それはそれでそうだが。
「あんた、師匠との間に何かあったんでしょ? 取り持ってやるよ。」
「……なるほど。そうきたか。」
こいつ自身か、あるいは王家の方か。
私の見立てでは両方という線が一番濃いように思うが。
とにかく、イザベラの命で私についてロメリアに来たユリウスはエレオノーラとの接触のタイミングを計っていた。
しかし、当のエレオノーラ本人がユリウスを毛嫌いして距離を取っている。
だったら、仲介に入ってやろう。その代わりに力を貸せということだ。
私としても、母親とも言える師匠と(形の上での)婚約者の関係が不仲というのは味がよくない。
仮にそれを解決できるなら力を貸してやるのは吝かではないのだ。
ただ、それはそれとして何かするならきっちり見返りはとってやろう。
その方がお互い後腐れがなくて助かる。私にとっては一手両得な手だ。
「うん。いいね、そうしようか。それで、何をしてほしい?」
「情報の整理の手伝い、あとは、ロメリア内での流通に詳しい人の紹介かな?
あんた、昔ロメリアにいたんでしょ? どうせ、その時に有力な人とのコネも作ったんじゃないの?」
「良い勘をお持ちだ。『貴族』が板についてきたね。『リディア・パラケルス嬢』?」
嫌味な奴だが、一応、誉め言葉と受け取っといてやろう。
私は返事の代わりに「ふん」と鼻を鳴らしてフォークを口に運んだ。
転生してから3年と数か月。
確かに昔より政治に慣れてきた気がするのは良いのか悪いのか、頭を悩ますところである。
できれば、早く解放されたい。




