第2話【別れ、旅の決意】
この世界のルールや大事な説明なのが多くあります!
花火と別れ、ソウが旅に出ることを決意した数日後の朝。
「ソウ君、本当にこの街を出て旅に出るの??止めることはしないけど…ワタシは心配で……」
旅に出る準備をするソウに一番の常連客の老婆が心配そうに声をかける。
「心配ありがとばあちゃん。でもオレは…夢…みたいな、目標ができちまったんだ。
叶うかどうかなんて正直分からない。けど、今ここでこのまま街に残っても、ずっと心の中に後悔だけが残ると思うんだ!」
ソウはあの日以降、旅に出る準備を着々と進め、今日で鍵屋の店じまいだった。
「今日でこの店ともおさらばだな…。
でも!また帰ったきたら鍵屋を再開して、ばあちゃんにも旅の話をしたり、ばあちゃんのいつもの鍵を直してやるから、安心してな!」
ずっと心配そうにしている老婆に向かって、自身の思いを話、笑顔で励ますソウ。
そんなソウの決意を見た老婆も、ホッとしたような表情になり、緊張がほぐれる。
「そうかい…。ワタシは、ソウ君が小さい頃から元気に遊んでる姿や鍵屋を始めた時。ずっと成長を見てきたから、本当の孫のように思ってしまっていたけども…もうそんな心配もいらないぐらい、立派に大人になってるようだね。」
目に涙を貯めながら、ソウの旅立ちに老婆も笑顔で見送ることを決めた。
「そんなっ!泣くこたぁないだろ?!
オレも…照れるって言うか……。
ばあちゃんはオレにとっても常連さんだったしな。オレにとっての……親ってことでも…まぁ…悪い気はしねぇけど…さ。」
照れたようにボソボソと言うソウの言葉を聞いた老婆は、より涙を流して笑顔になった。
「恥ずかしいところを見せてしまったね。
でも沢山話ができてもう安心だよ!」
「いや、オレも最後にばあちゃんと色々話せて嬉しかったよ。これでこの街にもう心残りはない。」
店じまいが終わり、旅に出るギリギリまで老婆と話をしていたソウ。
「これからどこに行くのかは決めてるのかい?」
「あぁ。まずは”とある人物”を探すところからだな。」
「とある人物?その人はどんな人なんだい?」
老婆に質問を受け、少し沈黙をした後に口を開ける。
「……大昔この街にも一回来たことがある人だよ。世界一の占い師と言われている、”ヘリオ・トロープ様”に会いに行く」
───ヘリオ・トロープ
この世界で一番の占い師と言われている伝説の人物。その人の占いは必ず当たるが、あまり人前に出てこない。なので、皆が占ってもらいたいと願っているが、会うことすら難しい人物。
ヘリオという名を聞き、老婆はとても驚いた。
「あのヘリオ様に?!普段どこにいるかわからない人なんだよ?」
「わかってる…でも、ヘリオ様は世界的有名な人なのに”本当の名”も出してる勇敢なお方でもある。…それに、オレが旅する中で最もヒントを持ってる方かもしれないんだ!」
「確かにそうかもしれないけど…行く宛てはあるの?」
─────この世界では、本名を教えることはとても重要なことであり、家族や心の底から信頼し合える相手にしか教えてはいけないのがこの世界のルールである。
そんなルールがある中、世界的に本当の名が知られるということは、何よりも勇敢ですごい人物である証拠でもあるのだ。
「ハードルが高いことはわかってる。けど、少しだけあてはあるんだ!だから、まずはそこに行ってみるよ!」
冷や汗をかきつつも、ソウの目は確かに覚悟を決めた目をしていた。
「そうか…うん!必ずソウ君なら大丈夫だね!
…随分と話してしまったね。そろそろ行く時間かい?」
「あぁ。最後まで、ありがとう。」
ソウは膝をつき、老婆を抱きしめる。
「絶対に帰ってくる。その時は、オレの本当の名前を聞いてもらえるかい?」
老婆は驚き、涙を零しながら嬉しそうに静かに頷いた。
「じゃあ、行ってくる!!」
「行ってらっしゃい。元気で。」
老婆と言葉を交わし、ソウは街から一歩、もう一歩と足を踏み出す。
「さて…オレの旅はここからだ!」
こうして、ソウの旅が今。始まったのだった。
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しばらく歩き街が遠く見えなくなってきた頃、二手の別れ道の前で立ち止まった。
「ここまで来るのは、初めて花火がソル王国に行くことになった時に見送った時以来だな。」
左の道を進むと、花火が向かったソル王国に行くことができるが、ソウはまず、右の道を行くと決めていた。
「ヘリオ様が一番目撃されているのはソル王国だ。だけど、ソル王国でいつ現れるのか分からないヘリオ様をただずっと待ってるのは、旅に出た意味がない!」
街を出る前、老婆には「宛がある」と言っていたソウだか、実際のところは宛などなく、老婆を安心させるために言った言葉にすぎなかった。
「さて…ヘリオ様がソル王国で一番目撃されているということは、何十日もかけて行くような遠いところにはいないと予想している。
その中でも、人が少なくあまり目立たない場所と言えば、ソル王国とは反対の位置にある”夜の森”と言われている場所だと思うんだ…。」
⎯⎯⎯⎯夜の森
そこは、どれだけ明るい時間帯でもその森に少しだけ入れば夜のように暗く、静かな森。
魔獣もいるらしいが、誰も近づこうとしないから詳しい情報があまりない森でもある。
「あの日の魔女にあったことに比べれば、夜の森なんて大丈夫だ!!」
そう自分自身に言い聞かせるものの、まだ心の奥底では不安なソウ。しかし…
「人前では何が起こるか不安で試すことができてなかったけど、この森なら人は来ないし鍵の魔法を色々試して魔女に何をされたのか調べることができる!」
「よしっ…夜に森に行こう。」
魔女にあった日のこと、自身の鍵にあの日何が起こったのか思い出し、ソウは右の道へと進み出した。




